加工肉の多い食事は「喘息の症状を悪化させる恐れがある」

喘息発作のリスク
「定期的にベーコンのサンドイッチを食べると喘息発作のリスクが倍増する」。The Sunが見出しで警告しています。
フランスの研究によると、週に加工肉を4回以上食べると、息をするときにぜいぜいという音がする症状(喘鳴)が悪化する可能性がありますが、これは喘息発作と同じものではありません。喘息発作とは、緊急に治療が必要になるくらい、正常な肺機能が弱くなったり突然失われたりすることです。
フランスの1,000人弱(そのうち喘息患者は42%)の大人を対象にした研究では、ソーセージ、ハム、または乾燥ソーセージを週に4回食べると喘息症状が悪化したという根拠が見つかりました。
研究者は、肉を保存するために使用される亜硝酸塩と呼ばれる化合物が気道内の炎症と関連しているため、それが悪化させるのだろうと考えています。
肥満も症状悪化につながりえます。肥満は体全体の炎症を増やすと考えられており、肺も炎症になる可能性があるため、分析の際研究者は肥満要因を調整しました。
英国の独立した専門家は、この研究が食事内容を十分に詳しく検討したかどうかについて疑問を呈しています。
ある1つの種類の食品が症状を引き起こすことを証明することは困難です。人の食生活は食品が複雑に組み合わさったものであり、食品は喘息症状を起こす可能性のあるたくさんの要因のうちのたった1つに過ぎません。
加工肉はまた、腸癌と関連しています。喘息発作のある人の健康的な食生活は、喘息のない人と同じようなものです。野菜など新鮮な食べ物を多く食べ、砂糖、飽和脂肪および塩分を控えめにしましょう。
この論文は誰が執筆しましたか?
この研究は、フランスの国立感染症研究所(INSERM)およびClinique Universitaire de Pneumologieの研究所、スペインのスペイン国立癌研究センター、環境疫学研究センター、メキシコのナショナル・デ・サリュウ・パブリカ研究所、アメリカのHarvard Medical Schoolの研究者が行いました。Merck Sharp&Dohme、グローバル・アレルギー喘息ヨーロッパネットワーク、米国国立病院臨床研究プログラムから資金提供されました。査読された上で雑誌Thoraxに掲載されました。
The SunとThe Daily Telegraphの報道は、このフランスの研究が加工肉を食べる人にとって何を意味するのかを検討することから始まります。
The Sunは「日常的にベーコンのサンドイッチを食べる」危険性について警告しており、The Daily Telegraphは「週4回のハムのサンドイッチ」が喘息発作のリスクを高める可能性があると読者にアドバイスしています。
両紙とも、加工肉は喘息発作のリスクを「ほぼ倍増」させると言っていますが、これは過剰な言い回しであり、不必要に読者を脅かす可能性があります。
研究者らは、喘息の症状が悪化するリスクが76%増加することを発見しました。これは、二倍未満であり(リスクが100%増えていないため)、必ずしも喘息発作と同じものではありません。症状が悪化すると喘鳴や咳が増えることがありますが、喘息になるわけではありません。
Daily MailとBBC Newsの報告はよりバランスが取れており、見つかった関連に必ずしも因果関係はないことを明らかにし、他の独立した専門家の見解も含まれていました。
これはどんな研究でしたか?
この研究では、プロスペクティブ研究で使われた2000人以上の人の情報を使用しました。そのうちの約40%が研究の開始時に喘息と診断されていました。
研究者らは統計モデルを用いて、喘息、加工肉の消費と体格指数(BMI)との間の関係を分析しました。
プロスペクティブ研究は、因子とその変遷の間の関連性を時間の経過とともに明らかにする有用な方法ですが、1つの因子(食事)が別の因子(喘息症状)を引き起こすことを証明することはできません。
どのようなデータを使いましたか?
