自己の尊厳の克復

治療方法

誰しも、自信が持てず自分が嫌になることはあります。
自尊心の低い状態が長期に渡って続いてしまうと、精神的な健康や生活に問題が生じます。
自尊心とは、人が自分自身に対して抱いている考えや評価です。人が十分な自尊心をもっているときは、自分自身や生きることそのものに対し肯定的な意識をもつことができます。自尊心が高いと、人生の山や谷により上手に対応できるものです。
自尊心が低いとき、ひとは自分や自分の人生にネガティブで批判的なアプローチをしてしまいます。また、人生において挑戦する意欲も失われます。

低い自尊心の所以

自尊心の低い状態は多くの場合、幼少期にはじまります。人は、教師、友人、兄弟、親、メディア、といったものから肯定的・否定的な大量の情報を得ます。そして困ったことに、ダメだ、未熟だ、足りていない、といった情報ばかりが頭から離れなくなるのです。
また、他人からの期待、或いは自分の自分自身への期待に応えるのは困難なことだと感じることがあるのかもしれません。
ストレス、重病や死別といった辛い出来事は自己評価に対しネガティブな影響を与えます。人格もまた影響します。純粋に、否定的な思考に陥りやすい性質である、という人もいますし、自己に対して高すぎる目標を定めてしまう人もいます。

自尊心の低さがもたらす問題

自分はダメだ、できない、といった思考の何が問題であるかというと、人がまるでそれが真実であるかのように行動してしまうということです。「自己評価の低い状態というのはしばしば人の行動を左右し、本当にできない、不得意だ、ということを証明する方向の振る舞いをさせてしまうことがあります。」とグラスゴー大学心理社会学・心理学教授のクリス・ウィリアムズは言う。
自己評価が低かったり自信が無かったりするとき、ひとは自分自身を社会から隔絶し、新しいことや難しいことに挑戦することを避けようとします。
「短期的に言えば、難しいことや挑戦を避けるのはとても楽ですし、安全でもあります。」ウィリアムズ教授は言う。「これが長期化すると、心に根ざしている恐怖感や不信感がより強固になるので、避けてきたことが裏目に出るわけです。逃げることが、上手くやっていく上での唯一の方法だ、と自分自身に教え込んでしまうのです。」
自尊心の低い状態は精神的健康を害し、心配性、鬱といった問題を引き起こします。苦悩の捌け口として喫煙・飲酒といった望まない習慣が身についてしまう場合もあります。

自尊心を高く持つ

自己の評価を一気に押し上げるにあたって、自分に対して抱いているありとあらゆる否定的な思い込みを特定し、立ち向かわねばなりません。
「自分が信じている事柄を見直して、それがどこからきたのか、なぜ自分はそれを信じているのか、を考えなければなりません。」ウィリアムズ教授はいう。「そうしたら今度は、それらが根拠の無い思い込みだということを立証するものを積極的に収集し、書き出します。」
自分自身に対して持っているネガティブな考えを特定できるようになりましょう。例えば、「自分は頭が悪すぎる」故にこの仕事には就けない、といったものや、自分のことなんて「誰も気にかけていない」といったことです。このような否定的見解を用紙や手帳に書き出しなさいとウィリアムズ教授はいいます。こういった思考をいつ持つようになったのか自分に問うてみてください。
次に、その否定的な思い込みが真実ではないと立証するものを書き始めましょう。例えば、「自分はクロスワード・パズルが非常に得意だ」、「自分の妹は、おしゃべりするために毎週電話をかけてくれる」といった具合です。真実であると自覚している、肯定的なことも書き出していきましょう。例えば、「自分は思慮深い」、「自分は料理が上手だ」或いは「自分は人に信頼されている」といったことです。また、他の人が教えてくれる自分の長所等も書いておくのもよいでしょう。
これらを五個以上をリストアップして、そこに定期的に長所・強みを足していくことをしてください。また、このリストは目に見える場所においておくとよいです。そうすることによって、自分は「イケテル」ということをいつでも思い出せるでしょう。
「他のみんなと同様に自分には短所もあれば長所もあるのだ、ということに気づいてもらうことが大事なのです。こうして、いずれ彼らは自分の強みを自覚できるようになるのです。」とウィリアムズ教授はいう。
「幼少期に起きた出来事が原因で、自己評価が低くなっているのかもしれません。」彼は言う。「我々はしかし、何歳になっても自分に対する新たな見方を育て、作り出すことはできるのです。」

尊厳を克復する方法

自分自身を好きになるための簡単な方法をいくつか以下に示します。

強みを知る

私達は皆、必ず何かを得意としています。それは料理や歌唱であるかもしれませんし、パズルや友達づくりかもしれません。また、得意であることに従事することは、とても楽しいことでもあり、気分を回復させてくれるものです。

良好な関係を築く

一緒にいると自らの気分が落ち込んでしまう傾向のある相手とは、付き合う時間を減らすようにしましょう。また、彼らの言動を自分がどう受け止めているのかを伝えてあげてもいいかもしれません。ポジティブで、相手を理解してくれるような人ととの関係を構築しましょう。

自分を大切に

ウィリアムズ教授はいいます。「自分にたいして思いやりを持ちなさい。これは自分に対して批判的な態度をとってしまっていると感じるときに、自分に優しくしなさい、ということです。友達が同じような状況になっているときに、なんという言葉をかけてあげるか考えてみてください。私達は、自分自身よりも他人に対して遥かに良い助言をあげられることがあるものです。」

アサーション・トレーニング

アサーションとは、他人の意見や要求を尊重した上で、彼らにも自分に対しその逆を期待し、自信をもってはっきり自分の考えを述べる、ということです。
一つの技として、アサーションを実行できている人を観察して、同じように振舞う、ということがあります。「他人になりすます、ということではありません。」ウィリアムズ教授は言う。「尊敬できる人からヒントをもらい、徐々に真の自分を引き出してあげる、ということなのです。いきなり『俺はクリス・ホーイ(自転車競技選手)になる!』と言いなさい、というわけではありません。でも、久しぶりに自転車を出してきてひとっ走りいってくる、ということならできるでしょう。」

「嫌だ」と言う

自尊心の弱い人に多く見られるのは、たとえ本当は嫌でも相手にそれを伝えられないことです。これは自己への負担を肥大させるので、苛立たち、鬱に陥るリスクをもっています。
「大抵の場合、嫌だと伝えることが人間関係を壊すことはありません。」ウィリアムズ教授は言う。「壊れたレコードのように繰り返し同じ事を言ってもいいのですよ。理解してもらえるまで、言い方を変えたりしながら拒否し続けましょう。」

挑戦すること

私達は誰しも何かをするのが不安になったり怖くなったりするときがあります。十分な自尊心を持っているひとは、このような感情のせいで新しいことに挑戦できなくなる、といったことがありません。
エキササイズ教室に参加する、或いは社交的な場に出かける、といった目標を定めるとよいです。そういった目標を達成することで自尊心は強くなっていくのです。

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