一握りのナッツは「心疾患」と「がん」のリスクを下げる

その他

ナッツの恩恵

「毎日少なくとも20グラムのナッツを消費する人々は、心疾患やがんなどの致死病になる可能性が低い」とIndependentが報道しました。これは、ナッツの恩恵に関する20の先行研究を再調査して見つかった主な知見です。
研究者は、一日に28グラムのナッツ、つまり一握りほどのナッツ(ほとんどのナッツなら)が、心疾患、がん、さまざまな理由による死亡のリスクを約20%低下させたという根拠を見つけました。
しかし、ダイエットや健康に関する研究でよくあるように、ナッツがこのような効果の唯一の原因であることを証明することはできません。ナッツが、バランスの取れた食事や定期的な運動など、より健康的な生活習慣の単なる一要素に過ぎない可能性を割り引くのは難しいです。リスクを減らしているのは、ナッツだけでなく生活習慣全体かもしれません。研究者はこのようなさまざまな要因も計算に入れようとしましたが、計算に入れようとしても、経験に基づく推測になるでしょう。
また、生活習慣に関わらない多くの要因が疾患のリスクに関与する可能性があります。例えば、親戚に心疾患の病歴がある人がいる男性の場合、ナッツなどの健康的な食事が助けにはなるものの、それでもリスクを完全に排除することはできません。
それでも、ナッツと健康改善のつながりは妥当です。 2015年の類似研究の議論で指摘したように、「ナッツは健康な不飽和脂肪、たんぱく質、さまざまなビタミンとミネラルが豊富です…無塩ナッツが最も健康的です」

この論文は誰が執筆しましたか?

ノルウェー科学技術大学、トロンデハイム、ノルウェー、インペリアル・カレッジ・ロンドン、米国の他の機関の研究者によって行われました。Olav og Gerd Meidel Raagholt’s Stiftelse for Medisinsk forskning(ノルウェーの慈善財団)、ノルウェー地方保健局とノルウェー科学技術大学間の連絡会、Imperial College National Institute of Health Research Biomedical Research Centreからの資金提供を受けました。査読の上で医学雑誌BMC Medicineにオープンアクセスベースで公開されたので、無料でオンラインで読むことができます。
英国のメディアは研究結果を確実な情報源から報道していましたが、この研究で採用された観察研究という手法固有の潜在的な限界を議論することはありませんでした。

これはどんな種類の研究でしたか?

これは、ナッツの摂取と循環器系疾患、癌および死亡のリスクとの間の関係を調べることを目的とした系統的レビューでした。
先行研究では、ナッツの摂取は健康に良いことが示唆されており、循環器系疾患やがんのリスクの低下とつながりがある可能性があることがわかっています。ただし、他の研究ではつながりが見つかっていません。つながりが弱い可能性を考え、今回研究者はそれを調べることを目的としています。
系統的レビューは、トピックに関する今日までの利用可能なすべての文献を編集するのに一番の方法です。しかし、系統的レビューの信頼性はもとにする先行研究と同程度です。食事内容の要因を調べる研究は観察研究であることが多く、結果に影響を及ぼす健康や生活習慣などほかの要因を排除することは困難です。

具体的にはどんな研究ををしましたか?

研究者らは、成人のナッツ摂取量が循環器系疾患、癌、さまざまな要因による死とどのように関連しているかを調べたランダム化比較試験(RCT)またはプロスペクティブコホート研究がないかを探すために2つの文献データベースを検索しました。
研究はナッツ摂取量に関する情報を具体的に(理想的には量と頻度で)報告しているものでなければなりませんでした。研究者は研究の質を包括的に判定しました。20件のプロスペクティブコホート研究が基準を満たしました。9件は米国、6件はアジア、4件はオーストラリアの研究であった。すべての研究に成人集団が含まれていた。被験者は5件は女性のみ、3件は男性のみ、そしてほかの12人は男女混合でした。
分析に含められるような適切なRCTは見つけられませんでした。これは特に重大な問題ではありません。なぜなら、食事内容の操作を含むRCTは難しさで名高いからです。「ナッツを食べない」グループに無作為に選ばれた人が全員きちんとナッツを食べないでいるのか、またはその逆はどうなのかを確実にすることは不可能です。また、病気の結果を把握するためには、サンプルを多くして追跡調査時間を長くする必要があるため、通常は実行不可能です。

研究で何が分かりましたか?

