蚊をおびき寄せている?自分の遺伝子を恨みましょう

「蚊は『遺伝子の匂いにおびき寄せられる』」。BBCニュースはこのように報告しています。研究者は一卵性双生児と二卵性双生児のペアを検査し、一卵性双生児のペアは蚊をおひきつける度合いが互いに似通っていることを発見しました。
蚊をひきつける度合いは人によって異なることは研究者は長い間知っており、また蚊をひきつける度合いは体臭と関係していると考える人もいます。
体臭は遺伝子を介して部分的に遺伝するので、この研究を行う研究者は、同じ遺伝子を持つ双生児が蚊をひきつける度合いが似ているかどうかを調べようとしていました。
研究では、一卵性双生児と二卵性双生児のペアの手を蚊にさらして、どの双生児が蚊をひきつけるかを調べました。
その結果、二卵性双生児の結果は互いに異なることが多かったのに対し、一卵性双生児のペアは蚊とひきつける度合いがほぼ同じだという傾向がありました。これは、身長やIQと同じように、蚊をひきつける度合いには遺伝的要素が存在することを強く示唆しています。
これは、休暇の間カップルの片方は蚊に悩まされるのに、もう片方は全く蚊に刺されないことがあるのを説明できます。この研究はいつか科学者がより良い虫除けを開発する一助になるかもしれません。
世界で最も危険な動物
世界で最も危険な動物は何でしょう?ヘビ?サメ?ネコ科の肉食動物?
いいえ、蚊です。 Bill and Melinda Gates財団が調査した情報によると、マラリアやデング熱など蚊が媒介する病気で、毎年72万5000人が死亡しています。
この論文は誰が執筆しましたか?
この研究はロンドンの衛生熱帯医学研究所、フロリダ大学、ノッティンガム大学、ロザムステッドリサーチの研究者によって行われました。資金提供はサー・ハレー・スチュワート・トラストからです。査読の上で医学雑誌PLOS Oneに公開されました。この医学雑誌はオープンアクセスジャーナルなので、この論文は無料でオンラインで読むことができます。
全般的にはメディアは研究を正確に報道しましたが、実験の規模がかなり小さい(被験者は合計74人)ことによる結果の信頼性への疑問には言及しませんでした。
Daily Telegraphは、虫除けを使っても遺伝子で決まる蚊に刺される度合いには何の影響も与えない可能性を示唆しましたが、この研究では虫除けを調べていないのでそれが正しいかどうかはわかりません。
これはどんな研究でしたか?
これは実験室で行われた双子の研究で、双子のペアの蚊をひきつける度合いの相対的な違いを比較しました。
研究者らは、同じ遺伝子を共有する一卵性双生児が、遺伝子が異なる二卵性双生児よりも蚊をひきつける度合いが互いに似るかどうかを解明しようとしていました。
双生児研究は、特定の形質がどの程度遺伝されるものかを調べる有用な方法です。しかし、それ以上のことはわかりません。例えば、どの遺伝子が関与しているのか、遺伝子がその形質にどのように影響するかなどです。
被験者はどんな人ですか?
研究者は、18組の一卵性双生児と19組の二卵性双生児を募集しました。そして、蚊を2つの箱につながるY字型のチューブに放出して、蚊をひきつける度合いを調査しました。
双子は手を箱の上部に置き、両方のチューブについて飛んできた蚊の数をそれぞれ数えました。彼らは、一卵性双生児の方が二卵性双生児よりも結果が近いかどうかを調べました。
研究者たちは一連の実験を行い、清浄な空気の中で双生児をペアで個別に実験し、ペアをわけた実験もしました。結果の偏りを避けるため、双生児のどちらがどのチューブを使うか、どちらが先に実験するかについては無作為に選びました。
被験者となった双生児は全員女性であり、閉経期の年齢を超えていました。また、双生児はニンニクや唐辛子のような強いにおいをする食べ物やアルコールを避け、実験の前には無臭の石鹸で手を洗ってもらうように求められていました。
研究者らは、双生児の体温が結果に影響を与えるかどうかも調べました。研究者らは、デング熱を媒介する種であるアエデス・アエギプティ(Aedes aegypti)の蚊を使いました。
研究者は2回データを分析しました。まず、清浄な空気の中で実験をしたときはどの双生児がより蚊をひきつけていたか、次に、他のペアの双生児と実験したときはどちらの人のほうが蚊をひきつけていたかについてです。
(蚊をひきつける度合いの相対的な違いを見るために)どちらのチューブにより蚊が飛んでいるのを数えただけでなく、(飛行量を測るために)Y字型チューブの中で少なくとも30センチメートル飛んだ蚊も数えました。
研究者らは、各双生児について平均10回の測定を行い、蚊をひきつける度合いが遺伝子に及ぼす割合の推定値を算出しました。
主な研究結果はどのようなものでしたか?
この研究の結果、一卵性双生児のペアは二卵性双生児のペアよりも蚊をひきつける度合いが似通う傾向が強いことが分かりました。
この研究は、蚊がある人のチューブを選択する確率は62%(標準誤差12.4%)、蚊がチューブを30センチメートル飛ぶ確率は67%(標準誤差35.4%)、遺伝的要因に関連することを見つけました。
研究者は、遺伝の影響をどの程度受けるかという点で、身長やIQと蚊をひきつける度合いは似た様なレベルにあると言います。
研究者はどのように結果を解釈しましたか?
研究者は、研究結果は「蚊の嗅覚が検出可能な表面下の遺伝子構成要素を示している」と述べています。言い換えれば、この研究は、蚊をひきつける度合いの少なくともいくつかは遺伝的な違いによるものであり、その違いを虫はかぎつけているということを示しています。
デング熱やマラリアなどの病気から身を守るために、生存に好都合な遺伝子が受け継がれて蚊には魅力がない体臭を発する人もいることが示唆されています。
しかし研究者は、実験の規模の小ささや実験の性質から言って、結論の正確性は保障できないということを警告しています。遺伝率推定値の標準誤差率が非常に高いことが不確実性を示しています。
結論
この研究は、両親から受け継いだ遺伝子が、蚊に刺される確率を決めるかもしれないことを示唆しています。しかし、研究の規模が小さいため、結果の信頼度には限界があります。
研究者は、体臭が蚊をひきつける度合いを決定することを示唆しています。体臭が遺伝的な要因に部分的に関係することはわかっているので、遺伝した体臭が多かれ少なかれ蚊をひきつける度合いを変えるというのは理屈に適っています。
しかしこの研究では、蚊が人の体臭に引き寄せられたのか、それとも研究されていない他の理由で蚊が人に引き寄せられたのかはわかりません。
科学者がより良い虫除けを生産するためにこの研究結果を使う前には、遺伝した体臭の成分が蚊をひきつけることとどのように関係するのかを研究する必要があります。この研究の段階では、刺されにくい人には蚊をひきつける成分が少ないのか、蚊が嫌う成分が多いのかわかりません。
あなたが他の人よりも蚊に刺されるなら、そして両親の一方または両方もよく刺されるなら、この研究は蚊に刺されやすい遺伝子を受け継いだ可能性を示唆します。
残念ながらこの研究の段階では、虫除けをする以外蚊を避ける方法はわかりません。ショーツよりは軽くルーズなズボンを履き、長袖のシャツを着るのもよいでしょう。蚊が食事をしようとする夕方と夜の間には特に重要です。
マラリアがあるエリアに旅行する場合は、どのタイプの抗マラリア薬を服用すべきか医学的アドバイスを受けることが不可欠です。出国前に投薬を開始する必要があるかもしれませんので、前もって計画することが重要です。