子供たちが教えてくれた忍耐の術〜体験談〜

外部からの支援
デボラ・フレンチ(Deborah French)には子供が4人いますが、そのうち2人は特別な教育を必要としています。 このインタビューでは、彼女が子供たちをどのように日々サポートしているか、そして外部から受けている援助について説明します。
ASDのヘンリー、10歳
デボラの息子のヘンリーは10歳で、自閉症スペクトラム障害(ASD)をわずらっています。彼の課題は主に社会的なもので、幼いころから表情、ボディーランゲージ、声調、そして社会的な遊びのルールを認識することができず、そのためとりわけ学校になじむことが出来ませんでした。
ヘンリーは普通学校に通っていますが、フルタイムの介助者と常に一緒です。彼が直面する課題を乗り越えることで友達との関係をはぐくんでいってほしいと、デボラは毎日強く願っています。
「それは難しいけれど、価値のあることです。なぜなら彼は、他者との交流や友情を育むために必要不可欠な人生の技に取り組み、そしてそれをものにすることを余儀なくされているからです。」と彼女は言いました。
ヘンリーはまた、自分の行動がトラブルになる可能性があるということを認識するのも困難です。それを助けるためにデボラは、彼がそれぞれ直面した、異なる状況の絵を描きます。
こうすることで、何が起こったのかをヘンリーが再検討できるようになるのです。つまり、自分のペースで、関わった人全員の立場を考え、ゆっくりと表情やボディーランゲージを読み解くことが出来るのです。
結果的に、彼の社会生活はうまくいっています、と母親は言います。この手法は、全英自閉症協会で用いられている吹き出しシンボルなどと同じです。
デボラはまた、ヘンリーと一緒に『テンプル・グランディン~自閉症とともに』という映画を観ることも、非常に助けになると気づきました。それは様々なシーンで、人々がテンプルの行動に対してどのような反応をするのかを見て、それをヘンリーと一緒に議論することが出来るからです。だんだん自分の状態への理解が深まってきたヘンリーは、苦しんでいるのが自分だけではないと気がつき、勇気付けられました。
「結局、ヘンリーの両親として大切なのは、彼がASDを自分の弱点ではなく、ただ単に彼のすばらしい人格の一部なのだとわかってもらうことです。」と、デボラは言った。
ダウン症のアマリヤ、9歳
デボラの長女である9歳のアマリヤはダウン症をわずらっていて、軽度から中程度の特別支援を必要とする子供のための特別支援学校で勉強しています。彼女は読み方を勉強していますが、話すことが出来るのはほんの数単語だけです。「私たちの目下の目標は、彼女の生活のこの部分を発達させることです。」と、デボラは語ります。
アマリヤにもっと喋ってもらうために、デボラは指を使って何回も繰り返すことで、文章の作り方を教えています。「たとえば毎朝彼女を起こすとき、私は『おはようアマリヤ』と声をかけます」と、デボラは説明します。
「そうしている間に、私は彼女の顔の近く、目線の直線上に手をあげて、単語を言うたびに、親指から順に違う指をあげていきます。そして、”good”という最初の単語を言って、人差し指をあげることで次の単語を促しながら、彼女が文を繰り返すのを待つ、という過程を繰り返します。」
わずか数日後、アマリヤは起きたときに「おはようお母さん」と言うことが出来るようになっていました。 「私にとって最も報われたと感じる瞬間は、彼女が私に話しかけるときの彼女の笑顔です。」と、デボラは語ります。
アマリヤが手洗いやシャワー、着替えなどといった生活上の課題をこなせるように、デボラは彼女が何をすればいいのかのイメージ図を作りました。
「着替えをするときの過程を強調した写真をとってラミネートにして、それを大きなボードに順番に並べました。そして彼女が着替えるときに、それぞれの写真を参照したのです。」
今や彼女は最低限の介助で着替えとシャワーができ、さらに一人でご飯を食べる方法も勉強しています。
