早産について知っておきたいことについて

早産について
多くの場合妊娠期間は約40週間ですが、時には早く終了します。ここでは、早産の原因から予防、もし早産になったらどうするかをご紹介します。
ほとんどの妊娠(約89%)は予定通りの期間続きます。少なくとも妊娠第37週まで続きます(とはいえ妊娠第37週で生まれると「後期早産」と呼ばれます。正期産は妊娠第39~40週で生まれるものです)。しかし、時には赤ちゃんが予期せず早く生まれることがあります。妊娠第20週~37週に生まれると早産と呼ばれます(第20週より前に生まれると流産とされます)。最新の研究によると、早産件数は減っていますが、約11%の妊婦が早産をして妊娠期間が9ヶ月ではなく7~8ヶ月になっています。ここでは、早産が起こる理由と、予防するためにできることをご紹介します。
早産の原因
早産の原因が何かははっきりとは分かっていませんが、乳児の出る準備が整う前に、子宮が収縮して子宮口が広がる要因を専門家はいくつか指摘しています。
喫煙、アルコールおよび薬物の使用
これらは流産の危険を高めるだけでなく、早産や赤ちゃんの低体重の危険も増加させます(毒素が胎盤を通過して、赤ちゃんが成長に必要な酸素を取り込むのを妨げることがあります)。やめる理由があるとしたら、それは妊娠です。
短い間隔での妊娠
最後の子供を産んでから18カ月未満にまた妊娠すると、早産のリスクが高くなります。間隔が開いたほうが早産の危険は減ります。最近の大規模な研究では、妊娠の間隔が1年未満だった女性の20%が妊娠第37週より前に出産することが分かりました。1年から18ヵ月間開けた女性では10%に低下し、18ヵ月以上開けた女性では8%未満でした。
子宮や膣の感染症
感染症(細菌性膣炎や、トリコモナス症のような性感染症など、子宮や羊水に影響を及ぼす感染症)は、すべての早産の原因のほぼ半数を占めると考えられています。専門家は、感染症が炎症を引き起こし、その炎症がプロスタグランジンの放出につながると考えています。プロスタグランジンとは、正期産のときに分娩を起こす物質と同じものです。尿路感染症も未治療だと同じような作用をする可能性があります。
妊娠合併症
合併症(妊娠糖尿病、子癇前症、羊水過多など)や胎盤の病気(前置胎盤や胎盤剥離など)があると、早産の危険が高まります。
子宮や子宮頸部の構造異常
奇形である、大きすぎる、構造異常があるといった子宮は、予定日まで妊娠を継続させるのが難しくなります。子宮頸部も、短い、機能しない(妊娠中に子宮口がきちんと閉まらないなど)といった問題があると早産につながります。
歯周病
妊娠ホルモンは妊婦に歯周病になりやすくさせ、早産につながります。歯周病を引き起こす細菌は妊婦の血管に入り、胎児に到達して早産になると考える専門家もいます。歯周病を引き起こす細菌は、子宮頸部と子宮にも炎症を引き起こし、早産につながると主張する研究もあります。
ストレス
研究者たちは、激しい感情的ストレス(ホルモンが引き起こすストレスや運の悪い日に感じるストレスではなく、トラウマに関連して引き起こされるストレス)が陣痛を起こすホルモンを放出させる可能性があると分析しています。
仕事の内容
仕事での極度の身体的ストレスも早産に関連しています。研究者は、長期間(1日5時間以上)立っている女性や、非常に体を使う仕事をしている女性が早産になる可能性が高いことを発見しました。
多胎妊娠
多胎妊娠だと一人だけよりも早産の可能性が高くなります(不妊治療では多胎妊娠する可能性が高いことに注意してください)。
妊婦の年齢
17歳未満あるいは35歳以上の女性は、そうでない女性より早産する可能性が高いです。医者が(たとえ健康でも)高齢の女性の妊娠はハイリスクだと考えている理由の1つです。
早産したことがある
以前に早産したことがある場合、その後も早産の危険が高くなります。
自分自身早産で生まれた
2015年の大規模な調査によると、早産で生まれた女性は早産する危険性が高いことが判明しました(ただし、自分が生まれた時期に絡む早産は14.2%以下なので、そんなに確率は高くありません)。
しかし、これらのリスク要因のうち1つ持っていたからといって、必ずしも早産になるというわけではないことが重要です。同様に、リスク要因が1つもなければ早産しないというわけではありません(他の理由で―あるいは全く知られていない理由で早産する可能性があります)。
早産を防ぐ方法
医学の進歩により小さな未熟児も治療できるようになりましたが、効果的な早産治療法を開発できるほど十分には早産はまだ解明されていないため、早産を予防するための医療介入は大部分がとらえどころがないです。しかし、早産を防ぐためにできることは何もないというわけではありません。早産の危険がない妊婦でも(特に危険のある妊婦は)、赤ちゃんが満を持して健康に生まれる態勢が整うまで妊娠を継続させるためにできることがたくさんあります。
