ドリンク・スパイキングとデート・レイプ・ドラッグ

その他

ドリンク・スパイキングとは

毎年多くの人々が、「ドリンク・スパイキング」の被害を受けていると考えられています。ドリンク・スパイキングとは、誰かの飲み物に対し、その人本人に知られないようにアルコールや薬物を注入・投入することです。その中で、いわゆる「デート・レイプ・ドラッグ」が、性的暴行の前にドリンク・スパイキングのための薬物として用いられるケースもあります。

海外で被害に遭うケースがはるかに多く、また羞恥心や記憶喪失などの理由で報告されないままになっている被害も多く存在します。

ドリンク・スパイキングは違法なのですか?

ドリンク・スパイキングは、その被害者から金品を盗む意図で行われたり、被害者を襲うためであったり、あるいは単なる悪ふざけとして行われることもあります。

たとえ理由が何であろうと、ドリンク・スパイキングは違法となります。

また被害者に対して暴行や強姦、強盗を働いた場合には、単純なドリンク・スパイキングに比べはるかに重罪となります。

性的暴行とは、被害者の積極的な同意なしに行われる行為のことを指し、その被害者が自主的に薬物やアルコールを摂取した場合においても、性的暴行に当たります。

ドリンク・スパイキングにはどんな物質が用いられるのですか?

ドリンク・スパイキングに用いられるものとして最も多いのが、アルコールです。

このアルコールが飲む人本人に知られないままにソフトドリンク(ノンアルコール飲料)に加えられたり、あるいはそのアルコールについて、シングルでなくダブルが用いられることがあります。

ドリンク・スパイキングに用いられる薬物は、必ずしも性的暴行に用いられるわけではありませんが、しばしば「デート・レイプ・ドラッグ」と呼ばれています。

例えば以下のような薬物が、ドリンク・スパイキングに用いられる例として挙げられています。

・γ-ヒドロキシ酪酸(GHB)およびγ-ブチロラクトン(GBL)
・トランキライザー(精神安定剤、ほとんどの場合バリウム(ジアゼパム)やロヒプノールを含むベンゾジアゼピン)
・ケタミン

デート・レイプ・ドラッグは、アルコールと混ぜて用いられた際には極めて強力な麻酔効果を生み出すため、特に危険なものとなります。極端な例では、投薬された被害者が昏睡状態に陥ったり、最悪の場合死に至ることもあります。

デート・レイプ・ドラッグは粉状のものから錠剤型、液状のものまでその形態は多岐にわたり、また必ずしも異常な味や匂いを持っているとは限りません。

専門機関によるウェブサイトなどを確認して、違法成分やその効果について情報を得ておきましょう。

自分に対してドリンク・スパイキングが行われたと知るにはどうすれば良いのですか?

ほとんどのデート・レイプ・ドラッグは15~30分以内にその効果が表れ、ドラッグによる症状はその後数時間続きます。しかしながら、意識を失ってしまった場合には、その効果を完全に知ることは困難です。デート・レイプ・ドラッグによって引き起こされた症状は、夜睡眠をとった後でもまだ感じられることがあります。

症状はそのスパイキングに用いられた物質によって変わりますが、通常は以下のようなものが挙げられます。

・抑制力の低下
・集中したいときや話しているときに障害が生じる
・平衡感覚の喪失、および身体を動かす際に困難が生じる
・視界がぼやけるなどの視覚的障害の発生
・記憶喪失や「ブラックアウト(瞬間的な失神)」
・(寝ていた場合)特に目を覚ました後など、頭に混乱が生じる
・パラノイア(偏執病、他人に対して恐怖感や不信感を持つ精神的症状)
・幻覚症状(実際には存在しないものが見える、聞こえる、あるいは触れられるなど)または「体外離脱」の体験
・吐き気および嘔吐
・無意識状態

ドリンク・スパイキングの被害を回避するには

もしあなたに対してドリンク・スパイキングが行われた際に、一部のドラッグ(GHB)に関しては普通とはわずかに異なる味(塩辛い)や匂いを有していますが、ほとんどの場合、飲み物に見た目や匂い、味の点で違いに気づくことはできません。

もし変な気分になったり、あるいは異様に酔っ払ってしまっている場合には、すぐに助けを求めてください。

短時間に速いペースで多くのアルコールを飲むことは、ドリンク・スパイキングや性的暴行による被害のリスクを高めることがあります。

アルコールの飲みすぎは避けるようにしてください。特に、知らない・馴染みのない場での飲みすぎは危険です。自己のコントロールを失い、リスクの高い決断をしたり、危険に対する意識が希薄になったりすることがあります。

