閉経時の抗うつ剤の使用と骨折の関連

その他

SSRIsについて

多くの人がプロザックをSSRIs(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)に関連付けますが、他のブランドもより幅広く使われています。SSRIsは時にほてりの症状を抑えるために使われます。
「プロザックのような抗うつ剤を閉経時の気分の変化を抑えるために飲むと、骨折のリスクを高めてしまう」とthe Daily Mailが発表しました。新しい研究によると、選択的セロトニン再取り込み阻害薬を閉経時にのむことで骨折リスクが76%ほど高まりました。
大変なことのように聞こえますが、骨折のベースラインでのリスクは比較的小さいので76%は統計的には大きなことであっても、小さなリスクの増加を意味します。
この研究はSSRIsを服用している女性と普通の胃潰瘍薬を服用する女性の骨折リスクについてみています。
SSRIsはもともと鬱や不安などの症状のために使われていましたが、閉経時のほてりなどにも使われるようになりました。この薬はイギリスでは認可されていませんが、ホルモン補充療法(HRT)を使いたくない女性に医者の裁量で処方することができます。
研究者によると、使用の二年目以降にリスクの違いが統計で顕著になったということです。SSRIsが骨のミネラル密度に致命的な影響を及ぼすには数ヶ月かかるということです。
重要なことですが、この研究結果はSSRIsを精神的な理由で服用する女性には直接当てはまらないということです。なので薬の使用が閉経している女性への骨折のリスクを少し高めてしまうかもしれませんが、処方された理由により薬を服用するメリットで均衡が保たれているのです。

閉経と骨の健康

女性の骨密度が35歳くらいから徐々におちていくのは自然なことです。しかしSSRIsの服用によってそのスピードが加速されてしまうのです。
女性は閉経の5-7年後で20%もの骨密度を失ってしまうことがあります。閉経後の女性のほうが骨粗鬆症や骨折のリスクが高いということです。
リスクを避けるためにできることは:
健康的な食事をする
活動的でいる
喫煙している場合は禁煙する
アルコールは適量を守る
適度に日光を浴びるー日光を遮らずに10分間外で日光を浴びるのを1,2回ほど。太陽のでた夏の日はビタミンDレベルを健康的に維持できます。

この研究はハーバード大学、ノーズカリフォルニア大学、ノーズイースタン大学の研究者によって行われ、US National Institute of Mental Health and the National Institute on Aging at the National Institutes of Healthによって資金提供されました。またこの研究はピアレビューのメディカル雑誌InjuryPreventionに掲載されました。一般的にこの話は正確だが、見出しがいくつかの理由により正しくないといわれています。見出しにあるプロザックの使用は間違いなのです(理解できるとしたら、それが多くの人が聞いたことのあるSSRIであるということです)。他のSSRIパロキセチンが通常はほてりに対する第一の選択肢です(またアメリカではこの使用が認可されています)。
また見出しではSSRIsが気分の変化を抑えるために使われていましたが、これも間違いです。この記事ではSSRIsを精神的理由により使用している女性について触れていません。

この研究では閉経時の症状を抑えるためにSSRIsを服用する女性の団体を分析したアメリカのメディカルデータベースからのデータを利用しています。薬によって骨が弱くなって、骨折に繋がらないか見るためです。
イギリスではSSRIsはうつや様々な他の精神問題の治療に処方されています。しかし特定の場合において、閉経時の症状をおさえるためにオフライセンスで使う場合もあります。
アメリカでは、SSRI薬(パロキセチン)は閉経に関するほてりや夜の発汗の治療に処方することが認可されています。閉経に関するホルモンの変化により女性の骨は薄くなっていき、骨折のリスクを高めます。それゆえ研究者はSSRI薬がそれを悪化させないかどうか調べたかったのです。
研究者は問題の調査のために既存の処方のデータセットを使用し、これは巨大なコホート学のようでした。しかしながら、研究チームの使用できるデータベース上の情報には制限があったので、望んでいた全ての情報を集めることはできませんでした。精神病などを患っていない40-64歳のSSRI薬を服用し始めた女性と、胃潰瘍および胃炎を治療するために薬(H2アンタゴニストまたはプロトンポンプ阻害剤、H2As / PPI)を服用し始めた女性の一団を1998-2010年にかけて比較し、アメリカの処方データベースを使用して、各グループの骨折のレートの差異を調べました。
調査によると、H2As薬を服用していたグループは骨折のリスクの増加などは見られませんでした。しかしPPIsを服用していたグループにはわずかに骨折リスクの増加がみられました。
研究では”PharMetrics Claimsデータベース”を使用しました。そこには6100万人以上の患者それぞれ独自の医療及び医薬品に対する請求が含まれています。米国では医療費や薬物費は各人の健康保険を通して請求されます。これにより処方される薬の量と期間についての情報がわかります。年齢、性別、どこに住んでいるかも診断された病状と同様知ることができました。SSRIまたはH2A / PPIを開始した少なくとも1日後の股関節または腕骨(上腕骨、橈骨または尺骨)の骨折が分析されました。
精神病を患っている女性は除きます。
SSRIまたはH2A / PPIの開始は、過去12ヶ月間に種類は問わない抗うつ薬または抗潰瘍薬の処方箋を記入したという証拠なしに処方箋を記入することとして定義されました。
これは米国の健康保険を基本としたデータベースなので、全ての保険制度を含むわけではなく、また医療保険なしのものは決して含みません。
分析によって多くの混乱要因が調整されました。最も重要なものの一つは:
年齢
過去の骨折の経歴
骨粗鬆症
過去の骨密度スキャン
骨折のリスクを増加する作用のある薬の使用
です。
グループは多くの異なる特徴および潜在的な混乱要因によって測量されました。
比較グループを保証する統計テクニックは比較前に合理的に調整されました。

