炭水化物について知っておきたいこと

炭水化物とは
炭水化物は、食品中に存在する三つの多量栄養素(食事の大部分を構成する栄養素)の一つ(残りの二つは脂肪とタンパク質)です。これらのうちの一つの栄養素のみで成り立っている食品はほとんどなく、多くの食品は炭水化物、脂肪、タンパク質が様々な比率で組み合わさって構成されています。食品中に見られる炭水化物には三種類あります。それは糖、澱粉、食物繊維です。
・糖は果実、蜂蜜、フルーツ・ジュース、牛乳、ラクトース、野菜、などの食物の成分に含まれます。他のタイプの糖(例えばグラニュー糖)はチョコレート、ビスケット、ソフトドリンクなどの飲食物に製造過程で、或いは家庭等での料理中に添加されます。糖は炭水化物ですが、炭水化物の全てが糖であるわけではない、ということを覚えておきましょう。
・澱粉は異なる種類の多様な糖が結合して出来ており、植物由来の食物にみられます。パン、米、じゃがいも、パスタ等の澱粉質食品は、一日を通して、ゆっくりだが安定した、エネルギーの供給を行います。
・繊維とは、植物性食品の細胞壁にみられる多様な成分を総称して呼んだものです。皮付きの野菜、全粒粉のパン、全粒粉のパスタ、そして豆類(エンドウやヒラマメ)などは食物繊維を豊富に含有します。
何故炭水化物が必要なのか
炭水化物は複数の理由から、健康にとって重要であるといえます。
エネルギー
健康でバランスのとれた食事においては、身体のエネルギーの主要な供給源は炭水化物であるべきです。具体的には、1グラム当たり4kcal (17kJ)です。炭水化物は、血流に取り込まれる前にグルコース(糖)に分解されます。そこから、グルコースはインスリンの助けを得て体細胞内に入っていきます。グルコースはエネルギーの供給源として使われ、単純な呼吸からランニングまで、全ての活動の燃料となっています。
使用されなかったグルコースはグリコーゲンに変えられて肝臓や筋肉に蓄えられます。グリコーゲンの限界貯蔵量を超えたグルコースが体内にある場合は、脂肪に変えられてエネルギーの長期的な貯蓄に充てられます。食物繊維の多い、澱粉質の炭水化物食品は糖分の多い飲食物に比べて、血中に糖をよりゆっくりと放出します。
病気のリスク
野菜、豆類、全粒粉・澱粉質の食物、皮付きのじゃがいもからは食物繊維を豊富に得られます。健康的でバランスの取れた食事において繊維を欠かすことが出来ません。繊維は腸を健康的に保ち、便秘のリスクを軽減します。また、コレステロール値を下げる性質をもった繊維種も発見されています。
研究によれば、繊維が豊富な食事は、心臓血管病、Ⅱ型糖尿病、大腸癌のリスクの低下と関係があるそうです。多くの人は繊維の摂取が不十分です。
カロリー摂取
炭水化物は脂肪に比べて単位量当たりのカロリー量が少なく、澱粉質の食べ物は食物繊維を豊富に含むため、これらは減量計画の中で大きな役目を果たすのです。脂肪や砂糖が多量に含まれている食物をとる代わりに食物繊維たっぷりの澱粉質食物を食べることで、食事のカロリー量を減らすことが出来るでしょう。
繊維豊富な食物はまた、食事の体積を増すので、満腹感が得られます。
炭水化物摂取量を減らすべきか
我々は、砂糖抜きでも生き延びられるであろうことは確実ですが、炭水化物を完全に食事から取り除くことは現実的ではないでしょう。
炭水化物は身体の主要なエネルギー源です。炭水化物が欠如している場合、タンパク質と脂肪がエネルギーに変えられます。
また、繊維(消化システムを良好に保ち便秘を防止する働きがある)を摂取することも難しくなります。炭水化物を豊富に含む、澱粉質食物、野菜、フルーツ、マメ科植物、低脂肪の酪農製品といった健康食物は、カルシウム、鉄分、ビタミンB等の栄養素の重要な供給源でもあるのです。
炭水化物を食事から取り除いてしまうと、特定栄養素の欠乏のリスクが上がり、健康的な代替物をもって栄養不足を解消できない限りは、健康問題につながります。
炭水化物の代わりに脂肪や脂肪豊富なタンパク質供給源に頼ると飽和脂肪の摂取量が増えてしまい、血中コレステロール濃度が上がってしまいます。これは心臓病のリスク因子です。
グルコースが足りていない場合、身体は貯蓄されている脂肪をエネルギーに変えます。この過程において血中でケトンが作り出され、ケトン症に繋がります。食事の炭水化物量が少ないことが原因で起こるケトン症は、少なくとも短期間において頭痛、身体の弱り、吐き気、脱水症状、めまい、過敏性を引き起こす可能性があります。