循環器系疾患

12の研究(成人被験者総数376,228人)で、ナッツの摂取が循環器系疾患のリスクが低下することがわかりました。1日あたり28グラム食べると、循環器系疾患のリスクが21%減少しました(相対リスク[RR] 0.79,95%信頼区間[CI] 0.70〜0.88)。
これはナッツの種類を限っていませんでしたが、ピーナッツや木の実を個々に分析した場合にもリスクの低下がみられました。摂取量を増やすとそれに伴いリスクは下がりましたが、1日15グラム以上になるとそれ以上にはリスクは減りませんでした。
具体的な結果を見ると、12件の研究では、心疾患のリスクが29%減ることが明らかになっています(RR 0.71,95%CI 0.63〜0.80)。しかし11件の研究では、脳卒中の結果との有意な関連は見つかりませんでした(RR 0.93,95%CI 0.83〜1.05)。

9件のコホート研究(成人被験者総数304,285人)は、1日1回ナッツを食べると癌のリスクが15%低下することが分かりました(RR 0.85,95%CI 0.76-0.94)。ピーナッツ(7%)よりも木の実(20%)の方がわずかながらもリスクがより低下するという分析結果もありました。

さまざまな要因による死

15件のコホート(被験者総数819,448人)が85,870人の死亡を記録していました。 1日1回ナッツを食べると、研究実施中に死亡するリスクが22%少なくなっていました(RR 0.78,95%CI 0.72〜0.84)。
特定の死亡原因をみると、毎日ナッツを食べると、肺臓死(0.48(0.26-0.89); 3件)と糖尿病死(RR 0.61,0.43〜0.88 ; 4件)のリスクが低下することとつながりが見つかりました。神経変性疾患による死亡とはつながりがなかったものの、ナッツと腎疾患や感染症による死亡とは矛盾は見られませんでした。その他の疾患関連の死因は報告されていません。
全体的には、2013年のアメリカ、ヨーロッパ、東南アジア、西太平洋での440万人の寿命以前の死亡は、ナッツ摂取量が1日20グラム以下だったことに起因する可能性があると研究者は推定しています。

研究者はどう結論づけましたか?

研究者らは、「ナッツをたくさん食べることは、循環器系疾患、がん、さまざまな要因による死、呼吸器疾患、糖尿病、感染による死亡率の低下と関連している」と結論づけています。

結論

この系統的レビューは、ナッツ摂取が循環器系疾患、癌、さまざまな要因による死のリスクの低下と関連している可能性があるという根拠を見つけました。
この系統的レビューにはいくつかの長所があります。総被験者数が大きい多数の研究を利用したことです。ナッツ摂取量を評価し、その後の疾患の発生状況を追跡するプロスペクティブコホート研究のみを利用しています。食事内容と病気を同時に評価する横断研究は除外されたので、効果がどのように影響を及ぼしたのかはわかりません。また、既に病気に罹っている人に過去の食事内容を質問するタイプの手法で、思い出すときに生まれる偏りに左右されやすいレトロスペクティブコホート研究は除外されています。
しかしこれらの研究にも、ナッツがこのような効果にただ一つ直接的に関わっている魔法の食品だとは容易に証明できないという、この研究手法固有の限界がまだ数多く残っています。
ナッツ摂取に関するランダム化比較試験はありませんでした。すべての研究は、被験者が自分で食生活を選ぶ観察研究でした。
研究者はナッツ摂取量を独立した要素として調査した研究を使うように注意を払い、先行研究の結果は結果に影響を及ぼすほかの要因の調整は済んだものとみなしました。しかし、先行研究が調整した要因は、研究によってまちまちでしょう。
ナッツだけが健康効果の要因であることを証明することは非常に困難であり、バランスのとれた食事、定期的な運動、禁煙、適量のアルコールなど、一般的に健康的な生活習慣パターンの単なる一要素にすぎません。
頻度や摂取量に関しては、被験者がどれだけ食べているかを報告するときに不正確になる可能性が高いです。たとえば、ほとんどの人は毎日食べているナッツの量を測らないでしょう。
このレビューでは、特定の種類のナッツについては限られた情報しかありません。ピーナッツを取り上げて考えてみると、レビューに含まれた研究は、これらがプレーンナッツか塩と油が添加されたものかどうかを明示していませんでした。
また、循環器系疾患とがんの追跡は、参加者の自己報告なのか医療記録のチェックなのかなど、すべての研究で同じ方法で行われなかった可能性があります。
全体的にはナッツの摂取と健康には関係があるようですが、生活習慣が一般的に不健康な場合、ナッツだけで循環器系疾患やがんのリスクが低下することはありません。
長く健康的な生活を送るためには、定期的に運動し、喫煙を避けアルコールの消費を抑えながら、果物や野菜が多く、塩分、砂糖、飽和脂肪が少ないバランスの取れた食事を食べるべきです。
ナッツは “良い脂肪”が多く、健康的な食生活の一部として適度に食べるべきです。塩分摂取が多すぎると血圧が高くなるので、無塩ナッツが一番です。

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