遺伝的保因者診断:両親が知っておくべきこと

検査方法

遺伝的保因者診断とは

簡単な血液検査により、子どもに遺伝性疾患をうつす危険性があるかどうか明らかにすることができます。以下に検査の目的と知っておくべき情報を挙げます。

はじめに

妊娠しようとしている場合でも、妊娠することを考え始めたばかりの場合でも、健康的な妊娠をして健康的な赤ちゃんを産む可能性を増やすためにできることはすべて行うと思います。このような可能性を増やすためにできることはたくさんあります。例えば、妊娠しようとする前からプリネタルビタミンを利用すること、あるいは家族の病歴を含む、自分に関する重要な健康情報を集めることなどです。医者はいくつかの検査も行ってくれる可能性があります。

医者が提案する検査のひとつに、「保因者診断」と呼ばれるものがあります。この検査は妊娠前でも妊娠中でも行うことができますが、テイ=サックス病や嚢胞性繊維症など、自分には発症していない遺伝子疾患をうつしてしまう危険性があるかどうかを調べることができます。自分の家系内で蔓延している病気を知っている場合もありますし、知らない場合もあります。いずれにせよ、1度の検査で、保因者であるかどうか知ることができるのです。では、何を、いつ行うべきなのでしょうか?その答えは人によってさまざまです。

遺伝子疾患とは何か

すべての人が両親からそれぞれ受け継いだ2セットのDNAを持っています。父親のDNAが含まれている精子が母親のDNAが含まれている卵子と受精したとき、この2セットのDNAは新しい混合物を作るために結合します。こうして赤ちゃんの遺伝子が誕生するのです。この遺伝子によって子どもの髪や目の色、身長、その他すべての事柄が決められます。

遺伝子疾患とは、片方あるいは両方の親のDNAが突然変異を起こした場合のことを指し、これによって子どもが健康問題を引き起こしやすくなる可能性があります。突然変異には無害なものもあり、病気になる可能性をわずかに増やすもの(例えば、子どもが年を取ってから糖尿病になる可能性が少し高くなるなど)もあり、深刻な病気を引き起こしたり、発達障害を持って生まれてくる可能性のあるものもあります。

遺伝的保因者になるというのはどういうことか

まれに、ある病気(ハンチントン病など)によって1つのDNAにだけ突然変異が引き起こされることがあります。しかし、嚢胞性繊維症や鎌状赤血球症などを含むほとんどの場合、2セットのDNAが両方突然変異を起こすことによって、実際に遺伝子疾患が起こります。そのため、1つのDNAのみに突然変異があった場合、いわゆる「保因者」となるのです。突然変異は起こっているものの、病気の兆候はまったくないという状態になります。

保因者診断とは何か

保因者診断では、自分やパートナーが何らかの一般的な遺伝子疾患の保因者であるかどうかを検査します。この診断は血液検査によって行われるので、腕から血液を採取するだけで済みます。自分やパートナーあるいはその両者とも保因者で、突然変異を起こしたDNAが両方とも赤ちゃんの身体の中にある場合、赤ちゃんは病気に実際にかかってしまう可能性があります。そのため、この検査ではそのようなことが起こり得る可能性を調べるのです。

保因者診断の対象者

誰でも遺伝子疾患の保因者になる可能性がありますが、病気の原因となる遺伝子の突然変異が起こりやすい人がいます。米国産科婦人科学会(ACOG)は、妊娠を考えている場合、あるいは既に妊娠している場合でも、自分やパートナーの家系に以下に該当する人がいれば、特定の病気の検査を受けることを勧めています。
・アシュケナージ系ユダヤ人:テイ=サックス病、カナバン病、家族性自律神経異常症、嚢胞性繊維症
・アフリカ、地中海、東南アジアに住んでいた:サラセミア、鎌状赤血球症
・ヒスパニック系でない白人:嚢胞性繊維症
・家系:家系に遺伝子疾患にかかった人がいる場合、その病気に対する検査をした方がよいでしょう

保因者診断によって検査できる突然変異や病気の数が増えているため、米国遺伝カウンセラー学会は、子作りを考えているすべての夫婦に、少なくとも医療従事者のもとで保因者診断を受けるように勧めています。しかし、学会は、検査を受ける前に医師や遺伝カウンセラーと相談をし、検査の目的と結果が示すことについて必ず理解しておくことも推奨しています。大事なことは、保因者診断が自分たちの役に立つかどうかについての詳しい判断はカップル自身に委ねられているということです。

