子供を養子として受け入れる ― あなた自身の健康と幸せ

養子縁組について
養子縁組を決意した際には、その決定は、過去に新しい家族を作ろうとあなたが行ったすべての試みも含め、あなた自身の健康歴によって左右されます。どの養子縁組機関であっても、あなたが子供を養子として受け入れるのにふさわしい人間かどうかを判断する際には、あなた自身の健康、およびあなた自身が必要としている要素を考慮に入れます。
養子を受け入れることを選ぶ理由には、自分はまだ独身なので子供に家庭を提供してあげたい、同性婚をしている、あるいは自身の血縁上の子供のために(新しい子供を産む代わりに)子供の兄弟姉妹として養子を受け入れたい、など様々なものがあります。
多くの夫婦が、自分達が子供を授かることができなかった、という理由で養子縁組を選んでいます。子供を授かろうと長期にわたって努めたにも関わらず上手くいかなかった、となると、その心理的影響は大きなものとなります。このような状況においては、養子縁組の手続きを始める前に、自分達が子供を授かることができないという現実を受け入れることが大切です。
それぞれの人が、それぞれに異なっています。それでも、自分達が子供を授かることができないことを受け入れるまでには、悲しみと喪失感の伴う特有の期間が存在します。養子縁組は新たに家族を作るのに良い方法ではありますが、自力で子供を授かる場合とは、大きく種類の異なるものとなります。
不妊と養子縁組
もしあなたがIVF(体外受精)等の不妊治療を受けている場合には、ほとんどの養子縁組機関は通常、養子縁組を申請する前にその治療を終わらせることを求めてきます。機関からは、あなたの治療が終了し、そこからあなたが養子を受け入れる親として正式な認定を受けるための申請を行うまで、数ヶ月間、待機するよう要求されます。この期間に関する方針がどのようなものであるかは、個々の養子縁組機関に確認を取ることができます。
養子縁組申請が遅れてしまうのはフラストレーションが溜まってしまうことではありますが、その間の期間を準備に利用することもできます。例えば、養子縁組に伴う問題・課題について十分に調べ、また養子縁組を行ってからそれぞれ異なる段階にいる他の人々に話を聞くことも可能です。あるいは、地域で開かれている養子縁組の情報交換会に参加し、友達や家族に、あなたが彼ら・彼女らの子供と一緒に過ごさせてもらうことは可能か、尋ねてみることもできます。
あなたのパートナーや親友、家族に、あなた自身の考えと気持ちについて相談してみましょう。この相談は、養子縁組のプロセスそのものに関しても、また子供があなたの元へ受け入れられた際に、より良い対処を行えるようにするためにも、有効な取り組みです。
養子として受け入れてくれる人を探している子供を専門に取り扱っている機関紙もあります。様々なニーズに関する問題を抱えている子供を、親としてどのように養育していくか、しっかり考えてみましょう。
また、不妊に悩み、IVF(体外受精)や代理母出産、養子縁組など、新たに子供を持つ他の方法を探している家族に対して、ファクトシート(情報を提供する報告書)を用いてサポートを行っているネットワークもあります。
養子縁組に関する、あなた自身の健康アセスメント(査定)
養子縁組を希望する際には、縁組に対する適性のアセスメント・プロセスの一つとして、包括的な健康アセスメントが必須となります。養子縁組機関は、あなたに関して、身体的あるいは精神的な健康状態に問題がないかをチェックし、その子供が大人になるまで、理想的にはその先までの間、安全で安定した、愛情で満ちた家庭を提供することができるだけの能力を維持することが可能か、判断を行います。
健康状態に関するレポートは、通常このアセスメントに関して責任を負っている、あなたの主治医によって作成されます。アセスメントにかかる費用は、行われる検査の内容によって変わります。中には養子縁組機関がアセスメントの費用を負担してくれる場合もありますが、あなた自身で支払いを行う場合もあります。
縁組に関わる健康アセスメントには、以下のような内容が含まれます。
・あなたの健康歴
・あなたのライフスタイルの評価
・あなたの家族の健康歴
・身長、体重、血圧などを含む、一式の身体検査
女性の場合は乳房に関しても検査が行われ、男性の場合は、癌の初期兆候などの深刻な病状がないか、性器に関しての検査が行われます。このケースが適用されるかどうかは、あなたの家族歴によって判断されます。主治医の多くは乳房の検査は行いませんが、その場合に代わりに「乳房への意識」に関して話し合いを行います。
養子縁組機関の保健アドバイザーは、あなたの健康状態に関するレポート上の全ての情報をチェック・査定し、その上で、あなた自身の同意の下、他の医療専門家により多くの情報・意見を求めることもあります。保健アドバイザーは機関に対し、あなたの現在および将来の健康状態に考えられる潜在的リスク、また機関があなたに対して行うことができるサポートについて、勧告書を作成します。その際には、以下のような、事項が考慮されます。
・ライフスタイル ― これにはあなた自身の食生活、体重、運動量、アルコール摂取量、喫煙状況などが含まれます。(以下、イギリスの例のため省略)
・あなたの障害の有無 ― 受け入れ人が障害を持っていることが、必ずしも養子縁組の成立の障壁となるとは限りません。養子縁組機関は、障害を持っている大人について、自分自身が他の人と「異なる」と考えている、あるいは同様に自身も障害を抱えている子供に対して、その子供が直面する困難へのユニークな洞察を行うことが出来る、と認識していることもあります。
・精神健康上の問題 ― 精神健康上の問題を抱えている場合には、身体的健康上の問題の場合と同様に、慎重な考慮がなされ、必ずしも養子縁組に不適と判断されるわけではありません。
親として養子を受け入れる
親として養子を受け入れることには多くのメリットがある一方で、ニーズに関して複雑な状況を抱えた子供の養育に伴う困難が、あなたやあなたの人間関係に大きな負担をもたらすこともあります。受け入れた後の初めの数ヶ月間は楽しいものですが、それには罪悪感や恐怖感、鬱のような気持ちが伴うこともあります。あなたはその子供の新しい親である、即ち、その子供を育てるのは初めてであるということを覚えておき、その上で、その膨大な課題を引き受けるようにしてください。
自分の期待を制御する
アンナ・フロイト・センターの局長、ピーター・フォナギー教授は、次のように語っています。「あなた自身と養子の関係性をより良いものにするためには、自身が抱く期待のマネジメント(制御)をして、ある程度辛抱強くあることが大切です。というのも、養子として受け入れられた子供は、自身の置かれる環境に対して耐性がなく、特に影響を受けてしまいやすいのです。もしあなたがイライラし始めたり、フラストレーションを感じたり、ストレスや失望を感じ始めると、子供は気づいてしまうものなのです」
「子供を知るよう努めてください。出来る限り現実的になってください。あなた自身の気持ちに心から素直になり、日記に記すようにしてください」と、彼はアドバイスしています。
養子を持つ親達のための支援ネットワーク
自分の本当の気持ちを、家族や、親友や、他の養子を持つ人々など、他の人に共有することが役に立つと感じられることもあるでしょう。また、休息を取り、エネルギーを取り戻すために、子供から一時的に離れる時間をとることも大切です。
これから養子縁組をする人や、既に養子を受け入れている人のために、知っていることの共有や相互支援をサポートしている機関もあります。他の団体へのサポートを行ったり、様々な形でイベントを開くことで、メンバー同士でお互いに会って支援の共有を行い、地域で養子を受け入れている他の人々との友情を深められる機会を提供している機関もあります。