デボラがアマリヤを助けるために採用している手法は、マカトンという特別支援を必要とする人々がサインやシンボルを用いてコミュニケーションを勉強する際に使う言語プログラムとよく似ています。自信を持って成長するにつれ、多くの人が話すことを選び、マカトンをやめるのです。
他の家族
デボラにはまた、4歳になる双子の娘がいます。2歳半くらいのころ、双子の1人がどうして7歳になるアマリヤが喋らないのかと尋ねました。デボラとその夫は、双子にアマリヤの症状を説明することに決め、ごく簡単に説明し、質問を促しました。
デボラは、「アマリヤの行動に対して双子は時折不満を持ちますが、どちらも彼女に対して非常に根気強く、そして親切です。最近、二人が食事の後に顔をきれいにする方法を教えてあげるためにアマリヤを洗面所まで連れて行ったと聞いてうれしかったです。」と、言いました。
ヘンリーもまた、周りの子にどうしてアマリヤにとって喋ったりきちんと遊ぶことが難しいのかを説明し、味方としてふるまうことが好きなようです。これは大人と子供の両方が彼女に対して忍耐強くなることを期待してのことですが、デボラはこれを見るのが大好き
だと言います。
逆にアマリヤはヘンリーに対して特に敏感で、彼が落ち込んでいるときには抱きしめてあげたりしています。「コミュニケーションに問題があった2人の子供同士、非常に強い絆があるようです。」と、デボラは語りました。
感情的かつ実践的なサポート
子供がまだ小さかったころ、デボラの家族は地方議会を通じて申し込める、複雑かつ特別な支援を必要とする子供のための早期介入サービスである就学前教育チームの支援を受けました。「自宅での彼らの指導、支援、そして定期的な遊戯療法の会は非常に教育的で洞察力に満ちたものでした。」と、デボラは語ります。
アマリヤが生まれたとき、デボラは特別支援を必要とする子供の両親のための、地元の支援団体に加わりました。「そこは泣いたり、辛い経験をシェアしたりできるくらい居心地の良い場所で、頼れる、安全な場所でした。いつも静かな母親から静かな子供が生まれるという意見だったのです。」
子供の問題に取り組むに当たって、最も有益な回答というのは話を聞いてくれて、「最も必要とするときに抱きしめてくれる」家族や友人からのものであるとデボラは気がつきました。
彼女はまた、すべての家族が子供たちにどうして一部の人たちの見かけや振る舞いが普通とは違うのかを教えてあげることが大切だと感じています。「これらの違いについて教えられたとき、子供たちは忍耐力と理解を得られるのです。」
特別な支援を必要とする2人の子供の親として、デボラは医者や専門家とたくさんの時間を過ごしました。「NHSの医療専門家やセラピストのうち、彼らの資金が制限されているということは明白でしたが、それでもなお不親切だったり非協力的な人には1回も出会ったことがありませんでした。」と、彼女は語ります。
特別支援を必要とする子供の子育て
「私は子供たちの好奇心と幸せそうな様子、そして究極的に、彼らが接触した人の心を溶かす能力を持っているということに畏敬の念を抱いています。」と、デボラはゆるぎない自信をもって語ります。
さらに、子供たちは忍耐のすべを教えてくれた、と付け加えます。これは忙しすぎてリラックスできないと思っている人にとっては重要な教訓です。「私たち全員にとって人生はあまりにも忙しく、せわしないです。でも私が子供たちに教えるときには、全く急ぐことは出来ません。もしあせれば、彼らは私が教えている内容をつかめず、不幸せで不満を持つでしょう。」
自分の子供に学習障害があると知ることは、どんな親にとっても多くの恐怖と疑問を生み出すことにつながるでしょう。デボラもまた一年以内に2人の子供がそう診断された時は苦しみましたが、確実に後から楽になると彼女は言います。
「もしあなたがそのような苦しみの真っ只中にいるのならば、肩の力を抜いて、すべて一歩ずつやっていくということを忘れないでください。あらゆる決断において自分の直感を信じれば、切り抜けられるでしょう。」