にきびは一生続くわけではないが、老化のサインを遅らせるかもしれない

にきびについて
「にきびだらけの十代の子は完璧な肌で最後に笑う―にきびに悩む人は長寿の傾向があるという研究が発表された」とTelegraph onlineは報道しています。
しかしこの報道は、この研究は細胞の老化に関するものであり寿命についてではないということを誤解しています。
肌の病気になったことがない人よりもにきびがあった人のほうが老化が遅いということに、皮膚科医は数年前から気づいていたと研究者は述べています。
老化の兆候としては、皺ができたり肌が薄くなることが挙げられます。この新しい研究は、なぜそのようなことが起こるのかを調べました。
研究者らは、白血球を分析することにより、にきびがあると回答した女性のテロメアは長いことを発見しました。テロメアとは、染色体の末端にある「帽子」です。細胞は繰り返し複製しますが、このプロセスの結果での細胞劣化からテロメアは保護すると考えられている。Telegraphはテロメアを、ほつれを防ぐための靴ひもの端の硬い部分に例えています。
この研究では、テロメアが長いことがにきびの原因であることは示されていませんが、2つの間に関連性がある可能性はあることが示されています。
しかしこの研究では、テロメアが長い女性は肌の老化の兆候が少ないのか、それとも寿命が長いのかについては調べていませんでした。にきびが寿命に影響を与える可能性があるという説には根拠がありません。
この論文は誰が執筆しましたか?
この研究は、Kings College LondonとNew Jersey Medical Schoolの研究者によって行われ、Wellcome Trust、Medical Research Council、欧州連合およびNational Institute for Hearth Researchから資金提供を受けました。査読された上でJournal of Investigative Dermatologyに掲載されました。
Mail Online、ITV News、Daily Telegraph、BBC newsbeatはこの研究の要旨を正確に把握して、「にきびはテロメアの長さと関連があり、にきびがあった人は年齢を重ねても若く見える傾向があることを説明できるかもしれない」と報じました。
Telegraph onlineだけが、にきびは長寿に貢献するかもしれないと報じました。この考え方は、研究でも研究者からのプレスリリースでも言及されていません。
これはどんな研究でしたか?
この研究では、コホート研究と症例対照研究の2つの方法が用いられました。
研究者らは女性のグループの中から人生のどこかの時点でにきびがあった人を探し、白血球からテロメアを取り出して、にきびがあったことがないと回答した女性のテロメアとを比較しました。
また、にきびがあった女性と、同年齢で肌の病気になったことがないと回答した女性との遺伝子発現を比較する症例対照研究も行いました。
このタイプの研究は、テロメアの長さやにきびなどの因子間の関連性を特定することはできますが、一方が他方の原因であることを証明することはできません。
回答者はどのような人でしたか?
研究者らは、12,000人の双子が登録し、老化や加齢に伴う病気の遺伝的および環境的要因を研究するために使われるTwinsUKから1,205人のボランティアを募集しました。主に女性が登録されているため、男性は研究から除外されました。
病気の原因にの遺伝的要因があるのではないかと考える研究者は、どの要因が環境に依存し、どの要因が血縁者に共通の遺伝子に依存するのかを特定するのに役立つので、被験者を双子にすることが多いです。
研究者らは回答者に、今までににきびがあったかどうか尋ねました。回答者に白血球のサンプルを提出してもらい、テロメアの長さを分析しました。
年齢、双子の関係(一卵性か二卵性か)、体重、身長を調整した後、研究者は2つの群の平均のテロメアの長さを比較しました。
テロメアの長さの調査とは別に、研究者は、年齢を調節したにきびのない双子195人とにきびのある39人の皮膚生検を行い、全ゲノムデータを用いて遺伝子の発現(「スイッチ」がオンになっているかどうか)を2グループ間で比較しました。
主な研究結果はどのようなものでしたか?
数値を回答者の年齢や体重、身長で調整した後で比較すると、にきびがなかった女性のテロメアよりも(平均6.92 +/- 0.02kb)、にきびがあった女性のほうがテロメアが平均して長い(平均7.17 +/- 0.64キロバイト[kb])ことがわかりました。
テロメアの長さはテロメア内のDNAの6塩基対配列の数を参照して、キロベースで計算されます。
にきびのなかった女性のほうがにきびのあった女性よりも多く発現していた遺伝子は、1つだけ(ZNF420)でした。
研究者はどのように結果を解釈しましたか?
研究者は、にきびがある女性のテロメアが長いということは、「皮膚の老化が遅れているのは老化が減っていることによるものだ」ということを示唆しているとしています。つまり、長いテロメアが細胞の劣化を防ぐため肌の老化が遅くなっているのではないかということです。
にきびがあった人には規制遺伝子ZNF420があまり発現しないということは、にきびがあった人はその遺伝子に関連した特定のタンパク質をより多く産生している可能性があることを示唆しています。
結論
にきびは、10代やそれ以降ににきびができる人にとってはかなりの悩みの種になることがあります。にきびがあった人は年を取ってもしわや肌が薄くなるといった肌の老化の兆候が少ない傾向があることを知れば、ある程度の慰めになるかもしれません。
テロメアの長さとにきびとの関係は研究者にとって興味深いですが、他の人にとってはそれほど重要ではないでしょう。にきびがあった人は肌の老化が遅いことの説明の一部になりえます。また、にきびに遺伝的要素があるという理論がもっともらしくなります。
しかし、この研究では、にきびがあった人と長いテロメアを持つ人は実際に肌が若いかどうかはわかりません。
この論文は編集者への手紙として出版され、一般的な研究論文よりもはるかに短いので、研究の実施方法の情報の多くは得られません。
研究対象になったのは女性だけなので、男性にも当てはまるかどうかはわかりません。また、医学的に診断されたというよりは、女性自身がにきびがあったと自己判断しているので、各々のにきびの定義には多少の違いがあるかもしれません。