糖尿病についての基礎知識〜腎代替療法〜

お腹

腎代替療法について

糖尿病は時折、腎臓が機能しなくなるほど、大きな損傷を与えます。腎臓が機能しなくなると、透析か移植のいずれかの処置をとる必要があります。

透析

腎代替療法の一般的な方法として、人工腎臓で血液を浄化する透析があります。透析には、血液透析と腹膜透析の2種類があります。

いずれの方法を取るにしても、透析には、医師と綿密な連携が必要になります。

血液透析

血液透析では、人工腎臓に血液を送り、老廃物を取り除くことで、血液を洗浄します。そのため血液を採取しやすい場所に、血液を人工腎臓に送るための「回路」を作ります。

回路は通常、前腕から患者自身の血管または、埋め込んでおいた人工の管を通して作られます。回路は身体の中にあり、外から見ることはできません。回路を作るための手術は通常、透析が始まる2〜3ヶ月前に行われ、体が癒えるまで時間を置きます。

血液透析は週に2〜3日行い、毎回3〜5時間を要します。血液は人工腎臓で老廃物をろ過し、清潔な血液として体内に戻ってきます。一回の透析で、約1/2カップの血が体から取り出されます。

通常、血液透析は病院で行われ、他の多くの患者と一緒に透析を受けます。自宅で行うこともできますが、そのためには家族や友達などの援助のもと、特別なトレーニングが必要です。

血液透析は誰にも適しているわけではありません。高血圧、低血圧、腹痛または筋肉痙攣といった副作用が診られることがあります。また健康を維持するために、特別な食事をとる必要があります。

他には、神経障害、貧血、骨疾患、栄養不良、感染の問題、排泄経路の問題、およびインスリン投与量の調節が難しくなるなど、時間とともに様々な症状が見られることがあります。ただこれらの合併症は、透析ではなく、糖尿病によって起こっている場合もあります。

腹膜透析

別の種類の形態として、お腹の腹膜をフィルター代わりに使う腹膜透析があります。まず、腹部に柔らかいプラスチックのチューブを挿入します。それからこのチューブを通して洗浄液(透析液)を腹部に投入します。そうすることで、血流中の廃棄物が、腹膜を通過して透析液と一緒に排出されます。

腹膜透析には主に、連続携行式腹膜透析(CAPD)と連続循環型腹膜透析(CCPD)の2つの方法があります。CCPDでは、腹部に挿入されたチューブに、透析液が入ったプラスチックバッグを取り付け、それを肩の高さで吊るすことで、自分で透析を行うことができます。透析終了後は、バッグは腰のあたりで折りたたんでおくことができます。透析後、数時間立つと、排出された液体がお腹のバッグに溜まります。溜まった液体をトイレで流し、それから新鮮な液体をバッグに入れ、再び浄化を開始します。これは「交換」と呼ばれ、1回の交換で約30-45分かかります。交換は1日4~5回行い、交換の間は、普段どおり行動しても問題ありません。

CCPDでは、洗浄液を腹部に入れて自動的に排液します。通常、夜の睡眠中に行われます。

CAPDとCCPDは、一部の患者にとっては、血液透析より優れた治療法です。毎日の透析では、身体が体液を過剰に蓄積することがないため、心臓や血管へのストレスが軽減されます。血液透析を行う人はよりは、食事制限が少なく、仕事や旅行にも支障がすくないでしょう。

しかし、腹膜透析は誰にとっても最適だというわけではありません。腹部の感染を防ぐために、しっかりと経過を観察できる人できる人でなければいけません。また血液透析の場合と同様に、貧血、骨疾患栄養不足といった症状が起こる可能性もあります。

血液透析と腹膜透析のどちらが適しているかは、医師によって判断されます。いずれの方法であっても、糖尿病のコントロールが大事です。

腎臓移植

また、末期腎臓病(ESRD)の患者にとって、もう1つの選択肢として、腎臓移植があります。移植は、生存している血縁者からの移植が最も成功する可能性が高いとされています。血縁者から移植を受けれないようであれば、亡くなってまもない他の人の肝臓を使います。

拒絶反応について

HLAの型がすべて一致していたとしても、拒絶反応が出る場合があります。その場合、移植を受けた人は、残りの人生において薬を飲み続けなければなりません。薬は、免疫系を抑制して新しい器官との戦いを妨げるため、免疫抑制剤と呼ばれています。免疫抑制剤には、アザチオプリンおよびシクロスポリンAがあります。これらの薬を使っても、拒絶反応が収まらないこともあります。拒絶反応は、体が新しい腎臓を外敵だとみなし攻撃することから起こります。

免疫抑制剤は危険にもなり得ます。免疫系を抑制すると、免疫系が新しい腎臓に気付かなくなりますが、同時に感染にも気付かなくなってしまいます。結果として免疫力が落ち、病気にかかりやすくなってしまいます。また、副作用も多くあります。

新しい腎臓は糖尿病を治しませんし、元の腎臓と同じように新しい腎臓を損傷する可能性もあります。しかし、腎臓が機能しなくなるまでは、長い年月がかかります。新しい腎臓が糖尿病性腎症を発症した場合も同じです。

リスクについて

腎臓移植は、心臓や血管の病気がない人にとっては、最も安全な方法です。移植を受ける前に、医師は循環系をチェックして、手術を行うにあたってのリスクを調べます
他の手術と同様、体が健康であればあるほど、手術のストレスに耐えることができます。可能性のある副作用には、出血や感染があります。

免疫抑制薬は体にとっては負担かもしれませんが、移植を受ける人は抑制剤を、残りの人生ずっと服用しなければなりません。 免疫抑制剤としてよく使われるアザチオプリンとシクロスポリンは、感染を起こしやすく、その他の副作用があります。免疫力を低下させるため、特に風邪やインフルエンザなどの感染者を避ける必要があります。また、医師への相談なしに、予防接種を受けるべきではありません。また腎臓にも損傷を与える可能性もあります。例えば、長年にわたって使用すると、いくつかの癌のリスクが増加する可能性もあります

こういったリスクがあるため、腎臓移植は、腎臓が完全に機能していない人でのみを対象に行われます。

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