厳格な血糖値管理のメリット・デメリット

その他

血糖値の管理

血糖値をできるだけ通常に近い状態に保つことで、命を守ることができます。厳密な管理は、糖尿病のさまざまな合併症の進行を予防するか、遅らせることができ、残りの人生を健康で活発にすごすことができます。

しかし、厳しい管理は万人受けのものではなく、難しい作業を伴います。

厳格な管理は何を意味しますか?

厳格な管理とは、できるだけ正常な(非糖尿病の)血糖値に近づくことを意味します。理想的には、食前の数値が70から130ミリグラム/デシリットル、食事開始から2時間後の数値が180未満で、糖化ヘモグロビン(A1C)の数値が7パーセント未満を意味します。糖化ヘモグロビンの目標数値は、医師の研究室が使用するテストの種類によって異なります。

実際の生活では、医師と目標を設定する必要があります。常に正常な数値を維持することは現実的ではありません。そして、結果を得る必要はありません。血糖値を少しずつ下げることで、合併症を防ぐことができます。

どのように役立ちますか?

なぜ高血糖値が糖尿病患者に合併症を引き起こすのかはまだ誰にもわかっていません。しかし、グルコース濃度をできるだけ低く保つことで、いくつかの合併症を予防もしくは遅らせます。

糖尿病管理と合併症の試験(DCCT)のために、研究者は数年間、1型糖尿病患者1,441人を追跡しました。半数の人は標準的な糖尿病治療を継続し、残りの半分は集中管理プログラムに従いました。集中管理を受けている患者は、平均値がまだ正常値を上回っていたものの、標準的な治療を受けていた人よりも血糖値を低い状態に保ちました。

厳格な管理をしたグループと、標準的な治療をしたグループとを比べた結果、以下のようなことが判明しました。

・糖尿病性眼疾患は、全体の4分の1しか発症しなかった
・腎臓病は全体の半数で発症した
・神経病は全体の3分の1で発症した
・すでに上記の三大合併症の初期形態を発症していた人の数はさらに少なくなってる

厳格な管理をしながら生活する

きちんと管理するためには、次のことを行う必要があります。

・食事と運動にもっと注意を払う
・血糖値をもっと頻繁に測定する
・インスリンを服用する場合、使用量と注射スケジュールを変える

インスリンに強くなる

集中治療では、常に自分で低レベルのインスリンを補給し、食事をするときに追加のインスリンを服用します。このパターンは、正常な膵臓からのインスリンの放出を模倣しています。

より自然な濃度のインスリンを摂取する方法として、毎日複数回注射する方法とインスリンポンプの2種類があります。どちらも良い方法です。自分のライフスタイルに最適なものがどちらかによって、選択が変わるはずです。

毎日複数回注射する方法では、1日あたり3回以上のインスリン注射を受けます。通常、食事の前に短時間作用型または通常型のインスリンを投与し、就寝時には中または長時間作用するインスリンを投与します。

インスリンポンプでは、プラスチックチューブを通してインスリンを体内に放出する小さなポンプを装着します。通常、通常型インスリンを少量投与します。また、食事の前など、必要に応じてポンプから追加のインスリンを放出するようにします。

どちらの方法も、1日に数回血糖値を検査する必要があります。インスリンの1回の投与量または追加の投与量を調べる前に、どのくらいの単位を投与する必要があるか、また、投与するために食前にどのくらい時間をおけばよいかを知る必要があります。また、十分なインスリンを摂取したかどうかを確認するために、食後2時間から3時間後に検査する必要があります。どのくらい食べようとしているのか、また、どのくらい動き回ることが予想されるかによって、インスリン投与量を調整する必要があります。

始める

自分自身でこれらのことを理解する必要はありません。どんな方法を選んでも、健康管理チーム(医師、栄養士、その他のヘルスケア専門家)が、時間をかけてそのことを教えてくれます。このチームは、インスリンの投与量と投与時期についてガイドラインを作成するのを手伝います。

また、食事や運動のためのガイドラインを思い付くでしょう。これらのガイドラインは、検査を行うときに何度か変更されることがあります。

ひとりできちんとコントロールすべきではありません。優れた医療チームが必要です。糖尿病をよく理解しているか、あなたのために学びたいと思う医師を選んでください。医師は栄養士やメンタルヘルスワーカーなど、必要な他の医療専門家と連携したほうがよいでしょう。

小さな町に住んでいる場合、選択肢を注意深く見てください。専門家に診てもらうために街へ出たほうがよいかもしれません。

維持し続ける

厳密な管理プログラムを始めるのはわくわくします。しかし、それはまた壮大すぎて困惑するかもしれません。どのようにして、モチベーションが下がるのを防げばよいのでしょうか。以下にヒントをいくつかご紹介します。

ゆっくり始める

たとえば、毎日何度も血糖値を調べることから始めるかもしれません。まずはそれに慣れましょう。その後、毎日複数回の注射を始めます。注射に慣れたら、新しい運動プログラムを追加したり、食生活を変えたりしましょう。

