交通量の多い道路の近くに住む人は、認知症になりやすい!?

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これまでの研究で、大気汚染と認知症には関係があることが判明しています。

さまざまな病気を引き起こす大気汚染

「幹線道路の近くに住む人は痴呆症になる確率が高くなる」とイギリスのBBCが報じています。カナダの調査では、交通量が多い道路から50m以内に住んでいる人は、300m以上離れたところに住んでいる人よりも認知症を発症する可能性が7%高いことがわかりました。

この結果は、カナダで最も人口の多いオンタリオ州の11歳以上のすべての住人を追跡調査して得られたもので、研究者は、同じ傾向が2つの他の神経系の病気(パーキンソン病および多発性硬化症)でも見られるかどうか調べましたが、2つの病気との関連は見つけられませんでした。

680万人を対象にしたこの研究は、交通量の多い場所の付近に住むという生活環境は認知症に影響するいう証明を裏付けています。また、その前年の論文でも、大気汚染に起因する微粒子が人間の脳に侵入し、認知症を引き起こしているという証拠を挙げています。

これらの研究によって、大気汚染が認知症の増加の原因であるということを完全に証明することはできませんが、科学的な観点から、その可能性は考えられます。交通に起因する大気汚染は、窒素酸化物をはじめとする有害な毒素に曝されることになります。

毒素への暴露リスクをなくすために政治家が取り組んでいることは、確実に議論の余地が残されています。
交通量の多い道路の近くに住んでいる人は、特に都市部の場合、個人でできる対策はほとんどありません。しかし、歩道の端を歩くようにしたり、公園で運動すれば、多少なりとも大気汚染の対策になります。

大気汚染と認知症の研究は、どんな機関によってなされたのか?

大気汚染と認知症の関連を探る研究は、米国オンタリオ州の公衆衛生研究所、臨床評価科学研究所、トロント大学、ダルハウジー大学、オレゴン州立大学、ヘルスカナダ、ハーバード・スミソニアン天文学センターにより、オンタリオ州公衆衛生と臨床評価科学研究所のバックアップを受けて行われ、研究結果は専門誌のThe Lancet誌に掲載されました。

この研究は、英国のメディアでも大々的に報道されました。専門家は「この結果で大気汚染が認知症の原因とは言い切れない」と注意を促していますが、熟読する価値があります。

どんなタイプの研究だったのか?

この研究は、オンタリオ州に住む人を12年間追跡し、研究が始まる前の5年の間、幹線道路からどのくらい近い距離に住んでいたかを調べるところから始まり、それから、認知症、パーキンソン病、多発性硬化症の症状を追跡調査しました。

この種の研究は、混雑している道路への接近と病気になる関連性を示すことはできますが、それ以外の証明はできません。

研究の詳細

研究者は、2001~2012年にかけ、カナダで最も人口の多い州オンタリオ州の20~85歳の680万人の成人の健康状態を研究しました。

55~85歳の人における認知症およびパーキンソン病、20〜50歳の人に多発性硬化症(通常、認知症およびパーキンソン病より早期に発症する)の診断結果を得ました。

研究開始5年前にあたる1996年に対象者が住んでいた地区を郵便番号ごとに記録し、幹線道路から50m、50〜100m、101〜200m、201〜300m、300m以上に分類しました。

カナダの健康データベースの協力で対象者の健康状態を把握し、主要な幹線道路は、「中〜大の交通量がある大通り」と定義し、また、以下のような混乱要因を考慮して数値を調整しました。

・年齢と性別
・既存の病気(既に認知症、パーキンソン病またはMSの人は対象外)
・都市部や農村部に住んでいたかどうか
・亜酸化窒素(NO2)や小粒子状物質(PM2.5)への暴露経験

喫煙、教育水準、運動、社会的地位など、痴呆に関するリスク要因に関する個人情報を持っていなかったため、平均所得など近似値レベルの数値を使用しました。

また、神経科医への受診状況や、多発性硬化症に影響があるため、どれくらい南に住んでいたか、もしくは北に住んでいたかに着目しました。

基本的な結果は?

680万人のうち、半分以上は幹線道路から200メートル以内に住んでいました。 12年の研究で、痴呆の診断結果が、MS、パーキンソン病よりも多く出ました。

・243,611人が認知症を発症
・31,577人がパーキンソン病を発症
・9,247人がMSを発症

研究者は、「どこに住んでいたか」とMS、パーキンソン病との関連は見つけることができませんでした。しかし、発症数が少ないため、全体像を掴むことが困難だったとも言えます。

一方で、認知症は、住んでいる場所と関連がありました。幹線道路から300m以上離れた生活環境に比べ、

・50m以内に住んでいる人はリスクが7%増加
・50〜100m以内に住んでいる人は、リスクが4%増加
・101~200m以内に住んでいる人は、リスクが2%増加

200メートル以上離れた生活環境では、リスクは増加しませんでした。他の要因を見てみると、都市部に住む人はより危険にさらされていました。しかし、大気汚染(NO2とPM2.5)のレベルが、認知症の発症リスクを高めることは証明できませんでした。

研究者はどのように結果を解釈しましたか?

研究者は、研究結果に対し、「認知症の発症と道路の関連に関する意義ある洞察で、“7%増加”は小さい数字かもしれないが、幹線道路から出るわずかな影響は、健康に多大な負担をかける」と述べています。

結論

認知症は、長生きするにつれ、付随して大きくなってくる問題です。遺伝、生活習慣、生活環境など、さまざま要因が影響しているようですが、その発症メカニズムは、まだ正確には判明していません。

この研究は、大気汚染や騒音のある幹線道路の近くに住むということは、認知症に影響を及ぼすという証明の裏づけとなっている感があります。

しかしながら、注意すべき事がいくつかあります。
・一時点における一箇所の調査であり、12年を越える大気汚染、道路騒音の被曝の影響がどれくらいあるかは不明。
・個人の生活習慣が結果に影響しているのかは不明。
・診断を受けなかった人もいる。

全般的に、この研究は、公害と健康に対する非常に重要な研究であり、政府と保健機関は、大気汚染の対策を計画したり、道路や住宅を計画する際に価値があると言えます。

個人レベルで言えば、幹線道路の近くに住んでいる場合、できることはほとんどありません。しかし、舗道からいちばん離れた所を歩ったり、公園で運動することで、リスクを減らすことはできます。

完全に認知症を予防する方法は存在しませんが、発症を遅らせる方法は、以下のようにいくつかあります。
・禁煙
・飲酒を抑える
・運動する
・健康的な食事
・血圧に注意する
・メンタルケア

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