自閉症スペクトラム障害について〜治療〜

自閉症スペクトラム障害の治療
自閉症スペクトラム障害(ASD)の治療法はありません。しかし、専門的な教育プログラムや行動プログラムは、ASDの子どもに役立ちます。
ASDの人に与える影響は異なるため、どのプログラムが子どもにとって最も効果的か判別するのは難しいかもしれません。
長時間の集中的な作業が必要なプログラムもあり、実践的、感情的、金銭的な面で、多くの家族にとって常に可能可能というわけではありません。
プログラムは、子どもの発達の重要な側面に焦点を当てるべきです。
・コミュニケーションに役立つ写真を使用することのようなコミュニケーション能力(発話能力や語学技能は通常は大幅に遅れるため)
・他人の気持ちを理解してそれに反応する能力のような社会的相互作用の能力
・ごっこ遊びを促すことような創作遊びの能力
・子どもが読み書き計算のような教育を進めるのに必要となる「伝統的な」能力である学習能力
ASDの子どもや若者のケアの詳細な査定、管理、調整には、多くの専門分野にわたる地域のチームが関わるべきです。チームには次のものが含まれます。
・小児科医
・心理学者や精神科医などの精神衛生専門家
・学習障害専門家
・言語聴覚療法士
・作業療法士
・教育と社会福祉サービス
地元の自閉症チームは、ASDと診断されたすべての子どもや若者に、大人のためのケアへの移行と同様に、治療、ケア、サポートの管理と調整をしてくれるケアマネージャーを保証するべきです。
親の教育と訓練
ASDの子どもをもつ両親は、子どもの支援と技能の向上に重要な役割を果たします。
子どもがASDの場合は、症状についてできるだけ多く知っておくと良いです。
両親のためのコミュニケーションアドバイス
コミュニケーションは、ASDの子どもにとって特に困難です。子どもがコミュニケーションをとるのを手助けすることで、不安を減らし、行動を改善することができます。
以下のヒントは、子どもとのコミュニケーションや交流に役立ちます。
・自分が話しかけられていると認識できるように、子どもの名前を呼ぶ
・雑音を最小限に抑える
・簡単な言葉を使う
・語と語の間は区切り、ゆっくりはっきり話す
・簡単なジェスチャーを使いながら話す
・子どもが話を処理するための時間を十分とる
心理療法
子どもの行動が問題を引き起こしている場合、身体的健康状態、精神的な問題、環境要因などの可能性のある原因について調べられます。
ASDの子どもが不安などの精神的な問題を抱えている場合、心理療法が提供されることがあります。
認知行動療法(CBT)などの心理療法は、思考や感情について熟練した専門家と話し合い、これらが行動や健康にどのような影響を与えるかを議論することを含みます。
薬物治療
場合によっては、ASDに関連する症状を治療するために薬が処方されるかもしれません。以下に例を挙げます。
・睡眠障害の治療にはメラトニンを使います
・うつ病の治療には、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)として知られているタイプの薬を使います
・てんかんの治療には、抗てんかん薬を使います
・注意欠陥多動性障害(ADHD)の治療には、メチルフェニデートを使います
・かんしゃくや自傷行為などの攻撃的な行動の治療には、行為が深刻で心理治療では対応できない場合、抗精神病薬を使います
これらの薬は、重大な副作用がある可能性があり、治療される症状を専門とする医師によってのみ処方されます。薬を処方されている場合、効いているか確認するために、子どもは定期的な検査を受けることになります。
おすすめではない治療
ASDのための多くの代替治療法が提案されていますが、これらは避けるべきです。なぜなら、それらが効果的だという証拠はほとんどあるいはまったくなく、もしかすると危険なものさえあるかもしれないからです。
以下はASDにおすすめではない治療です。
・グルテンフリーやカゼインフリーのような特別食
・ニューロフィードバック。通常、頭に電極を置くことによって脳活動をモニターし、治療を受ける人は画面上で脳活動を見て、その変え方を教わります
・聴覚統合訓練。音色、音程、音量が異なる音楽を聴くことを含む治療
・キレーション療法。薬物や他の薬剤を使って身体から金属(特に水銀)を取り除きます
・高圧酸素治療。高気圧の部屋での酸素を使用した治療
・ファシリテイテッド・コミュニケーション。コンピュータのキーボードやマウスなどを使用している間、セラピストや他の人が人の手や腕をサポート、ガイドします