腹部大動脈瘤スクリーニングについて

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腹部大動脈瘤スクリーニングとは

腹部大動脈瘤(AAA)スクリーニングとは、大動脈(心臓から腹部を通って身体の残りの部分まで走る主要な血管)の危険な腫れ(動脈瘤)を検出する検査です。
腹部大動脈瘤は女性や若い男性よりも65歳以上の男性で一般的に見られます。
AAAは通常症状はありませんが、破裂すると非常に危険で通常は死に至ります。動脈が破裂したAAA患者10人中8人は、病院に到着する前に死亡するか、手術後まで生き残れません。
腹部大動脈瘤について、詳しくはこちらをご覧ください。
検査では胃(腹部)の超音波検査を10~15分程度行います。
腹部大動脈が広がっていなければ、再度検査する必要はありません。
小型から中型の動脈瘤がある場合は、定期的にモニタリングして危険なほど大きくなっていないか確認します。
大型の動脈瘤があることが判明した場合は、2週間以内に血管外科医(血管専門医)に診てもらうことになります。そこで、破裂の危険性を減らすために治療を受けるかどうかについてアドバイスされます。

なぜ腹部大動脈瘤のスクリーニングをするのですか?

一般的には腹部大動脈瘤があっても自覚することはできません。おそらく痛みを感じることも、何か異常に気づくこともないでしょう。スクリーニングは早期に動脈瘤を検出する方法です。
腹部大動脈瘤は、咳が続くので胸部の検査を受けたなど、ほかの病気の検査をしているときなどに偶然見つかることもあります。腹部大動脈が特に大きく腫れた場合、拍動感を感じたり、腰や背中に痛みを感じることがあります。これに気づかなければ破裂するまで腹部大動脈瘤があることはわかりませんが、破裂すれば緊急事態であり、通常は死に至ります。腹部大動脈瘤が破裂した10人のうち8人以上が、病院に到着する前に死亡するか、緊急手術後まで生き残れません。
しかし破裂する前に動脈瘤が発見されれば治療できます。通常は手術で治療します。手術では、大動脈瘤は合成チューブで置き換えるか補強します。65歳以上の男性は特に動脈瘤を発症する危険性が高いです。
動脈瘤があるかどうかを調べる最も簡単な方法は、スクリーニングで腹部の超音波検査を行うことです。検査することで、腹部大動脈瘤で死亡する確率が約半分に抑えられます。

腹部大動脈瘤の危険性があるのは誰ですか?

男性は、女性よりも腹部大動脈瘤を有する可能性が約6倍高いです。動脈瘤の発生リスクは年齢とともに増加します。腹部大動脈瘤のリスクは、以下の場合にも増えます。
・喫煙している
・高血圧である
・兄弟姉妹や親が、腹部大動脈瘤を有するか有していた場合には、その人に腹部大動脈瘤が見つかった年齢より5歳若い歳にスクリーニングを受けるように勧められます。
腹部大動脈瘤のリスク要因について、詳しくはこちらをご覧ください。

スクリーニング中に何が起こるのですか?

AAAスクリーニングでは、痛みを伴わない腹部の超音波検査を通常は10〜15分程度行います。
検査のために病院に着いたら、スクリーニング技術者が被験者の詳細をチェックし、検査の説明し、被験者からの質問に答えます。被験者は横になってシャツを持ち上げたり外したりするように求められます。服を脱ぐ必要はありません。技術者は被験者の胃(腹部)のあたりに透明なゲルを塗ってから、小さな超音波スキャナーを皮膚の上で動かします。超音波スキャナーは腹部大動脈の画像をモニターに表示し、技術者はその厚さを測定します。腹部からゲルを拭き取られシャツを戻したら、技術者はすぐに結果を教えてくれます。
技術者は大動脈をはっきりと見ることができないことが時々あります。それでも心配する必要はありません。この場合、通常は別の日に別のスキャナーを使って検査します。

腹部大動脈瘤のスクリーニング結果

腹部大動脈瘤の検査結果は、正常、小型の大動脈瘤、中型の大動脈瘤、大型の大動脈瘤の4つのうちのいずれかになります。検査後に行うことは、結果によって異なります。

正常

超音波スキャンで腹部大動脈が正常なサイズ(直径3cm未満)であることが示された場合、腹部大動脈瘤はないということになります。動脈瘤は非常にゆっくりと成長し、65歳以降に成長することはまずないので、さらに別の検査をすることはありません。

小型または中型の腹部大動脈瘤

検査で小型(3.0-4.4cm)または中型(4.5-5.4cm)の大動脈瘤があることがわかった場合でも、この段階では治療は必要ありません。しかし、動脈瘤の大きさをチェックするために定期的に検査することになります。
小型の大動脈瘤なら毎年検査し、中型の大動脈瘤の場合は3ヶ月ごとに検査します。
動脈瘤は非常にゆっくりと成長するので、小型または中型の動脈瘤があっても治療は必要ではないことがあります。
また、動脈瘤が大きくなるのを防ぐ方法についてアドバイスを受けます。
・禁煙する
・バランスの取れた食事を食べる
・健康的な体重を維持する
・定期的に運動をする
・主治医の指示に従って服薬する(血圧を下げる薬など)
動脈瘤の成長を遅らせる方法について、詳しくはこちらをご覧ください。

大型の大動脈瘤

検査で腹部大動脈瘤が5.5cm以上であることがわかった場合は、血管外科医に紹介され、手術を勧められるでしょう。結果判明後2週間以内に血管外科医の診察を受けるべきです。
外科医は、被験者の全般的な健康状態や大動脈瘤のサイズを考慮して、被験者と治療オプションを話し合うでしょう。
手術には主に2つの選択肢があります。
・開腹手術―胃(腹部)のあたりを開腹して、大動脈瘤をグラフトと呼ばれる合成チューブに置き換える
・血管内手術―鼠蹊部に小さな切開部を作り、壁を補強するために脚の動脈を介して大動脈の腫れた部分にグラフトをいれて動脈の壁を補強する
手術に身体が耐えられない、または手術を受けたくない場合は、腹部大動脈瘤の成長を遅くして破裂の危険性を低下させるため、生活習慣改善のアドバイスや薬が提供されます。さまざまなタイプの手術の長所と短所を含め、大型の腹部大動脈瘤の治療について、詳しくはこちらをお読みください。

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