サリー氏の経験談 ― 我が子のための養子縁組後の支援

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養子を受け入れる

サリー=ドノヴァン氏は、彼女が育てている2人の養子が経験した健康上の問題、および子供達が受けたサポートについて、次のように打ち明けています。

ドノヴァン夫妻は、30代前半のとき、新たに家族をつくりたいと決心しました。しかし、子供を作ろうと数年間努めたのち、夫妻は自然妊娠をすることが出来ないと告げられました。この事実は、夫妻にとって、受け入れるには長い時間を必要とするものでした。

「不妊は、本当に恐ろしいこと。それにも関わらず、不妊の影響力は、それを経験したことのない人からは不当に小さく見られているのです」現在45歳のサリー氏はこう語ります。夫妻は、初めのうちはとても孤独に感じていましたが、その後、お互いに頼り合い、サポートし合うことができるようになりました。「共に話し合い、必要なときはお互いにお互いのスペースを用意してあげることで、困難を一緒に乗り越えてきました」

やがてサリー氏とロブ氏は、IVF(体外受精)や代理母出産、養子縁組を模索するようになりました。サリー氏を担当する外科医院の看護師は、夫妻が質問をすることが出来るよう、子供を養子として引き取った親や、IVFを通じて子供を授かった親とコンタクトを取れるよう手配してくれました。長い熟慮の後、夫妻は養子縁組をすることを選びました。サリー氏はそのことについて、次のように語っています。

「私達にとって、受け入れる子供が遺伝子的に繋がっていないことは大した問題ではなく、また妊娠するためにたくさんの医療的干渉を経ることが私にとって望ましいことであるという確信もありませんでした。世の中には、安定していて愛情に満ちた家族の一員となることで恩恵を受けている子供達もたくさんいますから、養子縁組は私達にとって、自明の選択であったと思います」

養親として認定を受けた後にマッチングされた子供が1組の兄妹であると分かり、サリー氏とロブ氏は興奮したといいます ― 4歳の息子ジェイミーと、1歳の娘ローズでした。

感情面で複雑なニーズを抱えた、我が養子

保護を受ける他の多くの子供と同様に、ジェイミーとローズが幼少期に経験したネグレクトや虐待のトラウマが、今も彼らの感情面での発達と健康に問題を引き起こしています。

「私達の子供が求めているような親になれるよう学ぶ、ということは、とても価値のあることである一方で、同時に困難を伴うことなのです」とサリー氏は語っています。

トラウマ的経験の結果としての不安感

子供たちは早い段階から恐怖感と孤独の中に暮らしていたため、当時の状況に対応できるよう生き延びるスキルを身につけなければなりませんでした。今はサリー氏とロブ氏の保護のもと、安全な環境にいますが、それでもジェイミーとローズは極度の不安感を抱えており、もはやその必要も無いにもかかわらず、これから起こるであろう危険に対して強く警戒しています。これが原因で、静かに座って何かに集中するたびに脅迫観念に襲われ、学校での生活に関して特に大きな支障をきたしてしまうこともあります。

ネグレクトによる摂食障害

長期にわたるネグレクト ― 例えば、食べ物を取り上げられるなど ― を保護を受けるまでに経験した結果、子供たちの両方が、長く残り、根も深い摂食障害を抱えてしまいました。今の生活なら自分はたくさん食べ物を食べられるのだ、と子供たちが安心できるように、サリー氏とロブ氏が常に子供達のそばにいてあげる必要があるのです。

ネグレクトによる学習障害

ジェイミーとローズは種々の認知的障碍も抱えており、それが学習や理解、物事の記憶に問題を引き起こすこともあります。サリー氏はこの障碍について、極度の恐怖感や保護者による養育の欠落が、子供達の脳の初期成長を妨げたものと考えています。子供達は往々にして怒りの感情をあらわにすると言いますが、サリー氏はこれが子供達自身が早くから経験していたトラウマへの反応であると感じています。「この行動によって、今まで溜め込まれてきた恐怖感や悲しみを、外へ放出しているのです」と彼女は語っています。

ポスト・アダプション・サポート(縁組後の支援)

養子縁組が成立してから初めの数年のうちは、サリー氏は、家族が社会福祉サービスや医療サービス、主治医から受けていた支援が、全体として心もとないものであると感じていました。例えば、早くからもっとずっと質の良いスピーチ・セラピーを受けることができていれば、子供たちの助けにもなっただろうし、「学校で他の子供たちに話しかけるのに困難を抱えてしまうことも無かったかもしれない」、と彼女は感じているといいます。

最終的に、医療的ファミリー・セラピーを実施するクリニックを始めたソーシャル・ワーカーの人からいくらか支援を受けることができました。「このサポートは本当に素晴らしいものでした。おかげで、子供たちの状態を改善する助けになっています」とサリー氏は話します。彼女は発達上のトラウマを経験した子供たちのために、機関からより多くの支援を受けたいといいます。

「私たちのジェイミーとローズのような子供たちにとっては、その他の健康上のニーズを抱えている人々と同様に、この治療を受けてみるだけの価値があると思います。効果的な治療を受けることで、子供たちが幸せな家庭、社会生活、教育、将来のキャリアを得ることができるチャンスが、大幅に向上するのです。

