体外受精で生まれた男性は精子の問題を抱えている可能性がある?

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不妊症の遺伝について

「一般的なIVF治療で生まれた男の赤ちゃんは……、自然妊娠で子どもを授かることができないかもしれない」とDaily Telegraphが報道しています。

新しい研究は、細胞質内精子注入(ICSI)技術で生まれた男性のサンプルを少し調べました。
ICSIは、90年代初頭に導入された体外受精(IVF)治療のひとつです。それは不妊の原因が男性の精子にある場合の治療法として設計されました。健康な精子を「収穫」し、それを直接、卵子に注入するのです。

この研究では、ICSIで生まれた男性と、対照群として自然妊娠で授かった男性がそれぞれ54名ずつ調査されています。

精子の質を比較すると、ICSI男性の平均精子濃度、全精子数、および運動精子総数(「活発な」精子の量)が低いことがわかりました。精子の形状に違いはありませんでした。

この発見は、父親の不妊症が男性の子孫に遺伝する可能性があるという懸念を裏付けています。しかし、この研究には、研究の規模が小さいなど、その信頼性に関わる限界があります。そして、採取された男性のうち、どのくらいが今後不妊治療を必要とするかを明らかにすることがまだ残っています。男性の中には、依然として最適ではない状態の精子で、自然妊娠で子どもを授かっているひともいます。

この研究は制約があまりにも多すぎるため、確固たる結論を引き出すことができないのです。

精子を改善するためにできることは、タバコをやめ、過度のアルコール摂取を控え、きつい下着をやめて睾丸が体よりも低い温度になるのを防ぐことが大切です。

この説はどこから来たのか?

この研究はブリュッセルの研究者によって実施されました。また、査読雑誌である Human Reproduction に掲載されています。

この研究は、イギリスのメディアで大規模に報道されていますが、研究に関する重大な制約があることは説明されていません。特に、この研究では、不妊の問題が父親から直接継承されたのか、またはICSIの結果であるのかを証明することができないのです。

どんな研究だったのか?

この横断的研究は、ICSIで生まれた若年男性の精液の質を、自然妊娠で生まれた男性のものと比較することを目的としました。

ICSIは単一の精子を直接卵子に注入するもので、皿の中で卵子と多くの精子が混ぜ合わされる伝統的な体外受精(IVF)とは異なります。もともと、重度の男性不妊症があった場合に実施されましたが、現在はあらゆる不妊治療の問題で一般的に使用されています。この研究に参加した若者は、父親の重度の不妊症のためにICSIによって生まれ、このことが男性の子孫に遺伝する可能性があるのではないかと心配しています。

この研究は、若い男性の精子の質と自然妊娠で生まれた男性の精子とを比較するにはよい方法です。しかし、これは横断研究だったため、サンプルは1回採取されただけでした。

検査前に射精を止めた長さやアルコールの使用など、多くの要素がサンプルの品質に影響する可能性があります。

研究者らは、これらの要因のいくつかを考慮して結果を調整しましたが、この検査デザインでは、不妊の問題がICSIによって受け継がれたり、原因となったりするものであるかを示すことはできませんでした。

研究には含まれていたものは?

ICSIによって生まれた若い男性は、以下の場合にこの研究に参加するよう求められました。

・独身
・白人
・調査期間中に18~22歳である

この研究に参加したICSIで出まれた若い男性は、ホルモン刺激を使わずに自然妊娠で生まれた友人を比較対象のメンバーとして招待するよう求められました。

ICSIで生まれた男性もそうでない男性も、家族歴、ライフスタイル、健康歴を含むアンケートへの記入を求められました。そのアンケートには、服用薬や外科手術などの履歴も含んでいました。

すべての参加者は、3日間射精を控えた後、病院で精液のサンプルを提供する必要がありました。サンプルは、量、濃度、全精子数、運動性および形状について測定しました。

2つの群を比較するために統計分析を行い、以下の交絡変数について調整しました:

・年齢
・BMI
・性器の奇形(たとえば睾丸がひとつしかない)
・射精から分析までの時間
・禁酒期間

基本的な結果は何か?

ICSIで生まれた54人の男性と、57人の自然妊娠で生まれた男性がこの研究に参加しました。そして、ICSIで生まれた男性は、自然妊娠で生まれた男性と比較して、平均精子数が低いことがわかりました。

・平均精子濃度(1770万/ ml対3700万/ ml)
・総精子数(3190万対8680万)
・総運動精子数(1270万対3860万)

潜在的な交絡因子の調整の後、2つの群の差は残っていました。自然妊娠で生まれた男性には、ICSIで生まれた男性と比べて以下のような特徴がみられました。

・精子濃度がほぼ2倍(比率1.9、95%、信頼区間[CI] 1.1〜3.2)
・総精子数2倍以上(比率2.3、95%、[CI] 1.3〜4.1)
・総運動量2倍以上(比率2.1、95%、[CI] 1.2〜3.6)
・精子の形状に歳はない(比率1.1、95%[CI] 0.8〜1.4)

彼らの父親と子孫の精子数を比較すると、総精子数が3900万未満の父親は、精子数が3900万を超える息子を持つ可能性が高いです。

世界保健機関(WHO)の基準によると、1500万/ ml未満の低精子の濃度は、ICSIで生まれた男性の42.6%に見られました。ちなみに、自然妊娠で生まれた男性が低精子濃度である割合は21.1%でした。

3900万以下であれば、全精子数が少ないと考えられています。これは、ICSIで生まれた男性の53.8%、自然妊娠で生まれた男性の22.8%で見られました。

研究者はどのように結果を解釈したのか?

研究者らは次のように結論づけています。
「ICSI男性の小グループで行った最初結果は、彼らの父親の不妊治療としてICSIの後に生まれた若者の精液量と質が低いことを示している」

結論

この小規模の横断研究は、ICSIで生まれた若い男性の精液の質を評価することを目的としていました。

この研究では、自然妊娠で生まれた男性と比較して、ICSIで生まれた男性は、平均精子濃度、全精子数および全運動精子数が低いことが分かりました。この結果は、チームが潜在的交絡因子を調整した後も残っていました。この発見は、父親の不妊症が男性の子孫に伝染する可能性があるとの懸念を支持するものではありますが、それを証明するものではありません。また、この研究はICSIのプロセス自体、あるいは無関係の要因の結果で異なる可能性を含める、あるいは除外していません。

この研究には、以下のような言及すべき制約があります。

・これらの知見は、非常に少数の研究集団に基づいており、同じ効果は、より大きな研究では見られなかったかもしれない
・ICSIで生まれた男性のうち、調査に参加するよう呼びかけられたのは37.5%しかいなかった。研究者は、断った人の内訳を提供しているが、若い男性に不妊問題がなく、このことが結果を大きく変える可能性があるため、45人の男性と21家族の参加を拒否した可能性がある
・分析の中で、いくつかの交絡因子が検討されている。しかし、モデルに残っている交絡因子の可能性がまだ残っているか、重要な要素がまだ対処されていない可能性がある
・サンプルはたった1回しか提供されていないので、正確ではない可能性がある

この研究から確固たる結論を導くには、あまりにも多くの制約があります。

精子の質を改善するためにできることは、タバコをやめ、過度のアルコール摂取を避け、きつい下着をやめて睾丸が体温より低くなることを防ぐことなどがあります。

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