最高の睡眠のための13のヒント ~さわやかに元気で目覚められるようになる方法~

一晩中寝返りを打って過ごしたり目覚めた時にだるさを感じたことのある人なら誰でも、十分な睡眠を取ることの重要性、そして睡眠なしで生活することの苦痛についてご存知でしょう。あいにく、睡眠不足は多くの糖尿病患者にとって嫌というほどよく起こるものなのです。
「糖尿病患者の約40~50%が睡眠不足を訴えています。」とLouis Stokes Cleveland VA Medical Centerの睡眠障害プログラムの監督であるKingsman Strohl医学博士は言います。
「糖尿病を抱えている人の多くが何らかの不眠症や睡眠障害を経験している可能性がありますが、それが健康に関連した症状であるということを分かっていません。」Johns Hopkins University School of Medicineの医学、疫学教授であるNaresh Punjabi医学博士/学術博士はこう言っています。
「過去20年間で私たちが学んだことのひとつは、糖尿病自体が睡眠障害のリスクを増やすということです。」と彼は言います(研究のほとんどは2型糖尿病に関連しています)。一方で、十分に睡眠を取らないことは、血糖値に対して有害な効果を引き起こすことも示されています。睡眠不足はそもそも2型糖尿病になるリスクを高めることと関係があるため、血糖値異常が先だったのか糖尿病が先だったのか分かりにくくなってしまいます。
どちらが先に起こったかということに関わらず、両方を治療することが正解です。専門家たちは、糖尿病の管理がうまくいけばよりよい睡眠に繋がり、よりよい睡眠によって血糖値をうまく管理できるようになるということに同意しています。
「良質な睡眠と回復のための睡眠は、糖の新陳代謝を促し、日中の眠気を減らし、さらには医薬品を忠実に服用する能力を向上させるため、糖尿病によりよく対処できるようになります。」とStrohl氏は言います。
こちらでは、糖尿病患者が睡眠の際に直面するいくつかの難題と、それを解消するためのいくつかのヒントを5人の専門家が述べています。
睡眠時無呼吸
糖尿病を抱えている人の中で最も一般的な睡眠障害は、睡眠時無呼吸です。睡眠時無呼吸の人は眠っている間に息をしたりしなくなったりを繰り返します。睡眠時無呼吸のサインには、日中にうとうとしたり、夜中にいびきをかくことなどがあります。Diabetes Careによって発表された2009年の研究では、糖尿病である人の86%が無呼吸症候群も経験しており、そのうち55%が治療を受けるべき中度~重度の無呼吸でした。
このような高い割合が出る理由のひとつは、2型糖尿病と関係のある体重超過です。体重が増えることによって首周りに余分な脂肪がつき、気道を締め付けてしまうのだ、とStrohl氏は言います。彼は、肥満の人々は2型糖尿病になる前に睡眠時無呼吸になる可能性があり、睡眠時無呼吸が2型糖尿病の発達の一因となる可能性もあると説明しています。
睡眠時無呼吸には2種類あります。閉塞性睡眠時無呼吸は気道や喉の上部が狭くなり、酸素値が減り、最終的に脳がその人を起こそうとする反応を引き起こす時に起こります。この反応は少なくともいっぱいの呼吸をして気道を再び開くために必要なものです。中枢性睡眠時無呼吸は脳が筋肉に呼吸制御が混乱しているという信号を送った時に起こります。どちらの種類もその人が元気に目覚めるために必要な、深くて安らかな睡眠を取ることを妨げます。
「このような人々は、日中には疲れてしまう可能性があります。」とPunjabi氏は言います。これによって糖尿病に対処することは困難になり得るのです。「彼らは運動をしたり健康的な行動に従事する気がなくなってしまうからです。」と彼は言っています。
○寝るためのヒント
・余分な体重を減らしましょう:「十分な体重を落とすことができれば、(閉塞性)睡眠時無呼吸は克服することができます。」とPunjabi氏は言います。「しかし、これが難しいことであるというのは私たちも理解しています。」