糖分の多い食物の摂取量を減らすよう努力し、全粒食物、じゃがいも、野菜、果実、マメ科食物、低脂肪酪農製品等の健康的な炭水化物供給源を食事に取り入れましょう。
タンパク質と脂肪はエネルギー源か
食事の中で、炭水化物、脂肪、タンパク質は全てエネルギー供給源でありますが、それぞれの単位量当たりのエネルギー供給量が異なります。
・炭水化物:一グラム当たり4kcal (17kJ)
・タンパク質:一グラム当たり4kcal (17kJ)
・脂肪:一グラム当たり9kcal (37kJ)
炭水化物が欠乏している間は、身体はタンパク質(或いはその他の炭水化物以外の物質)をグルコースに変えます。ですから、血糖値や血中インスリンレベルを上げる可能性をもっているものは炭水化物だけではないのです。
どんな供給源であれ、燃焼する以上のカロリー量を摂取すれば体重は増えます。したがって炭水化物や脂肪の摂取をやめても、同程度のカロリーを含む食物で置き換えているだけであれば、カロリーをカットしていることにはならないのです。
炭水化物はタンパク質に比べて満腹感を得やすいか
炭水化物とタンパク質は凡そ単位量あたり同程度のカロリーを含有しますが、満腹感に影響を及ぼす要因は別にあるのです。それは例えば摂取する食物の種類、食べ方、或いは一人前の量や食事の選択肢といった環境要因です。
また、満腹感は人によって差異があります。タンパク質が豊富な食物をとると満腹感を得ることができるので、マメ科植物、魚、卵、肉、その他のタンパク質食物を健康的でバランスの取れた食事の中に取り入れるべきなのです。但し、これらの取りすぎもよくありません。食事の三分の一を澱粉質食物が占めている状態が望ましく、そしてもっと野菜や果実をとるべきであるということを忘れてはなりません。
どれだけの炭水化物をとるべきか
食事の三分の一以上をジャガイモ、パン、米、パスタ等の澱粉質食物が占め、もう三分の一は果実や野菜が占めていることが望ましいです。これは、一日の食事で摂取するカロリー量の半分以上が澱粉質食物と野菜・果実からくる必要があるということを意味します。
どんな炭水化物系食品をとるべきか
我々はスイーツ、チョコレート、ビスケット、ケーキ、砂糖の加えられたソフトドリンクの消費は控え、繊維食物や澱粉質食物をもっととるべきなのです。砂糖やカロリー含有量の高い食物は栄養が無い上に、虫歯のリスクを高め、食べ過ぎた場合に肥満に直結するのです。
果実、野菜、豆類、澱粉質食物(特に全粒系)は様々な栄養素(ビタミンやミネラル等)を含有しており、身体に良いのです。これらの食物に含まれる繊維は腸を健康に保ち、食事の体積を増やして満腹感を与えてくれるのです。
繊維摂取量を増やすには
食事
食事中の繊維量を増やすにあたって、多種多様な野菜や果実を一日に少なくとも五人前とることを目指し、全粒系の澱粉質食品をとって、じゃがいもは皮付きで食べるようにしましょう。平均して一日あたり30gの繊維を摂取することを目指しましょう。
典型的な食物の繊維含有量を以下の例で示します。
・全粒パン一切れ:2.5g(白パン一切れは0.9g)
・調理前の全粒小麦のパスタ80g:7.6g
・焼いたじゃがいも(皮付き)180g:4.7g
・ベニバナインゲン山盛り大さじ4杯(80g):1.6g
・調理済みのにんじん山盛り大さじ3杯(80g):2.2g
・とうもろこし山盛り大さじ3杯:2.2g
・焼いたマメ200g:9.8g
・オレンジ:1.9g
・バナナ:1.4g
GI値(グリセミック指数)の低い食物の摂取と減量
グリセミック指数とは、炭水化物を含有する食物の評価指数です。これは、評価対象の食物のみを摂取した場合に、それがどれだけの速さで血中のグルコース(糖)量に影響を与えるかを示しすものです。全粒の食物、果実、野菜、ソラマメやヒラマメ等のGI値の低いものが、我々が健康的でバランスの取れた食事の中に取り入れるべき食物です。一方、特定の食物やその組み合わせが健康的か、或いは減量に役立つか、ということをGI値を用いて判断しようとすると誤解が生じる可能性があります。
GI値の低い食物は血糖値を上げたうえでそれが下がりにくくし、長い時間満腹感を得られるかもしれませんが、GI値の低い食物が全て健康的であるわけではありません。例えば、スイカやパースニップはGI値が高く、チョコレートケーキはGI値が低いです。さらに、調理法や食事における食物の組み合わせによってもGI値は変わります。したがってGI値だけで食物が健康か、或いは減量を促進するかということを計ることは信憑性を欠くものなのです。
