熱疲労と熱射病についての基礎知識~徴候と症状~

はじめに
熱疲労と熱射病はどちらも、気温が暑くなりすぎた時に起こりうる、潜在的に深刻な状態です。
通常は、熱帯や暑い気候の際に発症しますが、非常に激しい運動をしているときにも、これらの症状にかかる可能性があります。
熱疲労
身体が非常に暑くなって体内の水分や塩分を失い始めると起きます。結果として、様々な症状につながり、全体的に気分が優れなくなります。
熱射病
身体が自分で冷却できなくなり、体温が危険なほど高くなる症状です。(身体が直射日光に長時間さらされることが、原因となります。)
熱射病は、より深刻な状態であり、脳、心臓、肺、そして腎臓に負担を及ぼし、命にかかわることもあります。熱疲労が発見されず、早期に治療されなければ、熱射病に至る危険性があります。
徴候と症状
熱疲労や熱射病は数分で急に発症することもあれば、数時間から数日かけてゆっくり発症する場合もあります。
熱疲労の症状は以下です。
・疲れや衰弱
・気が遠くなったり、めまいがする
・血圧の低下
・頭痛
・筋肉のけいれん
・吐き気や嘔吐
・過度な発汗
・強烈な喉の渇き
・脈拍が速くなる
・尿の頻度が少なくなり、通常よりも濃い尿がでる
未治療のまま放置すると、混乱、方向感覚がなくなる、発作、意識を失うなど、より重度の高い症状が発生する可能性があります。
何をすべきか
周囲の人が熱疲労の兆候が見られるようであれば、以下のとおり対処するようにしてください。
涼しい場所に寝かせる
クーラーの効いた部屋や日陰がよいでしょう。
不必要な衣服を脱がせる
できるだけ肌を露出させるようにしてください
肌を冷やす
首や脇の下に濡らしたスポンジやタオル、保冷剤などをあてたり、ベッドのシーツを濡らして身体をくるむなど、使えるものはなんでも使ってください。
肌を保湿した状態で風を送る
水分が蒸発するのをふせぎ、皮膚を冷やす効果があります。
水分を取らせる
水やジュースでも大丈夫ですが、理想としてはスポーツドリンクなどの保水液が良いでしょう
気分が良くなるまでその人と一緒にいるようにしてください。ほとんどの人は30分以内に回復し始めるはずです。
意識がないようであれば、上記の手順に従って、助けが来るまで(以下を参照ください)、回復体位をとらせてください。発作を起こしている場合は、怪我をしないよう、近くにある邪魔になりそうなものは動かせましょう。
医療支援を受けるタイミング
重度の熱疲労や熱射病の場合、病院での治療が必要です。
次の場合には、救急車を呼ぶ必要があります。
・上記の処置後、30分経っても回復が見られない
・意識喪失、混乱、発作などの重度の症状がある
救急車を呼んだ後は、到着までの間、上記の治療を続行するようにしてください。
上記の措置後に、回復した場合でも、気になるようであれば、医師の診断をうけさせましょう。
最もリスクの高い人は?
熱波がある間、または暑い時期に激しい運動をしている人は、誰でも熱疲労や熱射病を発症する可能性があります。しかし、以下の人はより高いリスクにあるとされています。
・高齢者
・乳幼児
・糖尿病や心臓や肺などの長期的な健康状態の人
・既に病気で脱水している人(例えば、胃腸炎など)
・アスリートや肉体労働者など、長時間激しい運動をする人々
水分が十分に取れていない、風や換気少ない、また窮屈な衣服を着ている場合は、症状を起こす可能性が高くなります。
また、利尿薬、抗ヒスタミン薬、ベータ遮断薬、抗精神病薬、などは熱疲労や熱射病のリスクを高める可能性があります。
熱疲労や熱射病を防ぐ方法
大体のケースにおいて、熱疲労と熱射病は、暑い時期に注意深く予防措置を講じることで防ぐことができます。
高温注意情報を気にするようにしてください。潜在的な危険があるときは気が付きます。政府はHeat-Health Watchというシステムを使用して、熱波の可能性について警告します。これは、予想される温度に基づいて4つの異なる警告レベルのシステムです。
Public Health England (PHE)はまた、熱関連の疾患を予防するために熱波中に以下の助言を提示したイングランドの向けヒートウェーブ計画を発表しました。
暑さから逃れる
・午前11時から午後3時の間は太陽を避ける
・熱いうちに出かける必要がある場合は、日よけをし、帽子や軽いスカーフを着用してください。
・極度の身体活動は避ける。
・軽くてゆったり目の、綿の服を着用する
暑い国に旅行する場合、気温に慣れるまで、少なくとも最初の数日は特に注意してください。
身体を冷やす
・冷たい飲み物をたくさんとって、過剰なアルコール、カフェインを含んだ飲み物、熱い飲み物を避けてください。
・冷たい食べ物、特にサラダや果物など水分が多く含まれたものを食べる。
・冷たいシャワーや水風呂にはいる。
・肌や衣服に水を振りかけたり、首の後ろに濡れタオルをあてる
尿の頻度が少なかったり、濃い色の尿が見られるようであれば、脱水になっていて、水分が必要だという証拠です。
涼しい環境を保つ
・日差しがあたる窓やカーテンは日中は閉めておいた方がよいですが、気温が下がる夜は空ける様にしましょう
・可能であれば、特に就寝時はより涼しい部屋に移動してください。
・扇風機は一定の効果をもたらしてくれます。
・不必要なライトは消し、電気機器は発熱の可能性があるため、電源を切るようにしてください
・屋内の植物や水を家の中に入れておくと、空気を冷やしてくれる効果があります。
長期的には、ロフトや中空壁がある家は、外が暑いときは部屋を涼しく、外が寒い時は部屋を暖かく保つことができます。また、家の外壁は明るい色で、反射率の高い塗料を使用するのも効果的です。
周囲の人に目を配る
・孤立したり病気にかかっている年配の人や子供には注意を払い、涼しい環境に身を置けているか確認してください
・赤ちゃんや子供、高齢者は車に残さないようにしてください。
・高齢者や病気の家族、友人、隣人などがいれば、熱波の間は毎日様子を気にしてください
・体調が悪くなったり、助けが必要な人がいれば、医師に電話してください