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赤ちゃんに腸内細菌を与えると「アレルギーのリスクが変わるかもしれない」

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「幼児に良い細菌を与えれば、『喘息の危険性を減らすことができる』」

「幼児に良い細菌を与えれば、『喘息の危険性を減らすことができる』」。Mail Onlineの思わせぶりな見出し全体です。
そのニュースのもととなった研究は、腸内細菌と菌類の特定のパターンとそれに伴う喘息のリスクとの関連性は発見しましたが、そのリスクはどうしたら低減できるかについては不明です。
研究では、1ヶ月齢の乳児130人の便試料が、含まれる細菌と真菌の量および種類に従って分析されました。この分析に基づいて、サンプルを3つのカテゴリー(新生児腸内細菌相(NGM)1、NGM 2、NGM 3)に分類しました。
この研究では、アレルギーと喘息のリスクが高い子どもは、腸内の重要な細菌の量が少なく、特定の真菌のレベルが高いことが判明しました。このような子どもたちはNGM 3グループに分類されました。
しかしこの研究には限界があります。主要な限界は、「良い」細菌が腸内に少ないことがアレルギーの原因であることを証明できないということです。この研究は、さらに研究される必要のある素材を提供するだけです。
さらに、主な結果はNGM 3群に基づいていましたが、ここに含まれるアレルギー等のリスクが高い乳児はわずか11名でした。
この研究では、研究方法が腸内微生物とそれに伴うアレルギーリスクを変化させる可能性がないかを考慮しませんでした。
現在、成長後の子どものアレルギーの危険性を減らす唯一の実証済みの方法は、母乳育児です。

この論文は誰が執筆しましたか?

この研究は、カリフォルニア大学、デトロイト公衆衛生科学部、ミシガン大学医学部など、多くの機関の研究者によって行われました。資金は、米国国立衛生研究所、国立アレルギー・感染症研究所、およびアルフレッドPスローン財団の提供でした。査読の上、ジャーナル「Nature Medicine」に掲載されました。
Mail Onlineの報告には、この研究が示した証拠でサポートされてはいないものもあります。
「幼児に良い細菌を与えれば、『喘息の危険性を減らすことができる』」というのはおそらく妥当ですが、研究で発見された証拠には裏付けされていません。この研究では、菌補強剤としても知られている「フレンドリーバクテリア」の使用も考慮していませんでした。
ガーディアンはより慎重な発言をし、ハイリスクであるNGM3グループの少数の子どもたちに注目した独立した専門家であるWilliam Cookson教授の研究を引用しました。
彼はこうも指摘します。「喘息は腸の病気ではなく気道の病気であり、気道には気道の菌や細菌がいて、喘息患者では明白に異常を示します。私にとってより論理的な方法は、腸を見るよりは肺を見ることです。」

これはどんな研究でしたか?

このコーホート研究は、腸内細菌相と、小児アレルギーや喘息のリスクとの関係を評価することを目的としたものでした。
この研究はさらなる調査のための素材は提供できますが、細菌がアレルギー発現の原因であることは証明できません。しかしこの場合、提供される証拠は、腸内細菌がさまざまな面で健康に影響を与える可能性があるという大きな証拠とは一致しています。

被験者はどんな人ですか?

健康、環境、アレルギー、喘息の縦断研究の一環として、21歳から49歳の妊婦を2003年8月から2007年11月にウェインで募集しました。アレルギー性疾患の早期の生命リスク要因を調査するために構成された将来の出生前コーホート研究でした。
子どもの出生後1、6、12、24、48カ月後に、5回の追跡インタビューが実施された。 1ヶ月および6ヶ月の家庭訪問時に子どもから便試料を採取しました。
調査には、24ヶ月の訪問を完了した子どものデータのみを使いました。
血液サンプルも検討材料に含め、アレルギーにつながる、アレルゲンに対する免疫系の応答に関連する抗体を測定することもできました。
便試料の採取と共に、家のほこりの試料も採取しました。

主な研究結果はどのようなものでしたか?

平均日齢35日の130人の新生児の便試料を分析し、発見された細菌のレベルに基づいて3つの状態に分けました。そして新生児腸内細菌相(NGM)1〜3に分類しました。
どのグループでも、2歳ではアレルギー、4歳では喘息と、それぞれリスクの度合いがグループ間で異なることが判明しました。
NGM3群は、アレルギーについてはNGM1群より3倍(相対リスク[RR] 2.94,95%信頼区間[CI] 1.42〜6.09)、喘息についてはNGM2群より3倍(RR 2.95,95%CI 1.09 〜7.98)リスクが高いことがわかりました。
ハイリスクのNGM3群には、ビフィズス菌やフェシウム菌などの特定の「良好な」細菌が少なく、カンジダなどの真菌がより多いことが判明した。
NGM1とNGM2の間では、アレルギーや喘息のリスクの統計的有意差は認められませんでした。
各群の幼児の数は少数でした。 NGM3群の幼児はわずか11人でしたが、うち4人は喘息を発症しました。NGM2群だとの49人中5人、NGM1群だと70人中8人です。

研究者はどのように結果を解釈しましたか?

研究者らは、この研究によって新生児の腸内微生物が小児アレルギー喘息への感受性に影響を及ぼし、潜在的に腸内細菌環境の変化をおこすことを明らかになったとしています。
研究者は、新生児期に処置を加えることが、腸内細菌相の構成と機能を調整し、実現可能な病気予防法になる可能性を示唆しています。

結論

このコーホート研究は、腸内細菌相と、小児アレルギーや喘息のリスクとの関係を評価することを目的としたものでした。
この研究では、腸内の重要な細菌の量が少なく、ある種の真菌のレベルが高い子供は、アレルギーと喘息のリスクが高いことが分かりました。バクテリアや真菌などの微生物は、分娩時や母乳をあげているときに母親から母親から赤ちゃんに渡されたり、周りの環境から取り込むこともあります。
この知見は、腸内の「良好な」細菌の重要性と健康への肯定的な影響に関する根拠と大筋で一致しています。
しかし、この研究には限界があります。
研究の構成のせいで、この研究は、腸内の微生物がアレルギーを引き起こしているかどうかは証明できず、さらに研究すべき素材を提供するだけです。
検査された便試料の数は非常に少なく、有意な結果はNGM3群の非常に少数の参加者に基づくので、見られた効果は偶然の結果である可能性があります。
分析において、アレルギーおよび喘息の発現に、他の危険因子にさらされたかどうかが考慮されたか、またその程度は明らかではありません。
この研究の研究者は、これがアレルギーと喘息の原因の一つかもしれないと述べていますが、ここで取り上げられていない他の多くの潜在的な原因もありえます。
この研究では、腸内微生物の種類とレベルを変えるとどうなるかは考慮されていないため、Daily Mailの「有益な細菌の混合物をハイリスクの赤ちゃんの胃に注入すると、アレルギーや喘息を発症する危険性が低くなる」という主張は裏づけされていません。
赤ちゃんのための菌補給剤は現在大きなビジネスですが、その利点の根拠はそれほどしっかりしていません。
未熟児の消化器疾患を予防するなど非常に特殊な状況では、菌補給剤が有益であるという限られた証拠もありますが、現在のところ、健康な赤ちゃんに日常的に使用されるべきであるという確かな証拠はありません。

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