赤ちゃんの世話をする祖父母は長寿の傾向がある

その他

赤ちゃんの世話をすることが長期的なメリットをもたらす可能性

「孫の世話をする祖父母は、世話をしない人よりも寿命が長い傾向がある」とメール・オンラインが報道しています。

研究者は、孫の世話をする祖父母が、こうした世話をする必要がない同年代の人よりも死亡リスクが37%低いことを発見しました。

孫の世話に関わるすべての被験者が、世話をしない人よりも研究経過中に死亡するリスクが小さかったのです。また、ソーシャルネットワークで年長の子どもやほかの人をサポートする被験者にも、同様の肯定的な結果が出ています。

しかし、この研究には限界があり、その最たるものは、原因と結果を証明できないという点です。介助者の寿命が延びる要因が何かを明らかにするためには、さらなる研究が必要だと思います。研究者は、たとえば孫と過ごす時間が高齢者にとって使命感を感じたり、肉体的にも精神的にも活発であり続けるといった説明を提示しています。人を助けることが自分自身の幸福を改善するのにどんな効果があるのか、さらに読んでみましょう。

この説はどこから来たのか?

この研究は、バーゼル大学、西オーストラリア大学、そしてベルリンのマックスプランク人間開発研究所によって実施されました。 資金はマックスプランク協会、ベルリン自由大学、ドイツ連邦研究技術省、ドイツ連邦家族省などから資金提供を受けています。
また、この研究は、査読済の医学誌Evolution and Human Behavior に掲載されています。

この研究は、研究チームによって示唆されたように、結果に関するいくつかの説明とともに、Mail Online上に正確に掲載されています。しかし、ウェブサイトには、研究の制約事項について何も記載されていません。

どんな研究だったのか?

これは、家族間、あるいは家族外での祖父母による介助が、長寿と関係があるのかどうかを評価することを目的とした、将来的なコホート研究です。祖父母になることが、その人の健康面、特に認知機能と幸福面にプラスの影響を与える可能性があるという点で有益なことを示唆する研究が増えつつあります。

しかし、ほかの研究によれば、健康に悪影響を及ぼす可能性があることもわかっており、特に祖父母が子どもを常に保護下においているときにみられます。

この研究では祖父母になることの影響を調査することを目的としており、特に死亡率に注目していました。このとき、研究者によって可能性のある交絡因子(結果に影響を及ぼす外部要因)を制御する試みがなされました。

しかし、研究者たちが考慮に入れていなかった追加要因があったため、完全に正確なデータとは限らないのです。また、データは2年ごとにインタビューによって集められたので、バイアスがかかっている可能性もあります。

研究に含まれていたものは?

研究者は、ベルリン老化研究(BASE)のデータを調べました。彼らは被験者から得た健康や社会的状況に加え、彼らの子どもや孫について与えられた情報を元に、介助が死亡率に与える影響について調査することを目指しました。

BASEデータベースの人口は、西ベルリン登録事務所の記録から無作為に抽出されました。被験者は自宅でのインタビューと医療検査とともに、1990年と2009年の間、2年ごとに病院や診療所での診察を終えました。

被験者は、過去12カ月間の介助の頻度について尋ねられました。ここでいう介助は、親がいないときに孫の世話をしたり、一緒に過ごしたりすることと定義づけられました。これは7段階の尺度で評価します。1が「まったく世話をしていない」で、7が「毎日世話をしている」です。

祖父母ではない人は「1(never)」に印を付けました。サンプルには、常に孫の世話をしている介助者がいなかったのです。

インタビューの後、死亡するまでの時間が記録され、死亡率の目安として使われていました。介助する機会がある祖父母と、そのような機会がない祖父母の寿命を比べるために統計分析を行いました。分析は身体的な健康、年齢、社会経済的地位、および子どもと孫たちの特徴で制御しました。

基本的な結果は?

データセットから、516名の被験者を以下のように分類しました。

孫の世話をする祖父母(80名)
孫の世話をしない祖父母(232名)
祖父母ではない人(204名)

交絡因子を調整した後、孫の世話をする祖父母は、世話をしていない祖父母よりも死亡リスクが37%低いことがわかりました。(ハザード比[HR] 0.63、95%、確信間隔[CI]0.41~0.96)。孫の世話をする祖父母と祖父母ではない人とを比較したときも、同様に37%のリスク低下がみられました。つまり、祖父母ではない人と、孫の世話をしない祖父母との間で、死亡リスクに差はなかったのです(ハザード比 0.90、95%、確信間隔 0.78~1.15)。

特に、祖父母ではない人を見ると、年長の子どもに役立つ支援をしている人は、支援していな人より57%死亡リスクが下がっています(ハザード比0.43、95%、確信間隔0.29〜0.62)。

インタビューに参加した人のうち、子どもがいない人については、ほかの人をサポートしていない人よりも死亡リスクが60%低いことがわかっています(ハザード比0.40、95%、確信間隔0.31から0.54)。

研究者は結果をどう解釈したのか?

研究者は次のように結論づけています。
「孫の世話をした祖父母、年長の子どもに役立つ援助をした親、子どもはいないがソーシャルネットワークでほかの人を支える被験者は、こうした支援をしないグループよりも生存率が高い。このパターンは、援助と有益な健康効果の間だけでなく、援助と死亡の間、特に祖父母の介助と死亡との間に関連があることを示唆している」

結論

この将来のコホート研究は、家族間および家族外での祖父母による介助が寿命と関連しているかどうかを評価することを目的としていました。研究者は、孫の世話に関わったり、年長の子どもおよび/またはソーシャルネットワークでほかの人を支援する被験者は、介助しない人よりも経過観察中に死亡するリスクが低いことを明らかにしています。

しかし、この研究にはいくつかの限界があります。
まず、観察研究は、原因と結果を証明できません。これらの結果から、ケアを提供することが長寿に直接影響を及ぼす、という結果を見出すことができません。次に、研究者は結果に影響を及ぼす可能性があるいくつかの健康および社会人口統計的要因を調整しようとしています。

また、死因、被験者の身体的、精神的健康状態、幸福が詳しく調査されていません。そして、2年間のインタビューで集められたデータにバイアスがかかっているリスクがありますし、被験者はどのくらい孫たちの世話をしていたのかを正確に覚えていない可能性もあります。さらに、比較的少ない被験者の数で、ドイツの一部の地域だけで調査されています。したがって、被験者を変えると別の結果が出る可能性があります。

この研究は、介助と寿命の延びとの関連性についていくつかの証拠を提示していますが、何が原因で寿命が延びているかを突き止めることはできません。これを確認するためには、さらに研究が必要でしょう。

しかし、孫たちと一緒に過ごす時間と、友人や家族を助けることは、おそらく人に目的意識を与え、高齢者が身体的、精神的な活動を維持するのに役立ちます。

あなたが他人を助けることができる方法はたくさんあります。

関連記事一覧