妊娠前のジャガイモたっぷりの食事は糖尿病のリスクを上げる

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妊娠糖尿病とジャガイモについて

「妊娠前にジャガイモを食べると糖尿病のリスクが高まる」とDaily Telegrqphは報道しています。研究者は、妊娠前にジャガイモを多量に食べていたと回答した母親の妊娠糖尿病のリスクが、わずかながら有意に増加しているのを発見しました。
妊娠糖尿病は、妊娠中の血糖値の上昇によって引き起こされます。症状が出ることは通常ありませんが、未治療のまま放置すると合併症を引き起こす可能性があります。妊娠糖尿病と診断された場合は、通常、食事と運動でコントロールします。
この最新の研究では、米国の研究者が21,693件の妊娠の記録を調べました。研究者は、日常的にジャガイモを食べたと回答した女性は、妊娠糖尿病を発症する可能性が高いことを発見しました。
研究者らは、ポテトをいつも週に5つ以上食べる女性は、そこまで食べなかった女性と比較して、妊娠糖尿病のリスクが50%増加したと推定しました。これは高いと思われるかもしれませんが、研究で扱った妊娠のうち妊婦が妊娠糖尿病になった率は全体で5.5%です。
ジャガイモはグリセミック指数(GI)が高く、食べた直後に大量のグルコースを血中に放出するので、研究者はジャガイモに注目しました。ジャガイモが糖尿病のリスクを高めるかもしれないと考える専門家もいます。
この研究では、ジャガイモと糖尿病との関連が認められましたが、原因と因果関係を証明することはできません。
このような研究があったからといって、ジャガイモを食べるのを止める必要はありません。一方、野菜や豆をたくさん食べるなど、食べる食べ物に多少変化をつければ、簡単に必要なすべての栄養素を含む健康でバランスのとれた食事をすることができます。

この論文は誰が執筆しましたか?

この研究は、National Institutes for Health、Brigham and Women’s Harvard Medical School、Harvard TH Chan School of Public Healthの研究者によって行われ、National Institutes for HealthとAmerican Diabetes Associationの資金提供を受けました。査読された上でBritish Medical Journal(BMJ)にオープンアクセスベースで公開されました。オンラインで無料で読めます。
Daily MirrorとDaily Telegraphは結果の確実性を強調しました。特に、Daily Mirrorは「妊娠糖尿病」に「2型糖尿病」を当てはめました。この2つの病気には類似点はありますが、その原因と症状は異なります。
しかし、Mail OnlineとBBC Newsは上手くバランスのとれた報道をしました。

これはどんな研究でしたか?

これは、定期的にジャガイモを食べることと、妊娠糖尿病のリスクとの間に関連性があるかどうかを調べるプロスペクティブコホート研究です。プロスペクティブコホート研究では、さまざまな要因間の関連性を調べるのに有益な情報が得られますが、ある要因が何かを引き起こすかどうか(この場合、ジャガイモを食べることが妊娠糖尿病を引き起こすかどうか)は証明できません。

研究で使ったデータはどのようなものですか?

研究者は、米国の大規模な女性グループの記録を調べました。どのくらいの頻度でジャガイモを食べたか(4年ごとの食生活アンケートで調査)と、妊娠中に糖尿病を発症したかどうかを研究者は調べました。結果に影響を与えるほかの要因を調整した後、妊娠糖尿病とジャガイモを食べることのつながりを探しました。
彼らは、1991年から2001年にかけての10年間の期間を取って、米国の116,430人の看護師の進行中の研究のデータを使いました。研究者は、その期間に妊娠した女性で、以前に妊娠糖尿病になったことがなく、調査開始時点でがんや糖尿病、心臓病と診断されていない人のデータのみを使いました。
研究者は、どのくらいの頻度でジャガイモを食べたかというだけでなく、食事の全体的なヘルシーさ、運動量、体重、年齢、民族集団、家族の糖尿病歴も考慮に入れました。
研究者はいくつかの異なるデータ分析を行い、どの要素が女性の妊娠糖尿病の可能性に影響を与えているかを調べました。また、ジャガイモを食べる頻度を週に1回、週に2〜4回、週に5回以上に分け、妊娠糖尿病のリスクを計算しました。そして、1週間のうちジャガイモ2つを全粒粉や野菜、豆のような他の健康的な食品に交換した場合、どのような効果があるかを見てみました。

主な研究結果はどのようなものでしたか?

