妊娠期の甲状腺障害~甲状腺機能亢進症と甲状腺機能低下症~

症状

妊娠中の甲状腺障害

症状が「普通の」妊娠期のものとよく似ているため、妊婦さんの甲状腺機能亢進症と甲状腺機能低下症をお医者さんは見逃してしまいがちです。しかし適切な診療と治療はお母さんと赤ちゃん双方にとって重要です。知っておくべきことをお伝えしましょう。

甲状腺障害の妊婦さん

疲れ、憂鬱、痛み、そして自分は忘れっぽいと感じることがありますか?体重が増加したり、発疹や発汗があったりしますか?それは当然です、あなたは妊婦なのですから!これらの症状はすべての妊婦に共通している一方で、まれに甲状腺障害の印である場合もあるのです。どうやってお医者さんはその違いを見分けるのでしょう?

もし今まで甲状腺障害だと診断されたことは無かったけれど症状を呈している場合(そして特に家系に甲状腺障害になった人がいる場合)、お医者さんは簡単な血液検査をなさるでしょう。幸運なことに、甲状腺障害は妊娠期の薬で安全に治療して、お母さんや赤ちゃんへのリスクを最小化することができるのです。

甲状腺障害とは?

喉頭のちょうど下、首の正面にある甲状腺は体内の全てのホルモンを生産する内分泌系の一部です。甲状腺が作るホルモンは身体がエネルギーを使う方法である新陳代謝の調節で体温、体重、コレステロール値、その他の重要な体の機能と共に重要な役割を果たします。

次に、甲状腺ホルモンの生産は、(脳の)脳下垂体に制御されている甲状腺刺激ホルモン(TSH)の数値によって統制されています。血液中の甲状腺ホルモンの数値は自然に一日中変動しています。普通、脳下垂体はTSHを多かれ少なかれ作ることに反応します。しかし時々、TSHの生産の具合が悪くなるとそれは甲状腺機能低下症(甲状腺ホルモンが少なすぎる)という、多くの身体機能の鈍化か、甲状腺機能亢進症(甲状腺ホルモンが多すぎる)という多くの身体機能を速める症状の原因になりかねないのです。

どのように妊娠期は甲状腺ホルモンの数値に影響するのか?

妊娠している時、エストロゲンとヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)という、もしかしたらかなり親しみがあるかもしれない2つの妊娠ホルモンは甲状腺ホルモンの数値を上げます。第一期では、TSHと似ているhCGが甲状腺ホルモンの生産を刺激します。そして妊娠期の間中、上昇したエストロゲンの数値で血液中の甲状腺ホルモンの移送を手伝う
ホルモンが生産されます。第三期までに、甲状腺の大きさは30%増加します。この全ては普通のことです。

上記の理由両方と普通の妊娠期の多くの症状と甲状腺障害(疲労など)が似ているため、甲状腺検査は妊娠中さらに解釈が難しくなります。甲状腺ホルモンは赤ちゃんの脳と神経系の健康な発達に重要なため、赤ちゃんの甲状腺が発達する前赤ちゃんは甲状腺ホルモンを完全にお母さんに頼るのです。もし必要になったら処置が受けられるのでリスクの要因と症状を理解しておくのがますます重要になるのです。

甲状腺機能低下症

何か

甲状腺機能低下症は甲状腺の異常な不活発の結果甲状腺ホルモンであるチロキシンが欠乏するものです。妊娠期に、約500人に2人の妊婦が甲状腺の慢性的な炎症とホルモン生産能力への干渉を引き起こす自己免疫障害である橋本甲状腺炎によって発症します。

リスクの高い人

過去に甲状腺機能低下症と診断され、そして家系に甲状腺障害になった人がいる女性は妊娠期に罹患するおそれが最も高いです。

症状

以下の症状に見慣れたものはありますか?妊娠期に共通のものではありますが、安全なやり方をとりお医者さんにお話をするのが一番です。

極度の疲労
寒気
記憶喪失
筋肉の痛み、痙攣
平均体重増加より体重増加が多い
皮膚の問題
脱毛
発汗(特に手と足)
便秘

合併症

お母さんの甲状腺ホルモンは赤ちゃんの脳と神経系の普通の発達に重要です。お母さんの供給に依存している第一期にこれらのホルモンを十分に得ることができないと、神経発達問題を抱え産まれてくる場合があります。
もし処置をしないでいると、妊娠期の甲状腺機能低下症はこれらに繋がることがあります。

