養子の健康のために知っておきたいこと

その他

養子について

保護施設に養子として引き取られた子供は、たとえ生後すぐに引き取られた場合でも、トラウマ(精神的外傷)や喪失感を経験することがあります。養子の中には、身体的、精神的あるいは感情的な問題・障害に加えてさまざまな要素を必要とする子供もいます。
あなたとある子どものマッチングが提案され、それが成立可能なものである場合には、そこからわくわくした気持ちになり始めることもあるでしょう。その子どもの健康歴やニーズを出来る限り理解しておき、もしその子供とのマッチングで話を進めることに決めた際、出来る限り詳細な情報を持っていられるようにすることが重要です。現実的な予想を打ち立てることで、良い養子縁組関係を築くことができる可能性が向上します。

養子の健康歴

子供が施設の保護下に入る(「お世話」の対象となる)、あるいは養子縁組を計画している場合には、法律によりその子供の健康状態に関する詳細なアセスメント(査定)が求められます。健康状態の報告には、以下の情報が含まれる必要があります。

・その子供の胎児時の妊娠期間、生誕および初期発育について
・その子供が生まれた家系の病歴・治療歴について
・その子供自身の病歴・治療歴について(虐待及びネグレクト(育児放棄)の経験、免疫・負傷および病気にに関する年表を含む)
・その子供の現在の身体的健康状態について(視力、聴力、歯科医療などを含む)
・その子供の精神的健康状態および行動について(トラウマ(精神的外傷)および喪失を含む)

時に、これら全ての情報を得ることが困難な場合もあります。例えば、立てられた養子縁組の計画に不満がある場合には、その子供の肉親は子供についての情報を共有することを拒むこともあります。また、肉親の行方がわからなかったり、実父が誰であるか分からないようなケースもあります。健康状態に関する情報を完全に集めきることができないと、その子供の抱える問題点を理解し、将来に起こり得る事態を事前に防ぐことが難しくなってしまうことがあります。

しかしながら、施設の保護下にいる間に子供に対して医学的アセスメントが行われていることによって、その子供が養子として引き取られる頃までには、彼ら、彼女らの情報が蓄積されている状態になっていることもあるのです。

子供の保護のプランニングには、以下の事項が含まれます。

・子供が5歳未満の場合には最低6ヶ月に一度、5歳以上の場合には最低12ヶ月に一度、健康状態に関するアセスメントが行われるべきである。
・可能な場所であれば、その子供の肉親がアセスメントに関わるべきである。肉親は、その子供自身、またその家系の病歴・健康歴についてより詳細な情報を提供できるからである。
・その子供が健康面で必要とする要素のアセスメントの結果報告を元に、健康プランが立てられる。(その子供の当面の保健医療の取り決め、および今後さらに必要となるであろう保健医療の詳細を含む)

より多くの養子縁組機関の医療アドバイザーが、養子縁組を決める見込みのある人と実際に会い、子供の健康について話し合うことを、より理想的であるとして受け入れ実践するようになっています。これによって医療アドバイザーは、その子供のニーズをより深く理解し、子供の健康に関する情報の欠落部分を把握し、その上でその子供の健康状態について質問を提起することができるようになります。医療アドバイザーはそれを紙面での報告書にまとめ、どのような情報を得ることができたかの書類を作るのです。

養子縁組の話が進んだ場合には、健康アセスメントの報告書のコピーが、あなたおよびあなたが引き取る子供の主治医の元へ送られます。このアセスメントについて主治医と話し合ったり、あるいはあなた自身の代わりに医療アドバイザーと話し合ってもらうことはできるか、尋ねたいと思う方もいらっしゃるでしょう。これは、養子縁組の申請がなされた後でも行うことができます。

養子として引き取る子供が比較的年を重ねている場合には、縁組がなされた後、例えば医師に家族の健康歴を尋ねられた際に、縁組についての話題がしばしば出てきてしまうがために、その子供にとって、医療診察を受けに行くことが特に困難に感じられるケースもあります。主治医に状況は改善してきているときちんと伝えておくなど、診察が円滑にいくようあなたがサポートすることで、その子供自身も、より安心した気持ちで診察を受けることができるでしょう。