炭水化物によって太ることはあるか
どんな食物であれ、食べ過ぎれば太ります。食事の脂肪の量が多くても、或いは炭水化物が多くても、身体が使うよりも多くのエネルギーを頻繁に取り込めば体重が増えるのです。
実際、単位量当たりで比較した場合、炭水化物のカロリー量は脂肪が含有するカロリー量の半分にも満たないのです。また、全粒系の澱粉質食品は食物繊維を豊富に提供してくれます。繊維たっぷりの食物は食事の体積を増すので満腹感を与えてくれます。
しかしながら、糖分を多く含む食物はカロリー量が高いことが多く、これらを頻繁に摂取すると肥満に繋がる可能性があります。糖分の多い食物が食事全体のエネルギー量を増大させてしまい、それがいずれ肥満に繋がる、ということを示す結果もあります。
「人が炭水化物の摂取を減らして減量するときは、炭水化物だけをカットしているのではないのです。その食物を構成しているバター、チーズ、クリーム、砂糖、油等の高カロリー成分をもカットしているのです。」シアンはいいます。「カロリーを多量に摂取すれば、炭水化物であれ、或いは炭水化物や脂肪であれ、肥満に繋がるのです。」
小麦の摂取量を減らせば減量できるか
パンやその他の小麦食品を重量増加の元凶だと考える人がいます。小麦は、パン、パスタ、ピザ、シリアル等、様々な食品に使われています。しかしながら、小麦が他の食品に比べて肥満を促進するという確証は存在しません。
小麦アレルギーや小児脂肪便症(セリアック病)を患っているのでない限り、食事における小麦その他の穀物の摂取量を減らすことが健康に繋がるなどということを示す事実は見つかっておりません。穀物、特に全粒系の食物は、健康的でバランスの取れた食事に欠かせないものです。全粒穀物、全粒小麦、全粒粉パンは身体にエネルギーを与えてくれるのみならず、ビタミンB、ビタミンE、食物繊維、そして幅広いミネラルを含有します。
白パンもまたありとあらゆるビタミンやミネラルを含みますが、全粒穀物、全粒小麦、全粒粉のパンに比べ繊維量が少ないのです。白パンを好む場合は、繊維量の多いものを探しましょう。また、穀物は脂肪分が少ないです。
糖尿病患者は炭水化物を避けるべきか
糖尿病患者は、健康的でバランスのとれた食事をとって全ての食事に澱粉質食品を含めることを推奨されています。特定の食品群を完全にカットしてしまうことは避けましょう。糖尿病患者は、栄養士から食事計画のアドバイスを受けることが望ましいです。主治医に管理栄養士を紹介してもらいましょう。
Ⅱ型糖尿病患者にとっては、短期的にみて、炭水化物摂取量をカットした食事を取ることで減量できたり血中グルコース量を調節できたりするという証拠を提示する研究もあります。しかしながら、この食生活がⅡ型糖尿病患者にとって長期的にみて安全で効果のあるものかどうかは不明瞭です。
炭水化物摂取量の少ない食事をとることによる減量は、炭水化物摂取量の減少が直接関係あるのではなく、全般的なカロリー摂取量が減ったことに起因する可能性もあるのです。また、Ⅰ型糖尿病患者が炭水化物摂取量をカットすることの効果の有無についても証拠が不十分です。
Diabetes UKの臨床アドバイザーであるダグラス・トゥイーンフォーは次のように言っています。「糖尿病患者が炭水化物量の少ない食事を取ることを考えている場合は、低血糖症等の副作用のリスクがあることを知っておく必要があるでしょう。」
「糖尿病への最良の処置は、処方される薬を服用し、健康的な生活習慣を維持することです。健康的な生活とは、十分な身体運動を行いつつ、飽和脂肪・食塩・砂糖が少なく果実や野菜が豊富且つ特定の食品群をカットしないバランスの取れた食事をとることを意味します。」
運動における炭水化物の役割
炭水化物、脂肪、タンパク質は全てエネルギー供給源ですが、運動中の筋肉は炭水化物を主要な燃料源とします。しかし、筋肉が蓄えられる炭水化物(グリコーゲン)の量には限度があるので、エネルギーを十分に保つためには定期的につぎ足される必要があります。炭水化物量の少ない食事を取ることが運動中のエネルギー不足・早期の疲労・回復の遅延に繋がります。
炭水化物を取るベストなタイミング
特に減量を考えた上でいつ炭水化物を摂取すべきかということに関しては様々な議論がなされていますが、特定のタイミングが別の時よりも(摂取に)適しているという科学的根拠はありません。澱粉質の炭水化物系食品をベースにした食事をとり、可能な限り繊維量が多く且つ全粒穀物系のものを選ぶことが推奨されます。