早産
子癇前症(血圧の深刻な上昇)
流産
低い出生体重
貧血
死産
珍しいですが、鬱血性心不全

診断

お医者さんはお母さんが経験している症状について議論をしTSHとT4(甲状腺ホルモンの1種)の数値を調べる血液検査を実施されるでしょう。

治療

お医者さんはチロキシンという合成ホルモンを処方されるでしょう。これは妊娠期に安全なだけでなく、お母さんと赤ちゃん両方に重要なものです。内分泌学の先生と産科の先生とで協力して、おかあさんへの適正量を見極めましょう。もし以前甲状腺機能低下になったことがあったら、体は赤ちゃんを育てるモードになっている時期なのでより甲状腺ホルモンが必要になるためお医者さんたちはお母さんのその数値を上げたいと思うでしょう。

妊娠期と分娩後、お母さんの甲状腺ホルモン数値は服用にさらなる追加が必要かどうか見るため6~8週間観察されるでしょう。

薬に加え、健康でバランスのとれた食事を摂り妊婦用ビタミン剤を服用するようにしてください。ヨウ素は甲状腺の健康に重要なので、(妊婦用ビタミン剤にあまり含まれていなければ)お医者さんは妊娠期に一日150マイクログラムのヨウ素のサプリメントを提案なさるでしょう。ヨウ素は魚介類やヨウ素添加塩にも含まれているので、海水塩よりそっちの方を選んでください。

甲状腺機能亢進症

何か

甲状腺機能亢進症は甲状腺が活発になり過ぎ過度に甲状腺ホルモンを生産してしまう状態です。アメリカ国立衛生研究所によれば大体500人の女性に1人が発症します。これはふつう妊婦の中ではバセドー病(自己免疫疾患の1つ)という、免疫機構が甲状腺刺激免疫グロブリンという甲状腺に甲状腺ホルモンを過剰に生産させる抗体をつくる症状によって起きます。さらに珍しいものでは、どちらも高いhCG値により起こるので妊娠期の甲状腺機能亢進症は妊娠悪阻(ひどい吐き気と嘔吐)とも関連しています。

症状

以下のものを何であれ経験したらお医者さんを呼びましょう。

異常、あるいは速い心拍
疲労
神経質
ひどい吐き気や嘔吐
睡眠障害
体重減少、「典型的な」妊娠期より少ない体重の増加
もしすでにバセドー病を経験していたら、妊娠期に身体が免疫機構を抑えるので第二期と第三期に症状の改善や軽減さえ見られるかもしれません。そしてもし症状が妊娠悪阻と結びついていたら、hCGの低い数値のために第二期に吐き気と嘔吐と共に無くなるでしょう。
合併症:甲状腺機能低下症と同様、治療しないままの甲状腺機能亢進症は以下に含まれるようなお母さんと赤ちゃん両方に関わる深刻な合併症につながる可能性があります。
鬱血性心不全
子癇前症
流産
早産
低出産体重

診断

お医者さんは症状を確認し、TSH、T3とT4の数値のチェックのため血液検査を行われるでしょう。

治療

もし症状が穏やかであったら、お母さんはなんの処置も要らないかもしれません。より深刻な場合プロピルチオウラシル(PTU)と呼ばれる抗甲状腺薬が第一期に最小有効量必要になります。第一期の後、もし必要なら、お医者さんは抗甲状腺薬のメチマゾール(タパゾール、ノーチックス)に変更なさるかもしれません。どちらかの方法で、お母さんはお医者さんと薬と服用量がまだご自分に適していることをチェックする必要があります。珍しい場合(もし薬に身体が反応しなかったりひどい副作用を味わったりしたら)、手術で甲状腺の一部を取り除いてもらう必要があるかもしれません。

知っておく必要のある事

体の甲状腺ホルモンへの欲求は妊娠期に上下します。もし過去に何か甲状腺の問題を診断されたことがあったり現在甲状腺の症状のために薬を服用しているなら、お医者さんにお知らせするようにして下さい。もう一度お薬をお願いしたり服用量を調整してもらうことは可能です。

妊娠の後、甲状腺障害の症状の多くは産後うつ(PPD)のそれと似ていることがあるというのも知っておいて下さい。もし上に挙げた症状を何か経験したら、お医者さんに知らせれば診断を受け必要な治療をしていただけます。

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