養子に見られる発育上の遅れ

子供は施設の保護下に置かれるようになると、その発育の遅れの程度に大きな触れ幅が生まれてしまうことがあります。発育の遅れは、身体的なもの、感情的なもの、あるいはその両方であることもあります ― 自身の年齢にそぐわない幼い振る舞いをしたり、あるいは同じ年齢の他の子供のほとんどが出来ることが、その子には出来なかったりするのです。あるいは、発育の遅れは、喋る能力など、特定の面に関連するものである場合もあります。

施設の保護下にある子供および引き取られた養子に見られる発育上の遅れは、以下のような要素によって引き起こされます。

・胎児として妊娠している際に、その母親が使用したアルコールや薬物等の「何か」によって引き起こされる。この場合、生まれてきた子供が胎児アルコール症候群(FAS)または胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)と診断される可能性もある。

・妊娠期間中の過度の、および長期にわたるストレス・不安によって引き起こされる。この場合、胎児に脳の発育面で悪影響を与えてしまうことがわかっている。

・子供が生誕した後の環境も、子供の発育に影響を及ぼすことがある。例えば、虐待またはネグレクト(育児放棄)またはその両方による発育上のトラウマなど。子供が適切な保護と刺激を享受できていない場合には、それが子供の脳の特定部の成長・発育に影響し、感情面での発育に欠陥を生じさせるケースもある。これはしばしば「愛着障害」と呼ばれているものである。

・ダウン症など、遺伝子性の疾患に強く関連する発達上の遅れもある。

子宮内で、あるいは生誕後の虐待・ネグレクトによってもたらされたトラウマが引き起こす発育的遅れに対する回復力の程度は、子供によってさまざまです。また、このトラウマを克服し、発育的に「追いつく」ことができる能力についても、子供によって事情が変わってきます。

これらの発達上の遅れによる長期的な影響を予測するのは困難な場合もあります。すなわち、子供を養子として引き取るつもりである人は、その養子が将来専門家によるサポート・サービスが必要となるかどうかについて不確実性が存在する、ということを受け入れる必要があるのです。子供が自身の持つ困難を乗り越えられるよう手助けをするのには、大変な辛抱と強い決心が親に求められますが、養子縁組がなされた後のサポートを提供しているサービスを利用することもまた可能です。

ネグレクトを受けた子供の親になるということ

施設の保護を受けている子供には、これまでの人生のどこかで身体的または性的な虐待を受けていたというケースもありますが、多くの場合は、その子供が生きていくために必要な最低限のニーズがネグレクト(育児放棄)によって満たされていなかったがゆえに保護を受けるようになった、というものです。諸研究によれば、必要な食事や世話などが提供されない等のネグレクトの方が、個々の虐待経験よりも子供にとって強い影響を与えてしまう、というケースもしばしば見られるとされています。

愛着障害と子供の精神的健康に関する研究を行っているロンドンのアンナ・フロイト・センターの局長、ピーター=フォナギー教授は、次のように語っている。「保護を受けるようになる理由の中でも、性的、あるいは身体的な虐待など、より「劇的」なものは、実は、現実には長期にわたるネグレクトほど悪影響を及ぼす体験ではないということが分かってきています。それにも関わらず、ネグレクトは、その子供の人生に立ち会っている他の大人たちに、不適当に「大したことではない」とみなされ、結果、見逃されてしまう可能性がより高いものとなってしまうのです」

虐待の場合でも、ネグレクトの場合でも、大人を信用できなくなってしまう等の心理的問題を子供に引き起こしてしまう恐れがあり、この種の問題は克服するのに長い年月が必要となることもあります。フォナギー教授は、これはその子供が「過覚醒」の状態に陥ってしまうからであると説明しています。「子供は、特に誰かに保護を受けている間に、自分にとって悪い経験をすると、強い警戒心を抱くようになり、人を信用できなくなり、人が言うことを何も信じなくなります。自分以外を遮断してしまうのです。その状態になった子供は、自分たちに言われることについて理解はしているものの、自分自身の世界に真実として受け入れるのを拒み、自分は愛されていない、あるいは自分は「悪い子」だ、という思い込みを修正することができなくなってしまうのです」

このような理由で、養子は、単に里親から愛情と保護を受けるだけでは不十分となってしまいます。「多く存在する子供の精神障害のために利用可能な良い治療サービスが存在します」と、フォナギー教授は語ります。フォナギー教授は、子供や若い人々が心理的セラピーを受けることができるよう、状況の改善に努めています。

