膣会陰裂傷の基礎知識~治癒、対処~

出産中の膣裂傷
出産をするというのは、まったく新しい人間が妊婦の身体から出てくるということです。そのため、経膣分娩をする際には膣を広げる必要があるということは驚くべきことではないでしょう。経膣分娩をする人(あるいは腹式分娩を行う前に長い時間陣痛が起こっている人の場合にも)は、出産後に会陰部に痛みを感じる可能性があります。赤ちゃんの頭が産道を押していることからくる圧力を考えると、会陰部(膣と肛門の間の場所)や子宮頸部に裂傷が起こるのは一般的なことです。すべての女性の半分ほどが出産後に少なくとも軽度の裂傷を経験しており、経膣分娩をする人なら誰でも裂傷が起こる可能性があります。
第1度裂傷(肌のみが裂ける)と第2度裂傷(肌と膣の筋肉が裂ける)が最も一般的な種類です。膣会陰裂傷は痛みを引き起こす可能性もあり、回復期間が延びることになってしまうかもしれません。
裂傷の回復
ほとんどの場合、裂け目は縫合する必要があります。縫合は一般的に裂傷が2cm以上の場合に必要となります。裂け目を縫合した後は、その傷が治っていくについれて縫合した場所に圧痛を感じる場合があります。
治癒にはどのくらい時間がかかるのか
手術したばかりの怪我と同じように、裂傷や会陰切開をした場所が治癒するのには通常7~10日ほどの時間がかかります。何週間か傷の痛みが続く可能性があるので、痛みが引くまでの間は無理をしないようにしましょう。
出産後の膣裂傷にはどのように対処できるか
傷の縫い目自体は時間が経てば無くなっていくはずですが、痛みを緩和し、感染症を防ぎ、治癒を促進するための産後の会陰部に関する衛生状態について、看護師の指示に従うことが重要です。会陰部を健康に保つために以下のようなことに注意しましょう。
・排尿中や排尿後は、縫合した部分にお湯をかけてきれいにしましょう
・病院が推奨する生理用ナプキンに付随してくるガーゼやペーパータオルで縫合した部分を軽くたたいて水気を切りましょう
・少なくとも4~6時間ごとに新しいナプキンに換えましょう
・自分自身を治癒させるようにしましょう。つまり、手を触れないようにするということです。縫合した場所を触ることによってどうやって治っていっているのかを常に気にしていると、治るまでの時間が長くなってしまいます
・便通を正常なものにしましょう。便通が元通りになるのが早ければ早いほど、すべてがよりよくなります(数日間かかってもいらいらしないでください)。産後最初の便通では、縫合した部分が裂けてしまうのではないかと心配になってもおかしくありません。しかし、心配しないでください。縫い目が裂けることはありません。便通を促進するために、粗質食料(全粒穀物、果物、野菜)を摂取し、水分をたくさん摂り、可能になったらできるだけすぐに、立ち上がって少し歩き回るようにしましょう。医者に軟下剤や微緩下薬の処方をお願いすることもできます。
会陰裂傷の痛みを緩和する
会陰裂傷からくる痛みを和らげるために、以下のようなことを試してみてください。
・痛む場所を冷やしましょう。痛みを和らげるために、凍らせたWitch Hazel Pads、氷を詰めた手術用手袋、冷湿布をつけたナプキンなどを試してみましょう
・痛む場所を暖めましょう。1日に3回、20分ほど温かいお湯の中で腰湯をすることや、温湿布をすることで、不快感のいくつかを和らげることができます。太陽灯に当たることも方法のひとつですが、医者の助言を得た後にのみ行うようにしてください
・痛む場所を麻痺させましょう。医者に痛む場所を麻痺させるために麻酔剤を勧められるかもしれません。麻酔剤は、スプレーから軟膏、ナプキンまで、さまざまな形態があります
・痛む場所を動かさないようにしましょう。負担をかける可能性のある運動はしないようにしましょう。横向きで寝て、長時間立ったり座ったりしないようにしましょう。会陰部の痛みがひどくなる可能性があります
・痛む場所をクッションで支えましょう。痔を患っている人向けに売られているドーナツ型の枕を使うと、座っている間にちょっとした快適さを得られるでしょう。(妊娠中に痔を患っていてまだ治療中である場合、1つの枕で2つの痛みを和らげることができます)
会陰部の治癒を促進する方法
出産予定日の1ヵ月ほど前からケーゲルエクササイズをし、会陰部のマッサージをすることで、会陰部がより柔軟になり、赤ちゃんが生まれてくるときにより広がるようになります。
産後は、できるだけ早くケーゲルエクササイズを再開して血液循環を刺激し、より早く治癒できるようにしましょう。この運動は筋緊張によい効果があり、失禁の危険性を減少させて性的快感を増やすことができる可能性もあります。
医者の助けを求めるとき
会陰部がとても赤くなり、ひどく痛んで腫れた場合、あるいはいやな臭いを感じた場合には、感染症にかかっている可能性があるので、必ず医者に連絡するようにしてください。
特別な場合
幸運なことに、米国産婦人科学会(ACOG)は、現在では、経膣分娩中の標準的なプロトコルとしては会陰切開や会陰部の外科的切開を推奨していません。しかし、まれにこのようなことが必要になる可能性があり(胎児の大きさや位置、その他の合併症などが原因)、これによって会陰部が非常に痛み、敏感になってしまいます。
自然に起こる深刻な裂傷というものは非常にまれなもので、すべての出産の2%にも及びません。このような裂傷は、直腸近くにできるもの(第3度)、あるいは実際に筋肉を裂いてしまうもの(第4度)であるため、便失禁やその他の骨盤床疾患になる危険性が高まります。場合によっては、このような裂傷が性行為中の痛みに繋がる可能性もあります。
より深刻な痛みや会陰切開をすることになってしまった場合には、腰湯、氷嚢、Witch Hazel Pads、麻酔スプレーなどの通常の裂傷に効果のある方法と同じもので治癒することができます。単純に痛む場所を空気に晒すことによってもより急速に治療することができますし、痛みもそれほど伴いません。