妊娠中の食事として摂取したい有機食物について

妊娠中の有機食物
「有機」の意味を理解し、高コストにも関わらず有機食物を妊娠中に選ぶ価値があるのかどうかを考えましょう。
妊婦が胎児の分を含め、二人分の食事を取っている今、有機食物を取るべきか、また、取るならいつか、といったことを考えることもあるでしょう。有機食物は非有機(普通の食物)に比べて価格の高い食物ですが、赤ちゃんに良いスタートを切ってもらうためには何だってやってあげよう、と思うのは自然なことです。
さて、有機食物は買う価値があるのでしょうか。
どんな議論でもそうです(有機食物 vs. 普通の食物という議論は全く平行線なのである)が、賛成意見と反対意見があります。The American Academy of Pediatricsによれば、有機食物は普通の食物に比べて農薬の使用量が少なく環境への害が小さいことは事実であるそうですが、有機の方が普通食よりも人体の健康に良いという証拠は全くないといいます。証拠が無いならば、わざわざ有機食物にお金を費やすのは良くないということでしょうか。当然、最終的な選択は個人の自由です。但し、ここで紹介する情報は是非参考にして頂くと良いでしょう。
「有機」の意味
The United States Department of Agriculture (USDA)は、栽培地の如何を問わず(米国に留まらない)「有機」ラベルが貼られる食物が満たすべき基準を設けました。この基準は、有機食物がどのように栽培、処理、加工される食物を指す言葉なのかを定めています。
無農薬
化学肥料無使用
除草剤無使用
遺伝子組み換えでない
ホルモンや抗生物質無使用(鶏肉、牛肉、豚肉に関して)
The USDA Organic Sealの定めるガイドラインは些か分かりにくいものとなっています。
以下の通りです。
有機100%というラベルが貼られている食物には、有機的に生産・加工された食物以外が含まれてはならない
有機というラベルの貼られた食物は、その成分の95%以上が有機的に生産されたものでなくてはならない(水や食塩を含む)
表の主要な部分ではなく成分表にのみ有機というラベルが貼られている場合は、全成分の50%未満が有機的なものであることを意味する
有機食物を接取する意義
これは研究途上且つ議論の多い分野ではありますが、いくつかの調査結果が下記の事柄を示唆しています。
有機食物を選んだ場合消費者は以下の物質との接触を避けられる可能性がある
農薬
Environmental Health Perspectives による大規模調査の結果が示唆するところでは、有機食物を接取することで人体に取り込む農薬の量を抑えることができるそうです。しかしながら、特定の農薬の接取が人体(胎児も含む)の健康に長期的な悪影響を及ぼすことを示す信頼性のある調査はありません。農薬の人体への影響については更なる研究が必要ですが、WHOの調査機関のうちフランスを拠点とするInternational Agency for Research on Cancerがグリホサートという世界中で使用されている(米国内では広く使用される)除草剤の一つを、発癌性をはらむ可能性のある物質だと定めたことは興味深いことです。(当該化学物質に多量にさらされている農作業者の血液や尿からグリホサートが検出された。消費者から見つかったわけではない。)但し、グリホサートはThe US Environmental Protection Agency (EPA)によって2012年に米国の食品栽培においては安全な物質だと定められました。
抗生物質
抗生物質を与えられた動物を人体が消費した場合に生じる健康への影響については更なる研究が必要です。但し既にリスクとしてわかっているのは、我々が食用とする動物内に住んでいる特定種のバクテリアは人が投与する抗生物質に対して長期的に耐性を確立していくということです。逆に人が調理不十分な肉類を接取してこの抗生物質耐性を持つバクテリアに感染した場合は、その症状は抗生物質を用いて治療することができないということになります。これをうけて欧州の国々とカナダ(米国は含まれない)は農業における抗生物質の使用を廃止しました。