幸い、ここ最近でドノヴァン夫妻にとっての支援ネットワークは大きく改善されました。サリー氏の地域の養子縁組機関で縁組後の支援を行っているチームは、養子を受け入れる家族のサポートに関して、特に経験を積んできています。「支援チームには予算の関係で治療的サービスは提供できていませんが、子育てに関連するセラピーについてのアドバイスやトレーニングを提供してくれますし、アドバイスのために子供の学校まで来てくれて、子供たちが必要なときに話を聞いてもらえるように、学校にいてくれるんです」とサリー氏は話します。

保護を受けている子供に適した学校を見つける

「学校は、養子として家族に引き取ってもらっている子供にとって、生活の中で付き合っていくのに最も困難を伴うものとなることがよくあります。そして、上手く適応することができなければ、家族にとって恐ろしい結果を招いてしまう危険性もあるのです」とサリー氏は語ります。「ですから、適切な学校を選ぶことが大切なのです」

彼女は、養子を引き取っている他の親たちに、出来るだけ多くの学校を訪問し、特定の質問をするようアドバイスしています。「トラウマや愛着に関連する問題を抱える子供に対応できるスタッフがいるかどうか尋ね、知識があり、子供の気持ちを理解することが出来る人間が学校にきちんといるのかを確かめてください。特に、可能であれば、そのスタッフが子供に共感・同情することができるのかどうかを見るようにし、そういった子供に対してはどのようなことをすべきであり、どのようなことはすべきでないのか、あなたと一緒に学んでいくことができる人間なのかを見てください」

またサリー氏は、学校がどのようにして保護を受けている子供の教育を行っていくのかについて、強い懸念を示しています。「私の場合、学校の教育システムがどのような振舞い方を基準として組まれているのか、ということも尋ねますね。もしそのシステムがとても厳しいもので、【わざわざマイナスな影響を及ぼすようなやり方で、子供への注意を促す】といった残念な部分が見つかるようであれば、その学校に対しては特に注意を払うようにしますね」

「私たちの子供は、経験から学んで、自分が安全で人と繋がっていると感じているときは落ち着いていられるようになっています」とサリー氏は話します。彼女はまた、養子として引き取られた子供の場合、自己評価が低くなってしまうのもよくあることと指摘しています。「子供を『悪い子だ』と決め付けてしまうことが、子供自身の思い込み(「自分は悪い子なんだ」)に繋がってしまうのです」

サリー氏とロブ氏自身の精神的健康・幸福

子育てをする際には、どんな親であれ、感情面での起伏が見られるようになることがあります。しかし、養子として引き取られた子供の多くがそうであるように、トラウマを経験している子供の場合には、通常よりもはるかに対処に困難を要するような振る舞いをすることがあります。これが親にとって、対応・説明することが難しいものとなり得るわけです。

友人や家族からサポートしてもらってはいるものの、サリー氏は、初期に受けたネグレクトや虐待が子供にどれだけの影響を与えるのかについて、意識が足りていないと感じるといいます。

「受けられるサポートなど殆ど全く存在しないのではないか、とでも感じられるような時期がありました。それでも、私たちの周りの人で、専門家含め、私たちが経験している状況を理解してくれる人は、ほとんどいなかったのです」と彼女は話します。

「セラピー型の子育て方法(therapeutic parenting methods)について自分たちに何が出来るのか、情報を探して読んだりしましたが、実際に状況が改善されたのは、新たな支援者の方が私たちを担当してくれることになってからでした。彼女は、子供たちだけでなく、私たち自身にももっとずっと効果的なサポートを提供してくれるような、私たち家族にぴったりの学校を探す手助けをしてくれました。また、その時に私たちが抱えていた気持ちやフラストレーション、希望、不安を、正直に共有する場も作ってくれました。これだけでも、私たちにとっては、本当に大いに助けになったと思います」

加えてロブ氏は、子供たちが夫妻の一員となった当時、親しい人との死別を経ていました。自身の気持ちを制御するため、その時の悲しみは「押し込め」られましたが、生活が落ち着いてくるとともに、後に再び蘇ってくるようになりました。「私はそうすべきだと思っていたのですが、彼は一向に医療的サポートを受けようとはしませんでした」と、サリー氏は当時の状況を振り返ります。彼女は自分の夫に鬱病の傾向が出始めていたのが分かったといいます。「でも、今の彼の状態は、当時よりもずっと良くなっていますよ」

サリー氏とロブ氏はどちらも、養子縁組の中で一番自分たちにとって報われることとして、子供たちが自信を取り戻し、感情面でも回復が進んでいくのを、そばで見ていることができる、ということを挙げています。「養子を引き取るのは、家族をつくるのに簡単な道とはいえません。養子を育てる中では、子供の目を通して世界を見ること、そして子育ての新しいやり方を学ぶことが不可欠です」とサリー氏は語ります。「そうすることで、人生の中では何を達成することができ、どんなことが重要なのか、その両方について、よりずっと注意深く考えるようになるのです」

「子供は、私たちにたくさんのことを教えてくれました。彼らの親であることで、より良い人間になることができているのです」

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