自傷行為についての基礎知識~原因~

イントロダクション
自傷行為とは、人が故意に自身の身体を損ない、傷つける行為を指します。これは一般的には、耐え切れない感情的苦痛への対処、或いは苦痛の表現です。
人が自傷行為を行うとき、当事者は特定の時点で自殺を図るつもりでいる場合があります。自殺で命を落とす者の半数以上は自傷行為歴があります。
しかしながら、自傷行為の意図は多くの場合、自己への懲罰、苦痛の表現や耐え難き緊張状態からの解放、またはこれらの組み合わせです。
自傷行為が、助けを求める声である可能性もあります。
助けを求める
自傷行為に及んでいる場合、家庭医や主治医に診てもらうべきでしょう。そうすれば医師らは地方公共団体の精神衛生センターの健康福祉専門家にその症状を伝え、さらなる検査をすすめてくれます。この検査のあと、最終的にケア・チームが一緒に苦境に対して改善方法を考案してくれます。
自傷行為に走ってしまう人のための処置として、一般的には療法士との会話・相談(主に、どんな思考や感情を抱いているか、それがどのように振る舞いや幸福に作用するのかについて)がおこなわれます。療法士はまた、感情等への対処法を伝授し、さらなる自傷行為を防ぐべく手助けをしてくれます。また、鬱状態が尋常でない場合は、抗鬱薬やその他の投薬が行われる可能性もあります。
様々な自傷行為
人が意図的に自分の身体を傷つける方法には様々なものがあります。
・皮膚を裂く、焼く
・自身をたたいたり殴ったりする
・タブレットや毒物を故意に摂取する
・アルコールや薬物を濫用する
・故意に食料を絶つ(神経性無食欲症)または暴飲暴食(神経性食欲亢進症)
・過度の運動
人は、自傷行為に及んでいることを知られることへの羞恥心や恐怖から、しばしばそれを秘密にしておく事があります。例えば皮膚を傷つけている場合、彼らは皮膚を(衣類などで)覆い、その問題が話題に上がることを避けます。多くのケースにおいて、誰かが自傷行為を行っている際、それに気づき、慎重さと理解をもってその問題にアプローチできるかどうかは親や友人といった近しい人にかかっています。
自傷行為の証
友人や親戚が自傷行為を行っていることが懸念される場合は、以下に示す証を探してみてください。
・手首、腕、腿、胸などにある原因不明の傷跡、あざや焼き傷(煙草によるもの等)
・どんな時でも(暑い天気のとき)体中を衣類で覆っている
・鬱の兆候(気分の落ち込み、涙もろさ、やる気のなさ、無関心)
・自己嫌悪や自らを罰したいという欲望表現
・物事を続けていくことへの拒否感や全てを終わらせたいという願望
・食生活の変化、或いは食事に関して知られたがらない/異常な減量、或いは肥満
・自尊心の低さの証(どんな問題も自分の責任だと考える、或いは自身が未熟である、足りていない、と考えている)
・髪の毛を引き抜いている証
・アルコールや薬物を濫用している証
自傷行為に及ぶ者達は自身を深刻に痛めつけてしまう可能性があるため、根底に根ざす問題についての家庭医・主治医との相談、そしてその際に対処法としての治療や手当てが求められることがとても重要です。
人は何故自傷行為に及ぶのか
自傷行為は、特に若い世代においては、多くの人が把握している以上に一般的なものです。概して若者の10%が特定の時期に自傷行為に及んでいるとされていますが、自傷行為は年齢を問わず行われます。また、全てのひとが助けを求めるわけではないので、この数字は過小評価である可能性が高いのです。
ほとんどの場合、自傷行為を行う者は、そうすることによって圧倒的な感情の問題を処理しています。これは以下のものに起因している可能性があります。
・社交的な問題
いじめ、学校や職場における問題、友人や家族との間の関係の難しさ、ゲイやバイセクシュアルであると自覚している場合はそのセクシュアリティの問題、第三者に結婚相手を決定される、といった文化的な期待
・トラウマ
肉体的・性的な虐待、近しい人との死別、流産
・心理的要因
自傷行為に駆り立てる思考や声が繰り返し生じる、分離(自身の人格、精神や周囲の事物からの解離)、人格異常
これらの問題は怒りや罪悪感、絶望や自己嫌悪といった激しい感情の増強につながりかねません。当事者は誰に助けを求めてよいかわからず、自傷行為はこの鬱積した感情から解放されるための手段となってしまいます。
自傷行為は心配や鬱病と関係しています。これらの精神状態は年齢に関わらず人に影響を与えます。自傷行為は、学校での不品行や警察沙汰といった反社会的な行動と平行して起こり得ます。
自傷行為に及ぶ者で自殺を遂行するリスクの高い人がいる一方で、多くの人は人生を終えたいとは思っていません。実際、自殺の必要性を感じることがないよう、感情的苦痛を処理するに当たって自傷行為が役立っているのだという可能性もあるのです。