顔面の変形に対する対処の方法について

奇形とともに生きる
社会環境のなかで自信を持ち、他人の反応に対してどう対応するかを学ぶことは、顔の変形を持つ人にとって、非常に重要なスキルになります。
他人は好奇な視線を送るのが普通で、展示品や見世物であるかのように感じます。他人の目や関心は、苦痛をあたえる「対処が難しい」ものなのです。
困難な状況を避けたい気持ちは十分に理解できます。しかし、挑戦を避ければ、恐怖は消えず、増大するだけです。その結果、自信はさらになくなり、人生を無為に過ごすことになります。
イギリスで変形した顔を持つ人をサポートする慈善団体「Changing Faces」のヘレン・スミスはこう言います。
「あらゆる形の社会環境のなかで、自分への自信と信頼を持ち、そして、他人の反応に対して効果的なスキルを学ぶことが重要です。学ぶことで、より自信を持って自己表現できるようになります。自信がつくほど、相手の反応もよりポジティブなものに変わっていきます。」
他人と会い、外見のことを聞かれた時、対応の仕方を覚えていれば、非常に役に立ちます。以下のヒントをお読みください。
明るい雰囲気を心がける
コミュニケーションは話すことだけではありません。その人自身の目や対応の仕方でどれくらい気持ちが伝わるか考えてみてください。
しっかり目をあわせること、しっかりと握手すること、名前をきちんと覚えていること、堂々と話すこと、背をまっすぐ伸ばし、肩をリラックスした状態にすることは、すべてのポジティブな形です。対応の仕方を学び、練習することで、より自信が感じられるでしょう。
「状況やそのときの気分に応じて、さまざまな対応をマスターしているのが重要です。例えば、傷跡を説明したくない場合もあります。」とスミスは言います。
以前にうまくいった対応を思い出しながら、、違う反応をしたほうが良かったかもしれないか考えてみましょう。
自分の外見について意見を聞いてみる
さまざまな対応を身につけるために、いろいろな方法に取り組んでみてください。他人が外見のことに触れたとき、その場で最も適している答えを出すことができるようになります。
相手がおどおどしているようなら、外見のことを自ら話すことで、相手が安心することもあります。安心させれば、状況もよりコントロールしやすく、外見の話題が出ることに対する不安感も止めることができます。
ある女性は、このアプローチが美容院で役に立ったと言います。 「いつも髪の毛をおろすんです。外見と傷跡を覆うことで、隠してくれるから。だから、美容院に行くのはいつもすごくストレスでした。髪の毛を引っ張って自分の顔を見たとき、どう反応するか怖くて不安でたまらなかったからです。それで、ある日、10年くらい前ですが、こんな自分はもう止めると決めました。そして、マニュアルが必要だと判断したのでコメントを考えました。笑顔で担当してくれる美容師に話すんです。”自分の顔の左側にはたくさんの傷跡があるけど、心配しないでください。痛みはないので。驚いて欲しくなかったので、はじめに話しました」
女性は、イニシアチブを取ることで場の緊張状況から不安がなくなることをを実感しました。 「相手の反応は自分をずっと安心させてくれるものでした。顔について聞かれることはなかったんです。美容院に行くことは、もう恐怖ではなく、うれしいことに変わりました」
凝視への対応方法
顔について尋ねてきても、敵対的であると思わないでください。大部分は、好奇心だけでなく、心配しています。
視線を止めて欲しいと思ったら、振り返り、笑顔で視線を交わしてください。うまくいけば、微笑んで、遠ざかります。
凝視が続く場合、眉を上げて、視線を合わせ、気づいていることを示します。
何か言うことに決めたなら、いくつかのアプローチがあります。以下を参考にしてください:
“こんにちは。” (見ていることに気付いたことを知らせます。)
“凝視はやめてもらえるとうれしいです” (しっかりした、かつ率直な回答です。)
“自分の外見が気になっているようですが、自分は気にしていないので。” (自信を持ち、しっかりと相手の方に問題があることを伝えます)
“憧れの目で見られると困ります” (自信を持ってユーモラスに)
“前にどこかで会いましたね。目を離さないので” (ユーモラスに行動が不適切であるという点を明確にする)
「議論や討論になりうるものではなく、迅速かつ効果的な答えを準備する方がよいでしょう」とヘレンは言います。
対処スキルを練習で磨く
「対応を忘れることが心配な場合、書き留めて財布やバッグに入れておくと、思い出す役に立ちます。
同じ質問に対してさまざまな答えを考えるのは、話を終わらせたり、会話を前に進ませるのに役立ちます。例えば:
「ずっと前に火傷しました。火傷については今は話しません。 」(明確かつ簡潔です)
「ずっと前に火傷しましたが、煙感知器のおかげで自分のような人は減りました」(自信を持って楽に話していますが、個人的ではなくより一般的な議論を促します)
「ずっと前に火傷しました。整形手術を受ける予定です。足から移植片を取ります」(自信を持ち、そして前向きに個人情報を示します)
帰ってくる反応がより快適に感じられるにつれ、環境のなかでリラックスし、意識過敏も減っていきます。
「対応を学ぶこと自体がスキルになります。自然な振る舞いになるには、時間と労力がかかります。すぐに結果を求めても、いつもうまくいくわけではありません。自身にとって効果的な対応とそうでないものを見つけるために時間をかけてください。」とヘレンは言います。
困難や取り組んでいることについて、友人や家族と話し、サポートやアドバイスに耳を傾けてください。続けることで、より積極的に社会と関わりを持つ機会が増えることになり、自信と自尊心を高めてくれます。
労働環境について
イギリスでは、2010年の平等法の公布以降、面接や職場において、外見の変形を持つ人を差別から守っています。
しかし、ヘレンのChanging Facesが労働環境について聞いてみると、
・顔の理由で43%が求職の申し込みをしないと決めたと答えたのに対し、一般の人が、顔を理由に求職しないのは4%だった。
・面接官に見た目のせいで採用できないと言われたと答えた人は22%
・面接官の約半数(46%)が、見た目に不快感があると答えた。
・55%が同僚から他と異なる扱いをされたと感じた
この研究により、2014年にChanging Facesは、啓発キャンペーンを開始しました。雇用者には理想的な実践ガイダンスを、仕事を探すのに苦労する外見に変形を持つ人にはアドバイスを提供しています。また、Changing Facesのウェブサイトには、職場でいじめを経験している人のためのアドバイスもあります。