正直になる

新たに糖尿病と診断された場合は、正面から自分と向き合いましょう。まだ怒っていて、糖尿病を患っていることにうんざりしていますか?もしそうなら、あなたはすでに大きな挑戦しています。自分の人生の変化を受け入れるまで、厳格な管理を始めるのは待ったほうがよいでしょう。

目標を現実的にする

どんなに厳しく取り組んでも、血糖値の数値は毎回完璧ではないでしょう。血糖値が高すぎる、あるいは低すぎることが多い場合、治療計画を調整する必要があるかどうかについて医師に相談する必要があります。しかし、「間違った」数値がたまにしか起こらなければ、それは仕方ありません。練習すれば、さまざまな状況に適したインスリン投与量を選ぶのに徐々に慣れていきます。

休憩する

必要に応じて、毎日の治療をひと休みしてください。休みを取ると、再び始めるときに計画を守りやすくなるかもしれません。

メリットとデメリット

緊密なコントロールを試みる大きな理由のひとつは、後で合併症を防ぐためです。しかし厳格な管理をすることで、今を楽しむことができる効果があります。

・おそらく気分が良くなり、さらにエネルギーにあふれる
・活動をもっと変えることができる
・毎日同じ時間に食事を摂ることに縛られなくなる
・先天性欠損のリスクを減らすことができる

しかし、DCCTは、厳格な管理について2つの大きな問題を見出しました。

低血糖

厳格な管理をしている人は、低血糖反応が3倍ありました。低血糖症の症状に注意すれば、自分で素早く治療できるようになります。また、運転前に必ず血糖値を確認してください。厳格な管理をしようとしているときに低血糖反応がある場合は、医師に相談してください。目標を緩和したり、しばらくの間標準療法に戻す必要があるかもしれません。

体重の増加

厳重な管理をしている人は、標準的なインスリン治療を受けている人よりも体重が増えました。 DCCTの平均値は4.5キロでした。体重が増えることを心配しているなら、栄養士や医師と協力して、食事を工夫したり、予防する計画を立てたりしてください。

また、以下のようなコストを考慮する必要があります。
・医療チームに頻繁に診てもらう必要がある
・ポンプのコストは数千ドルで、月の運営コストは6000円から8000円かかる
・複数回注射する療法ははるかに安いですが、以前よりも多くの消耗品(テストストリップやシリンジなど)を使う

2型糖尿病についてはどうか?

DCCTでは1型糖尿病の人のみを調査しました。しかし医師は、厳格な管理が2型糖尿病患者の合併症を予防することもできると考えています。

2型糖尿病のほとんどの人はインスリンを服用していません。それなしであなたがいかに厳格な管理ができるのか疑問に思うかもしれません。

1つの方法は、体重を減らすことです。余分な体重を減らすと、あなたのグルコース値が正常値に下がることがあります。体重を減らし、それを維持するためのカギは、食べ物を少なくして運動量を増やすよう、行動を変えることです。医師はあなたと一緒に、食事や運動計画を見つけることができます。

体重を減らす必要がなくても、運動はあなたの血糖値をコントロールするのに役立ちます。運動によって、細胞が血中からグルコースを取り除くようになります。

血糖値を定期的に確認する必要があります。どのくらいの頻度で確認するか、意思と決めましょう。2型糖尿病の一部の人にとって、1日1回または1週間に1回くらいで十分かもしれません。

運動や食習慣がグルコースの値を抑えるのに十分でなければ、医師は薬を処方するかもしれません。薬があまり効かなければ、インスリンを摂取する必要があるかもしれません。2型糖尿病の人は、厳格な管理を始める前に医師に相談してください。

厳格な管理はすべての人に合う訳ではない

糖尿病の人は誰でも安全にコントロールできません。

子供は厳格な管理プログラムに入れてはいけません。血中に十分なグルコースを含むことは、脳の発達に欠かせません。医師の中には、厳格な管理は子供が13歳になるまで待つべきだと言う人もいます。ほかの医師は、7歳以降であれば大丈夫だと言っています。

高齢者はおそらく、厳格な管理をすべきではありません。低血糖は高齢者の脳卒中や心臓発作を引き起こす可能性があります。また、厳格な管理の主な目的は、将来の合併症を防ぐことです。厳格な管理は、少なくとも10年以上生きることが期待できる健康な人に最も価値があります。

すでに合併症を抱えている人は、厳格に管理すべきではありません。例えば、末期の腎臓病や重度の視力喪失の人はおそらく管理しないほうがよいでしょう。こうした人たちの合併症は症状が進行しすぎているので、あまり改善はみられないと思います。冠状動脈疾患または血管疾患を有する人の中には、厳格な管理を試みるべきではありません。

低血糖症の認識がない人も、おそらく厳密な管理をしないほうがよいでしょう。

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