妊娠の間隔を18ヶ月開ける
最後に出産してからもう1人妊娠するまで、少なくとも1年間、そしてできれば18ヶ月間隔を開ければ、早産の危険は大幅に低下します。
医者の診察を受ける
早期に、かつ定期的に出生前ケアを受けることで、医者は早期陣痛のリスク要因を特定し、可能な限り健康に良い妊娠をすることができます。
コントロールできることはする
喫煙、飲酒、処方薬ではない薬を飲む、糖尿病が未治療だといったことがあると、すべて早産につながります。当てはまるものは取り除きましょう。
体重に気をつける
妊娠中に体重が多くなり過ぎると、妊娠糖尿病や子癇前症が発症する可能性が高くなり、両方とも早産の危険を高めます。かといってあまりにも体重が増えないのも危険です。適切な増量(ほとんどの場合10〜16キロ)を目指せば予定日まで妊娠を続けられる可能性が高くなります。
妊婦用サプリメントを摂る
妊婦用サプリメントを毎日摂れば、全体的な健康状態が良くなり正期産ができる確率が高くなります。実際に研究によると、葉酸(赤ちゃんにとって大切です)が胎盤剥離と子癇前症のリスクを低下させる可能性があります。
よく食べる
健康的でバランスのとれた妊婦向けの食事から体に必要な栄養素をすべて得れば、健康な赤ちゃんが生まれるだけでなく、適切な時期に生まれる可能性が高くなります。特定のオメガ3脂肪酸(サケやクルミなどに見られます)を適切に摂取すると、早産の危険を減らすことが示されています(また、赤ちゃんの脳の発達が促進されます)。他の研究では、ビタミンC(柑橘類、果実、ピーマンに見られます)とカルシウム(牛乳や乳製品、カルシウム強化ジュースなど)も早産を予防するのに役立つことが示されています。
頻繁に食べる
研究によると、正しい栄養素を赤ちゃんにあげるだけでは不十分であることが示唆されています。できるだけこまめに栄養を補給する必要があります。 1日に少なくとも5回(3回の食事と2回の軽食、または5回の少なめの食事)を食べる妊婦は、早産する可能性は低いです。
水を十分に飲む
十分に水を飲めば(運動している時や非常に暑い時)、水分が維持されます。脱水症状は早産につながる可能性があるため、脱水症状を避ければ赤ちゃんが予定日まで出てこなくなる確率が高くなります。
歯に優しくなりましょう
歯周病が早産を引き起こすこともあるので、予防歯科は、早産を予防するための最初の(そして一番で最も簡単な)ステップの1つです。だから、定期的なケアという意味だけでなく、問題が大きくなる前に対処するという意味で、歯磨きもフロスもして、妊娠中一度は歯医者に行きましょう。
トイレには行きたいときに行きましょう
尿を我慢するのは不快だということの他に、膀胱に炎症が起こることがあります。この炎症が子宮を刺激し、陣痛を引き起こす可能性があります。行きたいときに行かないと尿路感染症になる可能性もありますが、それも早産につながります。だから、行きたいときに行く習慣をつけてください。
感染症は治す
細菌性膣炎があって早産になる危険が高い場合は、経口抗生物質を服用してよいか医者に相談してください。いくつかの研究では、細菌性膣炎でも抗生物質で治療すれば、早産の危険が低くなることが示されています。ただし他の研究では、感染症(細菌性膣炎と性感染症の両方)が治療されても、早産発生率は低下しないと主張し、調査結果に異議を唱えています。医者が相談に乗ってくれるでしょう。
オプションを探す
今まで早産したことがある場合、最近の研究では、プロゲステロン(16〜36週に注射やゲルで投与される)が、早産歴のある女性のリスクを低下させることが判明しました。自分に効果があるか医者に聞いてみてください。
早産の危険性を知るための検査
以下に挙げる2つの検査は、どの程度早産の危険があるかを予測するのに役立ちます。しかし、結果が陽性なら絶対に早産や後期早産になるというわけではないので、どちらもリスクの高い女性にのみ推奨されています(結果が陰性なら不必要な対策をしなくて済みますし、余計な心配も要らなくなるわけですが)。
胎児性フィブロネクチン検査(fFN)
羊水中のタンパク質を検出する検査です。妊娠第20週より前には通常子宮頸部や膣の分泌物に見られますが、妊娠第20週を過ぎてから一定レベル以上あると胎盤が炎症を起こして損傷を受けている場合があり、早産する可能性が示唆されます。いくつかの研究によると、この検査は早産する女性を予測するのに優れています。したがって、fFN検査を受けて結果が陰性だった場合、数週間以内に早産することはないでしょう。陽性であれば、医者は早産を予防し、必要に応じて早産で生まれる赤ちゃんのための人工呼吸器を準備します。
子宮頸管長測定
医者が超音波で子宮頸管の長さを測定する検査です。子宮頸管が短くなったり開いたりするような兆候がある場合、ベッドで安静にする、子宮頚管縫縮術と呼ばれる子宮頚管を閉じる手術を受けるなど早産を防ぐための措置を講じることがあります。しかし、子宮頚管縫縮術はかつて信じられていた早産の予防に効果的ではないという研究結果もあるので、手術を受ける前に医者に相談してください。
