微小欠失:出産前に知っておきたい遺伝子疾患について

微小欠失について
ダウン症やその他の染色体異常に関する出生前検査についてはご存知かもしれませんが、微小欠失という言葉は聞いたことがあるでしょうか?これは非常に一般的なもので、健康状態に問題を生じさせる種類のものもあります。これらの症状を出産前に発見することで、子どもの命の質を向上させることができる方法について準備をすることができます。
自分が妊娠していると分かった瞬間、9ヶ月後に赤ちゃんと対面することを想像して、おそらく喜びと期待でいっぱいになるでしょう。赤ちゃんは完全に健康な状態で生まれてくるはずです。それでもなお、妊娠初期(9週目から)の間、医者はNIPTや、ダウン症、パトウ症候群、エドワーズ症候群、三倍体、性染色体異常などの多くの染色体異常に関する胎児のリスクを診断する検査などの選択肢を勧めてくることがあります。しかし、NIPTは、微小欠失というおそらく聞いたことがないであろう症状に赤ちゃんが該当する可能性も測定している、ということはご存知なかったかもしれません。これは最も一般的な遺伝子疾患の一つですが、微小欠失を早い段階で発見することによって、赤ちゃんが生まれた瞬間から必要な治療を受けられる手はずを確実なものにすることができるのです。
微小欠失とは
体内のほぼすべての細胞には、DNAを含んだ染色体があります。母親から23、父親から23、合わせて46の染色体を受け継ぎます。生涯を通して、細胞は分裂することで複製されます。この過程の中で、これらのDNAの要素を扱いやすくなるように、身体はDNAを細かく分割していくのです。しかし、時々、この再構成の過程の間に小さな染色体のかけらが取り除かれてしまうことがあります。これが微小欠失と呼ばれるものです。
微小欠失にはさまざまな種類があり、その影響は失われたかけらがどの部分のものであるかやその部分の大きさはどれほどであるかによって異なります。多くの欠失の種類のメカニズムはまだ完全に解明されていないため、研究が続けられています。赤ちゃんの健康や発達にまったく影響のない微小欠失もありますが、知的障害、運動技能障害、先天性欠損や流産などを引き起こすものもあります。NIPTは、22q11.2欠失症候群(DiGeorge症候群)、1p36欠失症候群、アンジェルマン症候群、猫鳴き症候群、プラダー・ウィリー症候群という5つの最も一般的な微小欠失を調べることができる唯一の検査です。
微小欠失は受胎の段階から存在しており、妊婦やそのパートナーが何かをした、あるいは何かをしなかったために起こった症状ではないということを理解しておくことが大切です。
どのくらい一般的なものであるのか
何らかのリスク要因を抱えている妊婦に起こりやすいような他の染色体異常とは違い、微小欠失は無作為に起こり、人種や妊婦の年齢に関わらずどの赤ちゃんにも等しく影響します。実際、私たちのほとんど全員が染色体内に何らかの微小欠失を抱えているということを推定している研究者もいます。NIPTは子どもの身体的、精神的成長に影響を与える可能性がある微小欠失を見つけることに焦点を置いています。
22q11.2欠失症候群
最も一般的な微小欠失の一つに、22q11.2欠失症候群というものがあります。第22番染色体の一部が欠損していることによって起こるものです。出生児の2000人に1人の割合で見られ、ダウン症と同じくらい一般的な症候群です。この症候群は先天性心疾患や口蓋裂の2番目に一般的な原因となりますが、同時に広範囲に及ぶ影響を引き起こす可能性があります。影響がまったくない場合もありますし、認知能力、言語能力の発達、あるいは発育が遅れたり、カルシウム不足や免疫系欠損などが起こる場合もあります。22q11.2欠失症候群になった人の中で、まったく同じ症状が出るということは絶対にありません。
微小欠失の発見方法
数年前までは、多くの妊婦は妊娠初期の血液検査やクアッドスクリーンの間に、母体血清α-プロテイン検査(AFP検査)と呼ばれるものを受けていました。この検査では妊婦自身の血清から染色体異常を調べていました。しかし現在のNIPTでは、医者は妊婦の血液中に漂っている胎児の胎盤細胞からセルフリーDNAを直接検査することができます。これによって、結果は著しく正確なものとなります。技術の発達によって正確さが増しているため、遺伝学者はより高い解像度で胎児自身のDNAを調べることができます。これは、過去には絨毛検査(CVS)や羊水検査でしか見られなかったものです。
結果が陽性だった場合
NIPTはスクリーニング検査であって診断検査ではないため、赤ちゃんが特定の症状を抱えているということを100%確実に明らかにすることはできません。リスクスコア、あるいは可能性の見積もりを提供するだけです。可能性が十分に高かった場合、医者は胎児遺伝子医学の専門家への相談を勧めるかもしれません。医者は羊水検査やCVSのような、胎児にわずかなリスクはあるものの疾患を確実に診断することのできる侵襲検査を提案する可能性もあります。
さらに検査をした結果、胎児が微小欠失を抱えていると判明した場合は、事前に情報を得ておくことによって赤ちゃんの健康や命の質を向上させるために対策をすることができます。治療法はありませんが、さまざまなセラピーを受けることはできます。赤ちゃんが生まれたらすぐに、心臓、神経、口蓋、骨、免疫、聴力、視力に関する問題を治療するための徹底的な見積もりを専門家とともに立てることができるでしょう。例えば、22q11.2症候群の赤ちゃんであれば、骨の中のカルシウムを維持することが困難です。そのため、出生前診断によって、医者は子どものカルシウム値を監視していく必要があり、必要に応じてサプリメントを提供しなければならないということを知ることができます。免疫不全も22q11.2症候群で一般的な症状ですが、この疾患は遺伝子検査なしでは出産前に発見することが困難であるため、生ワクチンを子どもに投与することを避けたり、病気である人を子どもに近づけないように最新の注意を払うことによって対処することができます。起こり得る可能性のある言語能力障害や学習障害に関して注意を払うこともできるでしょう。そうすることで、早いうちにこのような障害を治療することができます。
自分の赤ちゃんが微小欠失を抱えているかどうか知ることは恐ろしいことであるかもしれませんが、多くの親たちは、検査をすることで準備する時間を得られ、最善で最も安全な結果を保証することができるため、症状について知ることは出産のために重用なことであると考えています。