いつも週に2~4回ジャガイモを食べると回答した女性は、妊娠糖尿病になる可能性が27%高く(相対リスク[RR] 1.27,95%信頼区間[CI] 1.04~1.55)、週に5回以上食べると回答した女性は、妊娠糖尿病になる可能性が50%高い(RR 1.50,95%CI 1.15-1.96)ことがわかりました。週に1回食べるだけでも影響が出るかもしれませんが、週1回食べるグループの結果は統計的に有意ではなく、出た結果は偶然である可能性があります。
妊娠糖尿病になる全体的なリスク自体は非常に低いものでした。この研究で扱った10年間の21,693件の妊娠のうち、妊娠糖尿病になったのは854件でした。この研究で扱った範囲では妊娠糖尿病になる割合は5.5%だったと研究者は述べています。週に5つ以上ジャガイモを食べるとリスクが50%増加するというのは、全体としては約8%になるということになります。
研究者は、ジャガイモ2つを全粒粉や野菜、豆に交換すると、置き換える食品の種類によって相対的なリスクが9%〜12%低下すると計算しました。

研究者はどのように結果を解釈しましたか?

研究者らは、これらの結果はジャガイモが妊娠中に糖尿病を引き起こすことを示しているわけではないということを明言しています。しかし、ジャガイモはデンプン質の食品であり素早く消化されるので、研究の結果自体は「生物学的にもっともらしい」と述べています。
研究者は、この研究での発見はジャガイモをたくさん食べるように食生活ガイドラインで勧めているイギリスとアメリカに対して懸念を示すものだとしています。

結論

この研究から、ジャガイモが妊娠糖尿病を引き起こすかどうかは言えませんが、真剣に考えてみる価値はあるようです。
この研究にはいくつかの強みがあります。利用したデータが十分に大きく統計的に有意な結果を得られるので、女性が妊娠糖尿病を発症する可能性に影響を与える可能性のある多くの要因をチェックするために、結果を調整することができました。
分析は慎重に行われ、結果を歪曲させる要因がないことを確認しました。また研究者によれば、ジャガイモが糖尿病のリスクを増大させる可能性があると考えられる無理のない科学的理由が考えられます。
しかし、この研究には欠点があります。ジャガイモをどれぐらいの頻度で摂取したか、また妊娠糖尿病があったかどうかなど、結果は女性自身の推定に基づいています。何かを忘れたり、誤って回答している可能性があります。糖尿病がどれほど重度だったかもわからないので、ジャガイモを多く食べると妊娠糖尿病の重症度に影響が出るかどうかはわかりません。
最後に、どんなに優れたの観察研究でも、結果に影響を及ぼす可能性のあるすべての要因を調整することはできません。だからジャガイモが妊娠糖尿病のリスクを増やす原因だということはできません。
ジャガイモと妊娠糖尿病との潜在的な関連性についてもっと調べるためには、さらなる研究が必要です。しかし、妊娠を検討中で、リスクを心配している女性はどうしたらいいでしょう?
Public Health Englandの勧告は変わっていません―食物繊維を多く摂取するために、ジャガイモや全粒粉などのデンプン質食品を食べ続けましょう。ジャガイモを食べる頻度が心配なら、週にジャガイモ2つを全粒粉、サツマイモ、パスタパンに交換すれば、より多様な食事を食べながら、公式のアドバイスに従うことができます。
このような研究があったからといって、ジャガイモを食べるのを止める必要はありません。一方、野菜や豆をたくさん食べるなど、食べる食べ物に多少変化をつければ、簡単に必要なすべての栄養素を含む健康でバランスのとれた食事をすることができます。

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