・検査を受けましょう:眠いと感じたりパートナーに自分がいびきをかいているといわれた時には、医者に睡眠検査をしてもらうよう頼み、持続気道陽圧(CPAP)療法が役立つかどうか調べましょう。眠っている間に身につけるCPAP装置とマスクによって、喉の中の気圧を上昇させ、息を吸っても気道が無空気状態にならないようにします。「CPAPは多くの人にとって睡眠時無呼吸を緩和するものになります。」医学助教授でありクリーブランドのUniversity hspitals Case Medical Centerの睡眠治療の臨床監督であるColleen Lance医学博士はこう言っています。
・その他の治療:最後に、Lance氏が言うことには、CPAPが役に立たなかった場合、代わりとなる治療法があります。その治療法には、気道を開くために下顎を前方へ動かすための歯科装置、気道上部の余計な組織を取り除く手術、舌が気道を塞がないように舌を動かす神経を移植することができる新しい装置などがあります。
脚運動/レストレスレッグス症候群
レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)や周期的脚運動も一晩中穏やかになることを困難なものにする可能性があります。レストレスレッグス症候群(寝る前にどうしても脚を動かしたくなってしまうこと)は、高血糖値、甲状腺疾患、腎臓疾患によって引き起こされる可能性があるとLance氏は述べています。
「神経系の病気、神経痛などと重複する部分が多くあり、その人がどれに当てはまるのか導き出すことが非常に困難である可能性があります。」と彼女は言います。「あるいは両方の病気に当てはまる場合もあるのです。」
周期的脚運動を抱えている人々は、寝ている間に四肢の先端に筋収縮が起こります。この病気と神経系の病気との違いは、Punjabi氏の言うことには、周期的脚運動の場合、朝には脚を動かしたいという衝動が消えているということです。神経痛ではこのようなことは起こりません。
○睡眠のためのヒント
・鉄分値を調べましょう:鉄分不足はレストレッグス症候群を引き起こすとPunjabi氏は言っています。彼は、鉄分の不足量を検査し、鉄補充療法を行ってもらうことを医者に求めるよう勧めています。鉄補充とサプリメントは余計に使用されるべきではありません。鉄分が多すぎると胃の調子が悪くなったり、便秘になったり、吐き気や腹部の痛みを引き起こす可能性があります。
・薬剤使用を考慮にいれましょう:神経系の病気のための薬剤の多くはレストレスレッグ症候群にもはたらきます。
・禁煙しましょう:煙草はレストレスレッグス症候群の引き金となる可能性があります。煙草を止めるためにもう一つの理由を必要としているのであれば、これがその理由です。「煙草を吸い続けている人の脚を正常な状態に戻すことは難しいです。」とLance氏は言います。
不眠症
眠れないことや眠ったままでいられないことは一般的に不眠症と呼ばれ、それ自身だけで起こったり他の睡眠障害に付随して起こったりする可能性があります。こう述べているのは、Rugers New Jersey Medical SchoolのDepartment of Psychiatryの睡眠障害、医学の助教授であるSuzan Zafarlotfi学術博士です。彼女は個人営業の診療室で不眠症の患者を治療しています。
「睡眠時無呼吸に対する治療を受ける患者さんは多いかもしれませんが、不眠症に関しては見ないふりをしているのです。」と彼女は言いました。「不眠症も含めた全てを治療しなければいけません。」
○睡眠のためのヒント
根本的な原因を見つけましょう:Zafarlotfi氏は睡眠薬を使用することは推奨していません。「睡眠薬は応急的な治療にすぎません。そしてこのような薬は飲んでいるうちに耐性ができてしまうのです。」と彼女は言います。Zafarlotfi氏は、不安や鬱などの根本的な原因を検査し治療すること、そして認知行動療法(患者がセラピストとともに、ネガティブな考え方に対する行動的反応を変えていくというセラピーの種類)あるいは医療供給者とともに何らかの医学的問題を解決することによって、不眠症を治療することを勧めています。