また、以下の方法が、ドリンク・スパイキングによる被害を防ぐのに有効です。

・飲み物をその場にほったらかしにして席を離れることは決してせず、友達の飲み物にも常に注意を向けておいてください。
・知らない人から飲み物を受け取らないでください。
・瓶などで密封された飲み物だけを選ぶようにし、パンチボールやグラスのカクテルは避けてください。
・出会ったばかりの人に住所を教えないようにしてください。
・もし自分の飲み物に何らかの手が加えられていると思った場合には、それは飲まずに、すぐに信頼できる友達や近親者に報告してください。
・出かける前に、自分がどこへいくのか、何時ごろに帰宅するつもりであるのかを誰かに伝えておいてください。
・帰るまでの道のりを事前に計画立てておいてください。
・高価な備品や窃盗のターゲットとなり得るようなものは、身に着けないようにしてください。
・もしあなたが海外旅行をしているところなのであれば、その周辺地域に注意を払い、どこで助けを得られるのかを把握しておいてください。

飲み物に対し、ドリンク・スパイキングのリスクを減らすため、瓶に蓋をするためのプラスチックの栓を提供しているバーもあります。しかしながら、それによって後からドリンク・スパイキングでアルコールが加えられた飲み物を、あなた自身が避けることはできません。

また、自分の飲み物に対して検査を行うことができるキットを有するところもありますが、この検査が必ずしも全ての薬物に対応しているわけではなく、役に立たないこともしばしばあります。

もし自分の飲み物に対してドリンク・スパイキングが行われたと思った場合には、どうすべきですか?

まず、あなたが完全に信頼できる人物に伝えてください。

・親友
・近親者
・医療専門家
・警察

もしあなたと一緒にいる人が誰もいないのであれば、信頼できる人を呼び、安全な場所へ避難してください。もし自分の携帯電話が盗まれていた場合には、電話を使うことができるか尋ねるようにしてください。

もし緊急の助けが必要な場合は、110や119等の緊急電話番号に電話してください。知らない人から助けを得る際には慎重にし、見知らぬ人物と一緒に場を離れることはしないでください。

気分がすぐれない場合には、信用できる人物があなたのことを最寄の緊急救護施設まで連れて行ってあげてください。医療スタッフに、あなたがドリンク・スパイキングの被害にあった可能性があることを伝えてください。

信頼できる友人あるいは近親者に、あなたの家まで連れて行ってもらい、体内からドラッグの影響が完全に消えるまで一緒にいてくれるよう頼んでください。

出来る限り早く警察に通報してください。その際、あなたの血液や尿のサンプルの提供を要される場合があります。

ほとんどの薬物は摂取後72時間以内には効果が消えます(デート・レイプ・ドラッグのGHBの場合は12時間以内に体内から影響が消える)ので、出来る限り早く検査を受けることが重要です。

もしあなたが海外にいる場合には、旅行代理店から担当を受けた責任者や地域の医療サービスから助けを得たり、あるいはそのバーやホテルマネージャーに頼んで地元の警察に通報してもらってください。あるいは日本大使館への連絡先を確認し、電話するようにしてください。

ドリンク・スパイキングに伴う身体的暴行および強盗

もしあなたが身体的暴行を受けたり、強盗の被害にあったり、あるいはその両方をされた場合には、警察に通報してください。その際警察から、その加害者について以下のような情報を求められます。

・その加害者は知っている人物か
・どのような外見だったか
・その襲撃を引き起こした環境
・襲撃された際に何が起こったか
・何が持ち去られたか

警察はあなたの負傷に関する記録を保持しておく必要があるため、あなたは医療を受けておく必要があることがあります。

もしドリンク・スパイキングに続けて性的暴行を受けた場合には

もしあなたが性的暴行の被害にあった際には、出来る限り早く医療手当てを受けてください。その際、あなたが性感染症(STI)に感染しているか、または妊娠しているかを確認する検査を受ける必要があることがあります。

もししたくない場合には、暴行についてすぐに警察に通報する必要はありません。

性的暴行を受けた際には、以下の場所にコンタクトを取り、アドバイスや医療、紹介、法医学検査などの専門的サービスを受けることが可能です。
・性暴力救援センター(SARC)
・開業外科医および開業看護師
・性暴力被害者への支援を行っている慈善団体
・病院などの緊急救護施設
・性病を扱う機関やサービス
・避妊クリニック
・若い人を対象としたクリニック・サービス

法医学検査による証拠は、暴行について警察に通報するかどうかを決めている間にも保管してもらうことが出来ます。

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