「仕事のストレスで燃え尽きてしまった」〜経験談〜

仕事とストレス
Liz Tucker氏は現在、ストレス・マネジメントを専門とする健康福祉カウンセラーをしています。彼女自身、30歳であった14年前、仕事関係のストレスで「燃え尽きて」しまいました。
「当時、私は建築会社をやっていて、信じられないくらいの激務をこなしていました。24時間のなかで、遠く離れた町を行ったり来たりすることも、私には珍しいことではありませんでした」
「朝7時から仕事を始めて、次の日の夜8時、つまり36時間後になってやっと仕事が終わった、なんてこともよくありました。燃え尽きてしまった年には、私は100000マイル(約16,1000キロ)以上車で移動していましたね」
「私は、そんな風に忙しく飛び回るのがとても好きだったんです。それには多大なストレスが伴いましたが、自分のやっていることが最後には正しいことだとわかり、アドレナリンが出てくるのを感じるのが、本当に気持ちが良かったんです。とても大きな満足感を与えてくれたんです」
週7で働く
「初めのうちは、仕事はまだ普通に処理できる程度のものでした。そこから、私が病気となってしまった前の年には、週末も働くようになりました。社会的生活を営むことなど全くありませんでしたが、当時はそれが気にならなかったのです」
「そして、私のパートナーと出会いました。仕事を全てこなそうとしながらも彼に会おうと努め、それがプレッシャーとなった結果、全てが崩壊し始めてしまいました。極度の疲労感に襲われるようになり、強い無気力感を感じるようになりました。そして、ある日曜の夜、少し風邪気味だったので早く床につきました」
「翌日月曜日、私は目を覚ますと、全くベッドの外に出られなくなってしまっていました。指や頭、足は動かせましたが、腕や脚部に全く力が入らなかったのです」
燃え尽き症候群
「私が、過剰なストレスを受け続けた結果疲労で燃え尽きてしまった、と医師に診断された時、その言葉を信じることが出来ませんでした。私にとって、ストレスは確かに嬉しいものではなくとも、私は自分のそれまでの生活を心から楽しんでいたのですから。それでも、私が、ワーク・ライフ・バランスなど全く考えられていない、極めてストレスフルな生活を営んでいたのは、事実でした」
「加えて、食生活もひどいものでした。ガソリンスタンドでついでに購入した食事だけで生活していて、取っていた睡眠も十分とは程遠いものでした。そんな生活に耐えかねたのか、身体がまともに機能をすることを停止してしまっていました」
「その後の3ヶ月間は、私はベッドの外に出ることが出来ませんでした。ただただ、眠り続けていたのです。身体は回復し始めましたが、そこから数ヵ月後、私は医師からME(筋痛性脳脊髄炎)という診断されました。家の外に出られなくなったのです」
「身体的な症状も悪かったですが、それよりも精神的な「もや」の方がずっとひどいものでした。まるで誰かに私の頭にドリルで穴を空けられ、頭の中いっぱいにコンクリートを流し込まれたかのような感覚でした」
「この感覚が何年も続き、自分が衰えていくのが感じられました。パートナーは、私がこれから死んでしまうのではないか、と心配するようになりました。彼が医者に尋ねると、医者は『私には全く分かりません。彼女の身体は、まるで80歳の人のそれのようです』と答えていました。その答えに、私はとても大きなショックを受けました」
未来について考える
「医者がそう答えるまではずっと、何が正しいことなのか、医者こそが知っている、と信じていたのだと思います。だから、その医者が何をすべきか分からないと答えたのを聞いて、私は自分自身の未来について考えるようになったのです。パートナーと一緒に、私にとって正しい選択肢は何なのか、考えるようになりました」
「考えた結果、自分には生活の中で何か楽しいことが必要なのだ、という結論が出ました。それまでは、常に不安感だけを、長い間に渡って抱え続けていたのですから。毎週マッサージと催眠療法を受け、リラックスできるようにしました。また、暴力的だったり悲しい内容を含むものは、テレビで見ないことにしました」
「最も大きなターニング・ポイントは、自分のペースを調整するようになったことでした。それまでは、それ以前の自分とその時の自分を比べていました。前よりも少しでも気分が良ければ、その時は一度にたくさんの事をやろうと努め、その結果、また疲労感で体調を崩してしまっていました。私は自分が非現実的な目標を設定しているのだということに気づき始め、何事も段階を踏んで行うことにしようと決めたのです」
リラックスするようになる
「私がこの『適度にリラックスする』というルールを自分に設け始めてからは、自分の様態が急速に回復していくのを強く感じました。フルーツと野菜をたくさん取り入れた健康的な食事をとり、カフェインやアルコールの摂取もやめました。数週間も経たないうちに、自分の身体に起きている変化に気づき始めましたね」
「3ヵ月後には、以前よりもはるかに体調が良くなっていましたが、それでもあまりに長く寝て過ごしていたせいで、身体的にはかなり弱くなっていました。そして6ヵ月後、私は元の普通の状態にまで回復したのです。エネルギーがどんどん湧き、肌の調子もよく、一日中ベッドの中で過ごす必要もなくなったのです。驚きましたね」
「今ではもう10年間、健康福祉のカウンセラーとして働いています。再び大学に通って、ヒトの健康や生物学について勉強しました。一体私に何が起きたのか、とにかく理解したかったからです。そして、学ぶうちにそれがとても面白いものだと感じるようになり、自分も職業としてこの道を選ぼう、と決めたのです」
「以前と同じように、私は今もとても懸命に仕事をしていて、それに大いに満足しています。それでも、以前とは違うところがあります。それは、今はきちんとワーク・ライフ・バランスを考えていて、ストレスが溜まりすぎた時にはどうすれば良いか、知っているということです」