地域でこの分野を担当している機関や社会福祉サービスの役員に尋ね、養子の里親が利用可能なセラピー・コースについての情報を得ておきましょう。

養子に見られる食事に関する懸念事項

施設の保護を受けている、あるいは養子として引き取られた子供には、子供自身の以前の体験に起因する摂食に関する不安事項がしばしば見られます。それには、以下のようなものが含まれています。

・過食
・食べ物の貯め込み
・食べ物の窃盗
・特定の食べ物を食べるのに伴う困難(固形物や特定の食感をもつものなど)

例えば、十分なあるいは定期的な食事を与えてもらえなかった子供は、養子として引き取ってもらった後でも、過食や食べ物の貯め込みといった行動を引き起こすことがあります。これは、その子供が、必ず次の食事が提供されると信じることが出来ないことから生じることがあります。

4人の養子を持つある人は、次のようなアドバイスをしています。

・食事の時間を出来る限り落ち着いたものに保ち、定期的な食事のルーティンを設定してください。
・その子供が好むものを少量与え、徐々に新しい味・食感のものを取り入れていくようにしてください。
・子供に無理に全部食べきらせようとはしないでください。また、その一方で、食べることにトライしてほしいと思っていることを伝えてあげましょう。
・以前のトラウマの記憶を呼び起こす引き金となりそうな食べ物に気をつけてください。

また、食事に関する障害についての記事を読み、情報を集めておきましょう。

疾患または障害を持っていたり、特別・追加のニーズが生じる子供を養子にする

養子として引き取ってくれる家族を必要としている子供の中には、複雑な疾患を抱えている子供もいます。例えば、脳性小児まひ、嚢胞性繊維症、ダウン症、または胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)を抱える子供の場合には、その子供を養子として引き取る親は、子供に必要な要素をきちんと満たすことが出来ること、また子供が必要とするサービスを確実に受けることが出来るよう子供の「代弁者」として効果的な行動を取ることができることが求められます。

また、多くの子供は、身体的・医学的な困難のほか、ネグレクトや虐待によって引き起こされたトラウマにも気を配ってもらう必要があります。

加えて、子供の中には、鬱病や不安感など、遺伝で生じる可能性のある精神疾患に対し、耐性がないものもいます。精神病など、思春期以降に生じる可能性のある疾患は、ケースとしては稀ですが、それが遺伝的リスクの要因を有することがあります。

利用する養子縁組機関の医療アドバイザー、および社会福祉サービスの従事者に尋ねるべき質問

・(もし該当するのであれば)その子供の医学的・身体的障害の程度はどの程度のものなのか、またそれについて医療の専門家と話し合うべきであるのか
・その子供は、当面はどのようなサービスを利用すべきか(物理療法や言語障害治療法など)、またその診察はどの程度の頻度で、どこで行われるものなのか、誰がその医療サービスの調整を行うのか
・毎日のルーティンの一部として、家庭内でどのようにして子供が加えて必要とするニーズに応えることができるのか
・子供の状態をサポートするために、家や車に関してどのような変化を加える必要があるのか、またそれを可能にするために利用可能な基金はあるのか
・子供の世話を確実に続けることができるようにするために、また子供の全ての医療・健康記録が確実に子供の新しい主治医の手に渡るように、どのようなプランが立てられているのか
・養子としての選定後、その子供とあなたがどのような恩恵を受ける権利を有しているのか(障害者手当や養子縁組の養育手当など)
・その子供が、特殊教育の必要性(SEN)のステートメント(声明書)を持っているのか、もしそうである場合には、そのステートメントにはどんな内容が含まれるのか
・年下の子供と同じクラスに一時的に残っていたり、あるいはそれ以上に、家に篭っていることによって、子供にメリットはあるのか、また学校はどのような変更や順応を行うべきなのか
・もし子供がSENのステートメントを有していない場合には、それはつまり、その子供には特殊教育の必要性が全くないのか、あるいはステートメントを要しない程度の特殊教育の必要性があるのか
・もし子供に、今まで判明していなかった特殊教育の必要性が見られると思われた場合には、どのようにしてアセスメント(査定)を受けることができるのか
・子供の家系やその拡大家族の中に、子供が後の人生で発症するような遺伝的病状は見られるか
・将来、どのようにして子供の家族や健康歴についての更なる情報を得ることが可能か

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