糖尿病合併症
糖尿病と関係のある合併症はたくさんあり、それによって十分な睡眠を取ることがより難しくなってしまう可能性がある、とPunjabi氏は言います。神経系の病気はその最たるものです。「痛みそのもので目が覚めてしまいます。どのような痛みでも睡眠を妨げることになるのです。」と彼は言っています。
高血糖あるいは低血糖によって不眠になってしまう可能性もあります。さらに、高血糖による症状は、患者が糖尿病になっていると気づく前に起こる可能性すらあるのです。こう述べているのは、Sleep Heart Health Studyの主任研究員であり、Diabetesという雑誌の科学編集者であるHelaine Resnick学術医師/公衆衛生学修士です。
高血糖は特に、喉の渇き、頻尿、頭痛、空腹を引き起こし、これら全ての症状によって夜中に目が覚めることになってしまう可能性があるのです。低血糖も、空腹や浅い眠り、頭痛、寝汗などを引き起こします。
○睡眠のためのヒント
グルコース調節:糖尿病に関連した症状や合併症にならないようにするために、血糖値を管理するようにしましょう。インスリンによる治療を受けている場合、夜間に低血糖にならないようにするために、医者と相談して薬剤、食べ物、運動を調節しましょう。
睡眠環境不良
睡眠環境は、人々が―糖尿病であるかないかに関わらず―次の日に意識がはっきりとし元気を回復するために必要な睡眠を取ることができる日常的な習慣に起因するものです。
「このような習慣は一般的な睡眠に関する摂生法であり、多くの人が身に付けることを学んでこなかったものです。」とStrohl氏は言います。彼は、最も重要な規則とは十分な睡眠を取ることのできる考え方や環境をつくることだと指摘しています。
○睡眠のためのヒント
・決まった手順に従いましょう:良い睡眠スケジュールを守ることができない傾向にある人が多い、とPunjabi氏は言います。私たちの身体は、自然にバイオリズムに従います。そのリズムが崩れると、睡眠不足に繋がる可能性があるのです。「規則正しい睡眠習慣を定着させましょう。」と彼は言っています。「毎晩同じ時間に寝て、毎朝同じ時間に起きるのです。」
・刺激物を避けましょう:寝る直前にカフェインを含んだものを飲んだり、運動をしたり、タバコを吸ったり、家事をしたり、仕事をしたりすることで、より寝付けなくなってしまうかもしれません。「質の良い睡眠を促進するためには、だんだんと気持ちを落ち着かせていくための時間が必要なのです。」Resnick氏は言います。彼女は、就寝時間の前に温かいシャワーを浴びたり、読書をすることを勧めています。「寝る直前になってもパソコンに向かっていたり、Eメールを読み始めたりしないようにしましょう。精神が混乱してしまい、不安になってしまうのです。そのようなことは次の日に回すようにしましょう。」
・寝る前にアルコールを摂取しないようにしましょう:1杯のワインを飲むことでリラックスできるように思えますし、寝るための手助けとなるかもしれませんが、就寝時間の直前に飲んでしまうと長い時間眠っていることができなくなってしまう、とStrol氏は言います。
・電気を消しましょう:電子機器には、その装置の電源が点いているということを示すための小さな色のついた灯りがついているものもある、とLance氏は言います。しかし、この光は、「日中ではないのに日中であるということを脳に伝えてしまいます。寝る時には全ての電子機器の電源を切るか、自分がその光を見ることができない場所に置いておくようにしましょう。」
・睡眠を中断させるものが何もない環境を作りましょう:「もしかすると、今が夜に犬や猫をベッドに上がって来ないようにさせる時なのかもしれません。」とStrohl氏は言います。
おわりに
睡眠に関する問題を抱えている場合、もしくは配偶者やパートナー、あるいは他の同居人に、過剰にいびきをかいていたり寝ている間に呼吸が止まっていると言われた場合、それを医者に必ず伝えるようにしましょう。「睡眠に関することは、患者が医者に一番伝えないことである場合がよくあるのです。」とStrohl氏は言っています。