能動喫煙も受動喫煙も閉経を早める

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これはどんな研究でしたか?

「喫煙の量や頻度が多い女性は、比較的早く(50歳以前に)閉経する可能性が高い」とBBC Newsが報じています。この報道で取り上げられたのと同じ研究では、受動喫煙に曝された女性についても閉経について弱い関連が見られることを発見しています。
研究者は、米国の主要な研究からピックアップした93,000人以上の女性の情報を調べました。そして、喫煙した女性は妊娠するのに難航する可能性が高く、喫煙しない女性より平均して1〜2年早く閉経を迎えたことを発見しました。ほてりといった早期閉経の症状のほかに強く心配されるのは、不妊症です。重度の受動喫煙に子どもまたは大人として曝された女性は、喫煙しない女性よりも妊娠に難航し、約1年早く閉経しました。
タバコの毒素は生殖器官やホルモンレベルに影響を及ぼすため、今までも喫煙は不妊や早期閉経と関連付けられていました。
この新しい研究はタバコの煙が実際にこれらの問題を引き起こしたことを証明することはできませんが、タバコの煙(能動喫煙と受動喫煙のどちらでも)が女性の妊娠率に影響を与えることは確かです。他にも知られている健康上のさまざまな悪影響と並ぶものです。タバコをやめるべき理由がもう一つできました。

この論文は誰が執筆しましたか?

この研究は、Roswell Park Cancer Institute、School of Public Health and Health Profession、University of Pittsburgh、Harvard Medical School、University of New Yorkの研究者によって行われ、US NAtional Institutes of Healthの資金提供を受けて行われました。査読された上でTobacco Controlに掲載されており、無料でオンラインで読むことができます。
一部のメディア報道は喫煙と早期閉経に焦点を当てていますが、このことは新しい発見ではありません。Daily Mailは受動喫煙との関連に焦点を当てましたが、見出しに使われた数字(不妊症のリスクが20%上昇し、閉経が2年早くなる)は誇張されていました。見出しの下の本文は研究結果に即して書かれており、重度の受動喫煙は不妊症のリスクを18%あげて閉経を平均13ヶ月早めると記載していました。
たとえそれが正当な理由であっても不正確な情報でぎょっとさせると、信頼を失いかねず逆効果になる可能性があります。

これはどんな研究でしたか?

この横断観察研究では、閉経後の女性に生活に関する詳細な質問をしました。研究者は、喫煙者であることやタバコの煙に曝されることがどのように閉経期および妊娠率に影響を与えるのかを知ろうとしました。
このタイプの研究は、回答者が生活のある時点について正確に記憶して回答することに依存します。習慣が時間とともにどのように変化するかについての情報は確実には把握できません。
つまり、フラミンガム心臓研究のように何十年にもわたって追跡調査する研究は、画期的ながらも実行するのに費用がかかる可能性があるため、この研究構想は合理的です。

回答者はどのような人でしたか?

研究者は、閉経後の女性に、能動喫煙と受動喫煙との間の関連性や、不妊症や早期閉経の割合を調べるために、アンケート調査を行いました。
他の因子(交絡因子)を調整した後、喫煙が不妊や50歳までに閉経するリスクに関連しているかどうかを計算しました。
この調査は、1993年から1998年の間に50歳から79歳までの93,676人の女性が回答したアンケートに基づいています。
回答者には、妊娠しようとした後1年またはそれ以上妊娠できなかったか(原因が男性不妊ではない場合)、閉経したのは何歳のときかを尋ねました。
また、喫煙者(今まで100本以上タバコを吸ったことがある人、と定義)かどうかと、自宅や職場で受動喫煙していたかどうかについても質問しました。
アンケートでは、低体重や非常に強度の強い運動、化学物質に曝されていたか、飲酒など妊娠可能性に影響する要因に関することに加え、喫煙量や喫煙開始年齢も尋ねました。
研究者は結果に影響を与える他の要因を考慮して数値を調整しました。そして、喫煙したことがなく、自宅や職場で受動喫煙したことがない女性のデータを比較対象のためのグループとして使い、早期閉経(50歳以前の閉経)や不妊症の全体的なリスクを計算しました。
そして、重度の受動喫煙や能動喫煙がリスクに影響を与えるかどうかを研究しました。また、これらのグループの女性の閉経の平均年齢を計算しました。

主な研究結果はどのようなものでしたか?