研究者は、2003-07年に健康と食事に関するアンケートに回答した成人のデータと、2011-13年の追跡調査を入手しました。この情報は、喘息の遺伝学および環境疫学的研究として知られる別の研究のための調査の一部として作成されたものです。この調査には、喘息患者、その近親者、および喘息のない対照群が回答しました。
結果を左右する潜在的な要因(交絡因子)を調整した後、研究者は、第2回調査の喘息の症状の悪化度合いと、第1回調査での加工肉の消費量との間の関連性を調べました。研究者は、完全なデータがない人、研究から途中で離脱していた人、16歳未満の人のデータは除いたため、データ総数は元の2,047人から971人に減りました。
食物アンケートでは、118の食べ物をどれぐらいの頻度で食べたかを回答者に尋ねました。加工肉については、ソーセージ1つ、ハムのスライス2枚、乾燥ソーセージスライス3枚をどの程度食べたかを聞きました。
研究者らは、最も食べなかった(週に1回未満)人と、週に4回以上食べた人を比較し、以下の点を考慮して数値を調整しました。
・食生活全体
・BMI
・年齢
・性別
・喫煙の有無、量
・教育レベル
・運動量
この研究は、BMIが加工肉と喘息の間の関連性を仲介するかどうか、つまり加工肉の摂取で肥満になることによって間接的に喘息症状を引き起こすかどうかを評価するモデルを使用している点で、若干異例です。このような研究はほとんどの場合、BMIを結果を交絡因子とみなしてBMIの潜在的な影響をすべて取り除くことが多いです。
この研究では、喘息の有無を質問するのではなく、喘息と診断されたかどうかに関わらず結果の指標として回答者に喘息症状スコアを使いました。こうすることで、喘息の変化を時間とともに捉えて、新たに喘息になった人も把握できると研究者は考えています。
基本的な結果は何でしたか?
平均7年間の追跡調査後:
・回答者の53%が喘息症状スコアは開始時と同じになった
・27%が喘息症状スコアは改善した
・20%が喘息症状スコアは悪化した
研究者らは、加工肉を週に4回以上食べると、喘息症状スコアが悪化するリスクが76%(オッズ比1.76,95%信頼区間[CI] 1.01〜3.06)に増加することを発見しました。BMIがこの効果を媒介するので、加工肉によるリスク増加のうち14%は、加工肉の大量消費とBMIの高さとの関連で説明できます。
研究者はどのように結果を解釈しましたか?
研究者は、この研究での方法論でBMIを交絡因子ではなく仲介因子として扱うことにより、加工肉の影響を過小評価することを避けたと述べています。
「BMIを介した間接的効果がこの関連のわずか14%を占めたが、直接的効果はより大きく、BMIに依存しない加工肉の有害な影響を示唆している」と述べています。
言い換えれば、BMIの高さはリスクの一部を説明するだけなので、体重に対する影響とは独立して、加工肉が喘息リスクを上昇させる可能性が示唆されます。
結論
この研究は、ベーコン、ハム、ソーセージのような加工肉が私たちの健康に有害である可能性があるという懸念を増やします。
冷凍技術が確立される前は、肉を保存する方法として食肉加工が長く使われていました。食肉加工には塩分の使用を伴うことが多く、それ自体健康に悪いのですが、加工により亜硝酸塩と呼ばれる化合物が生成されます。亜硝酸塩は気道に炎症を引き起こすと考えられており、喘息症状を悪化させる可能性があります。
この研究だけでは、加工肉が喘息の症状を悪化させることは証明されていません。先行研究でも示されておらず、この研究にはいくつかの限界があります。
例えば、交絡因子を完全には説明できていない可能性があり、仲介要因としてBMIを扱ったことで、加工肉の影響が過大評価されたかもしれません。
英国栄養士協会(British Dietetic Association)のある専門家は、この研究で使われた食物アンケートは、高脂肪または低脂肪乳製品などのさまざまな食品の影響を十分に説明するには不十分であるようだと語りました。
また、フランスで日常的に食べられる加工肉が、英国で日常的に食べられるものと同じ影響を体に与えるかどうかはわかりません。
塩辛い、高脂肪の加工肉を、特に一年中食べていると、健康でない可能性が高いということを証明する研究はもう必要ありません。
新鮮な食べ物、野菜、全粒穀物、豆類、果物を豊富に含む、飽和脂肪、塩、砂糖のあまりない、バランスの取れた健康的な食事が一番です。