添加物
出来合いの食品を購入する際に有機食物を選ぶことで、人口着色料、人口甘味料、保存料の接取を避けることができます。これらの物質の接取と注意欠陥多動性障害(ADHD)等の健康状態との関係性について(The Center for Science in the Public Interestと幾つかの研究調査が主張した)は異論の余地が残ります。FDAは食品着色料と子どもの行動上の障害との関係が無いことは現代の研究によって証明されている、といいます。但し、既にADHDのリスクを持っている人に対する影響はある可能性がある、ともいっています。
有機食物を接取することの短所
有機食物にはコストの高さ(有機食物の価格は普通の食物の二倍もするのだ!)に加え、以下の短所があります。
賞味・消費期限
保存料は(当然)食品を保存するために使われています。ですから普通食品は有機食品に比べずっと長持ちするのです。パンやその他の必需食品も保存料無使用のものは賞味・消費期限が来るのが早いです。
味
有機栽培された食物の方が普通の食物よりも味が美味しいだろうと思っているのであれば、それは間違いです。アメリカ国立衛生研究所が行った消費者の有機・非有機野菜の味覚調査によれば、ほとんどの食品において大きな味の違いは見られませんでした。そして例外であるトマトに至っては、驚くべきことに普通栽培の味に軍配が上がったくらいです。
有機食品を選ぶべき時と避けるべき時
支出を抑えたいですか?無鉄砲に有機食物を買いに走るのではなく、取捨選択をしたいですか?ならば、Environmental Working Groupによって「最も農薬によって汚染された12種の果実・野菜」だとされている食品に注目するのです。
りんご
ストロベリー
ぶどう
セロリ
桃
ほうれん草
パプリカ・ピーマン
ネクタリン
キュウリ
チェリートマト
スナップエンドウ
じゃがいも
これ以外にもオススメの有機食品を以下に示します。
グラスフェッドミート(加えて抗生物質無使用であると、普通栽培の肉と比べカロリーや脂肪の含有量が減り、タンパク質量が増えることがわかっています)
有機且つ放し飼いの鶏卵(病気が蔓延する狭苦しい場所で栽培される鶏と違って、サルモネラ菌を媒介する可能性が低くなります)
普通栽培の食品を買う
前述の12種の「農薬汚染食品」と反対に、「安全な」15種の果実・野菜もあります。これらは農薬使用量が最も少ない食品で、普通栽培のものを買っても全く問題がありません。
アヴォカド
スィート・コーン
パイナップル
キャベツ
スイートピー(冷凍)
たまねぎ
アスパラガス
マンゴー
パパーヤ
キウイ
ナス
グレープルーツ
カンタロープ
カリフラワー
サツマイモ
有機食品を買う際に注意すること
様々な所に買い物しに行く
有機食品は今ではあらゆる場所で求めることができます。近隣のスーパーだけでなく、大手の食料品店にも有機栽培部門があるはずです。
既に洗ってあったり刻まれていたりする有機食品は消費者にもできる作業があらかじめ成されているもので、ただでさえ高価な食品に更に高い値が付いてしまいますから、やたらに買わないほうが良いでしょう。ですから、有機栽培のベビーカットキャロットを買うのではなく半額でレギュラーサイズのにんじんを買って洗うのと切るのは自分でやりましょう。
有機であれば栄養価が高い、というわけではない、ということも覚えておきましょう。有機栽培の白パンは結局のところ白パンですし、有機栽培のクッキーにも精製糖と小麦粉は使われています。
ラベルを確認する
食品を選ぶ場合には、全般的な栄養価のほうが、成分が有機栽培であるか否かということよりも重要です。
結論
役に立つと思う場合は有機食品を買えば良いと思いますが、一番大切なことは多岐にわたる新鮮で熟した果実・野菜をカラフルに揃えることです。そして、有機栽培であれば完全に安全だ、と思い込んではなりません。有機食品は、農薬は使用されていなくとも、バクテリアに感染している可能性はあるのです。したがって購入するものが有機食品或いは普通食品であれ、肉類・鶏卵・魚介類は抜かりなく調理し、食べる前に食品は丹精に洗いましょう。