保因者診断の実施時期

遺伝的保因者診断は、妊娠を考えている段階にいるとき、妊娠しようとしているとき、妊娠検査で陽性が出たときのいずれの場合でも実施することができます。つまり、検査を受けたいと思っているならば、検査を実施する段階が早ければ早いほど、突然変異が起こっていると分かった場合に医者が何かしらの対処をすることができる可能性が高くなります。

保因者診断の実施方法

血液サンプルが採取されると、検査されている突然変異を見つけられるように、研究室で血液細胞からDNAが分離されます。ほとんどの病院が保因者診断をするために血液サンプルを病院とは別の研究室に送らなければならないため、結果を得るには1~2週間ほどかかる可能性があります。

一般的に、母親が最初に検査を受け、病気に関連した突然変異が起こっているという結果が出た場合、その後父親も検査を受けることになります。しかし、遺伝的な突然変異があって女性が既に妊娠している場合など、時として医者が両親に同時に検査を受けることを勧める可能性もあります。

どんな病気を検査できるのか

現在の保因者診断では多くの病気を検査することができます。また、科学の進歩に伴って検査できる病気の数も毎年増えてきています。以下に検査することのできる最も一般的な病気の例をいくつか挙げます。
・αサラセミア
・βサラセミア
・嚢胞性繊維症
・家族性自律神経異常症
・ファンコーニ貧血C群
・脆弱X症候群
・ゴーシェ病
・糖原病Ⅰa型
・メープルシロップ尿症ⅠA/ⅠB型
・ニーマン・ピック症A型/B型
・鎌状赤血球症
・脊椎性筋萎縮症
・テイ=サックス病

保因者診断に興味がある場合は、自分やパートナーのリスク要因、また病気についての情報の使い方を慎重に考えた上で、どの突然変異を検査したいのか決めましょう。医療従事者や遺伝カウンセラーと相談をすることは、この段階で役に立ちます。

検査で陽性だった場合に胎児が病気になる可能性

自分とパートナーが両方とも検査で陽性となり、同じ遺伝子に関する突然変異の保因者であると診断されたとしても、赤ちゃんがその病気になる確率は4人に1人、つまり25%ほどです。両親のどちらも2セットのDNAをもっており、一方のDNAが突然変異の起こったものだったとしてももう片方は健康なDNAであるためです。両親のいずれかあるいは両方から健康なDNAを受け継いだ場合には、赤ちゃんが病気になることはありません(ただし、保因者になる可能性はあります)。

保因者診断を受けると、医者が診断できるような一般的な病気に自分の赤ちゃんがかかることはないだろうということが分かるかもしれません。しかし、現在の検査ではすべての突然変異を見つけることができないということを理解しておいてください。科学は常に進歩していますが、医者でもまだ診断することができないような病気は山ほどあるのです。

結果が陽性だった場合にできること

保因者診断で最も情報を得ることができる時期は妊娠する前です。自分やパートナーが検査で陽性の結果が出て、遺伝子疾患の保因者であった場合、自分の選択肢について不妊治療専門医と相談することができるかもしれないからです。例えば、現在の技術によって、体外受精で作られた胎芽のDNAを検査し、特定の突然変異があるかどうか調べることができます(着床前遺伝子診断)。

既に妊娠した後などに保因者診断を受けた場合、陽性の結果が出るということは、胎児が影響を受けているかどうか調べるためにさらなる検査を受ける必要があるということを意味している可能性があります。

初期の段階で保因者診断を受けるかどうかについて話し合う際には、結果が陽性だった場合にどうしたいかについて話すことも忘れないでください。診断を行うことを決めた場合、陽性の結果が出るということは、前もってさまざまなことを考えたり金銭面の計画を立てたりする際の貴重な参考事項となります。赤ちゃんが生まれてくる前に、病気に対する早期治療を行うことにも繋がるかもしれません。

遺伝子カウンセリング

保因者診断を行う前に遺伝子カウンセラーに相談していなくても、ほとんどの医療従事者がカウンセラーを紹介してくれます。遺伝子カウンセラーは検査の結果を説明してくれ、自分が持っている情報を元に何ができるかを決める手助けをしてくれるのです。より多くの検査が受けられるようになっているので、その検査一つ一つが何を意味しているのか理解することは困難であるかもしれません。遺伝子カウンセラーは、熟練した知識とともに、結果を理解するための情報の取捨選択を手伝ってくれるでしょう。

結果が非常に分かりやすいもので、産科医が遺伝子検査で十分な結果を得られた場合には、産科医自身がこのカウンセリングを行うことがあります。しかし、何かあいまいなことがある場合や他の人と自分の選択について話し合いたい場合には、いつでも遺伝子カウンセラーのもとへ相談に行くことができます。ほとんどの病院には遺伝子カウンセラーが配属されており、カウンセリングは保険の保障対象です。

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