SSRIを開始した137,031人の女性の方が、H2A / PPIを開始した236,294人に比べて骨折率が高くなりました。
SSRIの骨折のリスクをH2A / PPIと比較して異なる時点で比較したハザード比は、1年で1.76(95%信頼区間(CI)1.33〜2.32)、
2年間で1.73(95%CI 1.33〜2.24)
5年間で1.67(95%CI 1.30〜2.14)
研究チームはSSRIと骨密度に臨床的に意味のある影響を及ぼす事実の間に遅延があるかもしれないと考えました。このようにメインとなる分析で6ヶ月の遅延期間を考慮しました。

研究者は以下のように結論を出しました:「SSRIは精神病を患っていない中年女性の骨折リスクを増加させ、それは時期を経て続き、薬の服用期間を短くすることでリスクが軽減される。今後の取り組みは、この関連が少量でも作用するのかどうか」ということでした。
この研究では、精神障害のない40-64歳の女性でSSRI薬を服用し始めた女性は、胃潰瘍や刺激(H2AまたはPPI)のために処方された他の薬剤を服用している女性と比較して、開始後5年までに骨折リスクが高いとわかりました。
リスクの差異は統計的に二年目以降に顕著であり、SSRIsが骨密度に深刻な影響を及ぼすまでには数ヶ月かかるというものでした。
重要、かつ研究の権威によって認められていることですが、この研究によって因果関係を証明することはできません。薬と骨折リスクの関連性を媒介する他の混乱因子が存在しうるのです。なぜ特定の女性が安全にホルモン補充療法を利用できないのか多くの理由があり、それらが骨折のリスクに繋がる場合もあるでしょう。
他の制限としては、グループ内には多くの非精神的健康関連の理由でSSRIを処方された女性が含まれていたという事実です。なので異なる病気カテゴリーにわたるリスクプロファイルが様々で、それらをグループ化することでより詳細な結果が隠されてしまう可能性があります。研究チームは、SSRIの異なる用量と骨折のリスクとの関係を分析することができませんでした。したがって、骨折リスクが明らかに増加し始める線量閾値があるかどうかはわかりません。
プロトンポンプ阻害剤は、特に高齢者が高用量で1年以上使用した場合、骨折のリスクを高める可能性があります。 SSRIがこのグループと比較してリスクをさらに増加させたという事実は、SSRIに関連するリスクは他の薬と比べてわずかに高い可能性があることを示唆している。しかし、短期間(6ヶ月未満)のSSRIの服用は、骨折リスクと関連しない可能性があります。
重要なことに、SSRIは現在、英国の更年期関連症状の治療のために認可されていませんが、時にはオフライセンスで処方されています。したがってそれらの使用は、主にうつ病および他の精神的健康状態の治療です。この研究は、精神病を患っている女性は分析から外されているので、それらの女性のSSRIs使用に関する骨折リスクについては示されていません。
それゆえSSRIsを精神病のために服用し、それが骨折リスクのわずかな増加に繋がるとしても、もともとSSRIsを処方された原因に対する利益によって相殺されるべきです。このリスクとメリットのバランスは医者や医療専門家と相談するべきです。処方された薬はきちんと服用し、治療オプションを医者との相談なしに変えることはしないでください。

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