喫煙していた女性は不妊(オッズ比1.14,95%信頼区間[CI] 1.03〜1.26)や50歳以前に閉経する(OR 1.26,95%CI 1.16〜 1.35)傾向が強く出ました。
喫煙したことがなく、受動喫煙していた女性の結果はより複雑でした。このグループ全体を見ると、結果としては早期閉経や不妊のリスク増加は見られませんでした。しかし、重度の受動喫煙に曝された女性は不妊症リスクが高くなりました(OR 1.18,95%CI 1.02〜1.35)。
重度の受動喫煙とは、子どものころに家庭で10年以上受動喫煙したこと、さらに大人になってから家庭で20年以上受動喫煙したこと、さらに職場で10年以上受動喫煙したことを意味します。しかし分煙への意識が高まり、このような環境は現在、先進国では過去のものになりつつあります。
重度の受動喫煙をしていた女性は50歳より前に閉経する確率が上昇しました(OR 1.17,95%CI 1.05〜1.30)。喫煙したことがなく、受動喫煙もしていない女性の閉経の平均年齢は49.4歳でした。喫煙した女性は48.3歳で、喫煙していないものの受動喫煙に曝されていた女性は48.8歳でした。

研究者はどのように結果を解釈しましたか?

研究者らは、研究結果は喫煙者を対象とした先行研究の結果を確認し、受動喫煙に曝された女性が不妊症および早期閉経リスクが高いという以前の知見を裏付けているとしています。
研究者は、この研究は「全ての女性が能動喫煙と受動喫煙から保護される必要があるということの根拠を現行のものに加えて強化する」としています。

結論

喫煙が健康に悪いことの証明はもうこれ以上必要ありませんが、早期閉経や不妊の危険性を若干高める可能性があるということは女性には重要かもしれません。より驚くべきことに、重度の受動喫煙にも同様の影響があります。
これは、喫煙と妊娠に関する詳細な情報を多く使った大きな研究です。しかしいくつかの重要な限界があります。1990年代中ごろの女性の研究から得られたかなり古いデータを使っているということです。
この20年で、能動喫煙だけでなく受動喫煙の習慣も大きく変化しています。例えば、この研究でアンケートに答えた女性は、家庭での喫煙が現在よりも一般的であった40年代や50年代に子どもだったでしょう。同様の研究をしても異なる結果になる可能性があります。
また、研究結果は、50歳から79歳の女性が小児期や青年期に起こったことを正確に記憶しているかどうかにも依存しています。
そして、この研究は横断的なものであったため、時間とともに女性の行動がどのように変化したかはわかりません。例えば、女性は子どもを産んだ後に喫煙を始めた可能性があります。つまり、喫煙が妊娠に影響を与えてはいないかもしれません。
観察研究では、ある要因が別の要因を引き起こすことを証明することはできないため、能動喫煙や受動喫煙が早期閉経または不妊の直接的な原因であることはわかりません。
研究者は様々な社会経済的、健康的、生活習慣要因を考慮しようと試みたものの、喫煙に関連する他の要因が影響を及ぼしたかもしれません。
また、この研究は、タバコの毒素が生殖ホルモンに影響を与えるかどうかなど、関連性の背後にある生物学的メカニズムは説明していません。
この研究には上記のような限界はあるものの、タバコの煙には危険な毒素が含まれていること、それが女性の妊娠に影響を与えるなど、健康にさまざまな悪影響を及ぼすことはわかっています。
この研究はまた、受動喫煙が小児および成人の両方の健康に有害であり得る新たな根拠になりえます。

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