早産に気づく方法
早産の兆候がある女性の80%は早産しませんし、結果的にこの知識を使う必要もないかもしれません。しかし、頭の片隅においておくのは良いことです。早産の兆候に早く気づければ、その分早く治療を受けられます。以下に挙げる出産の兆候に気づいたら、すぐに医者に電話してください。
とはいえ、以下の兆候の一部または全部になっても、出産するとは限らないことを覚えておいてください(ほとんどの妊婦は骨盤の痛みや圧迫、腰痛をどこかの段階で経験しています)。しかし、きちんと分かるのは医者だけなので、電話してください。申し訳ないと思って何も確かめないよりも安全です。
本陣痛
10分ごと(またはそれ以上)に来て、体勢を変えても和らがない痛みです(横向きに寝てみてください)。おそらくもう経験してきた前駆陣痛と混同することはないでしょう(前駆陣痛とは、不規則で強くなっていかない、体勢を変えれば治まる痛みで、陣痛の練習として起こるものであり心配する必要はありません)。わからない場合はとにかく医者に電話してください。
膣分泌物の変化
分泌物に血が混ざってないか(「おしるし」)、または膣から出血していないか確認します。
膣から液体が出る
破水のサインかもしれません。嗅いでみて、アンモニアのようなにおいがしたら尿です。そうでなければ、羊水である可能性があります。
生理痛のような痛み
下腹部や背中下部の強い痛みは、出産の兆候である可能性があります。
背中の痛み
背中下部の鈍痛が続く場合は、出産の兆候かもしれません。
骨盤圧の増加
骨盤のあたりの圧迫が強くなったと感じたら、医者に電話してください。
早産になったら
早産の兆候が現れたら、医者の診察を受けましょう。病院ではまず胎児モニターで陣痛をチェックし、赤ちゃんに病気がないことを確認します。子宮口を検査し、腫れ始めたり子宮口が目立たなくなり始めたか判断し、感染症や胎児性フィブロネクチンを検査するために膣を綿棒を使って検査します。また、羊水量を計り、赤ちゃんのサイズと妊娠期間を確認するために超音波検査を受けることもあります。これらの検査の結果早産にはならないことが分かった場合は、安静にするよう指示を受けて家に帰ることがあります。
早産の危険があると判断された場合、赤ちゃんが子宮内に残る期間が長いほうが、生存率が高まり健康に生まれてくるため、医師の主な目標は可能な限り出産を止めることになります。寝たきりにさせられるかもしれません。妊娠期間や他の合併症によっては、病院に入院することがあります。病院では、以下のいずれかまたはすべてを受けるかもしれません。
静脈内輸液
水分をきちんと摂取すれば、陣痛になる可能性は低くなります。
抗生物質
特に、感染症が早産を引き起こしていると思われる場合は、抗生物質を受けることがあります。また、まだB群連鎖球菌の検査を受けていない場合(検査は通常妊娠第35週後に行われます)、あなたが細菌保有者である場合に赤ちゃんへの細菌の伝播を防ぐためにIV抗生物質を受けます。
子宮収縮抑制薬
医者が子宮を弛緩させる薬(硫酸マグネシウムなど)を与え、理論的には一時的に収縮を止めることがあります。通常、妊娠34週未満の場合、および乳児の肺が未成熟であるとみなされた場合にのみ投与されます。
副腎皮質ステロイド
赤ちゃんの肺がまだ未熟である場合、胎児の肺の成熟を速めるためにこの薬を服用します。医師は、早産すると予想される妊娠24〜34週の女性にコルチコステロイドを投与するべきだと長い間アドバイスしてきました。2016年には、早産のリスクがある女性にも、妊娠前期のみならず妊娠第34〜37週にもコルチコステロイドを投与するべきだという新しい勧告を発表しました。勧告では、早産になる可能性が高い女性に対し、妊娠第23週後に副腎皮質ステロイド治療を始めることを検討するよう求めています。この薬は、服用後2~7日後には胎児の肺の成長を速め始め、赤ちゃんが子宮の外でも正常に発達する可能性を高めます。
妊婦や赤ちゃんへのリスクが早産のリスクを上回っていると判断した場合は、医者は必ずしも早産を回避しようとはしません。約30%の妊婦の場合早産は自然に治まり、早産の兆候が現れてから7日以内に出産する女性は約10%のみです。
妊娠中の赤ちゃんの健康
妊娠第34週前に生まれた赤ちゃんは、ほとんどの場合、生まれてから最初の数日や数週間、または場合によっては数ヶ月間は、新生児集中治療室(NICU)に入院する必要があります。
妊娠34〜37週の間に生まれた他の健康問題のない乳児は、一般的には上手く成長し、NICUにも少し滞在するだけで済むでしょう。
未熟児として生まれると、脳性麻痺、成長の遅さ、学習困難、発達遅延につながりますが、現代の医学のおかげで正常な健康な赤ちゃんを家族に迎える可能性は非常に高くなっています。